新型コロナウイルス拡大を受け、各国でオンライン診療への対応が推進され、普及が急速に進んでいる。医療制度が異なる諸外国では、パンデミック対応として政府がオンライン診療に対してどのような施策を展開したのか。実施状況はどう変わったのか。そして、コロナ後に医療のオンライン化に伴いどんな変化が予想されるのか──。海外の動向に詳しい、ベンチャーキャピタルのCoral Capitalでシニアアソシエイトを務める吉澤美弥子氏が語った。
中国最大のオンライン診療アプリ、利用者は延べ11.1億人に
感染爆発がいち早く起き、地域的な医療崩壊を招いた中国。オンライン診療についての規制が設けられていた同国では、2019年夏に公的医療保険によるオンライン診療の保険償還の対応加速や、公的機関によるオンライン診療プラットフォームの導入が行われた。順次、保険償還を進めていく段階で新型コロナウイルスが発生したため、急速に制度整備が進められた。
まず、2019年末には医療保険局が、公的医療保険におけるオンライン診療の保険償還の対応を急ぐよう要請。2020年1月末には武漢市衛生健康委員会が中国最大のオンライン診療アプリを手掛けるPing An Good Doctorに協力を要請し、オンライン無料相談窓口を開設した。続いて、国家衛生健康委員会がインターネットによるオンライン診療を患者の診断や治療で推奨し、規範化した。
特徴的なのは、医療機関によるオンライン診療対応だけでなく、民間企業のオンライン診療プロバイダーも保険償還の対象になったことだ。それまで全額自己負担だった前述のPing An Good Doctorをはじめとする企業のサービスが保険適用されたことを受け、ユーザーの利用が急拡大した。「同社の2019年末までの登録ユーザーは3.2億人だったが、感染拡大以降は例年の10倍の勢いで増加し、利用者は延べ11.1億人に達している」(吉澤氏)という。