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「テレワークの郵便物問題」を解決する、コロナ禍に生まれた“クラウド郵便”とは

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、テレワークの導入が進む中で問題になっているのが「郵便物」。オフィスに届く郵便物の中身を確認するためだけに、定期的に出社せざるを得ないケースは少なくありません。

専門誌「月刊総務」が全国の総務担当者320人を対象に実施した調査によれば、前回の緊急事態宣言中に「完全にリモートワークだった」と答えた人はたったの1.6%。出社の理由としては「郵便物の対応」が79.7%で最多、次いで「契約書等の押印」が60.3%の順でした。

この調査からも、郵便物がテレワークを阻む要因のひとつであることが伺えます。こうした課題の解決に適したサービスとしてコロナ禍の最初の緊急事態制限のときにローンチしたのが、オフィスに届く郵便物をクラウド上で管理する「atena(アテナ)」です。

リモートワーク推進の文脈でユーザー急増中の法人向けサービスを深堀りします。

(情報開示:Coral Capitalはatenaを開発するN-Technologiesの株主です)

ウェブで郵便物を確認し、転送・スキャン・破棄をワンクリックで依頼できる

アテナでは、届いた郵便物を利用者に代わって撮影し、送り主の情報を登録。利用者はGmailのようなブラウザの管理画面から、どんな郵便物が届いているかをチェックし、郵便物を転送するか、開封してスキャンするか、破棄するかをワンクリックで選べます。

利用者は複数の転送先を設定して、郵便物ごとに送り先を指定できます。そのため、ふだんは自宅に転送しつつ、ある時期は「ワーケーション先の軽井沢に転送してもらう」といった柔軟な対応も可能です。

転送先の住所は登録者しか確認できないため、社員は安心して郵便物を自宅などに転送してもらうことができます。

スキャンを依頼した場合は、利用者に代わってアテナが郵便物を開封してデータ化。利用者は管理画面上でその内容を確認できます。

利用者はアテナの住所(東京都江東区)をオフィスへの郵便物の送り先にするか、アテナのパートナー企業が利用者のオフィスまで郵便物を回収する方法(東京都心部の利用者が対象)のどちらかを選べます。

後者の場合、郵便物は午前中に回収され、15時までにアクションを選択すれば、その日のうちにデータ化、もしくは郵便物を発送してもらえます。アテナを開発するN-Technologies代表取締役の白髭直樹さんは、「多くの会社の郵便物フローと比べても大差なく利用できる速度感」と言います。

郵便物が届いたときやスキャンが完了すると、メールのほかSlackやTeamsで通知が届くので、郵便物に気づかず放置してしまう心配もなさそうです。

データ化で「あの郵便物どこに消えた」の混乱がなくなる

社内での郵便物の受け渡しで起こりうる問題の1つが「紛失」です。例えば、総務が担当者に請求書を渡したはずなのに、担当者は「受け取っていない」というようなやりとりは、月末にあり得る光景ではないでしょうか。

こうした行き違いをなくすために、アテナでは届いたすべての郵便物に個別のIDを発行しています。アテナが郵便物を受け取ったり、利用者がスキャン/転送などのアクションをするたびに履歴が残る仕組みです。

「郵便物の紛失は、現物で管理する以上は起こり得ること。郵便物をデータ化し、履歴を残すことで、現物管理にありがちな混乱もなくなるはずです」(白髭さん)

解約ゼロでユーザー急増中、リモートワーク推進が追い風に

アテナがローンチしたのは、1回目の緊急事態宣言の真っ只中である2020年5月。特定の住所を持たずに多数の拠点で活動する「アドレスホッパー」や、自宅と作業場所が別々のフリーランスなど、個人の利用を想定したサービスでした。

「当時から2〜3年以内に法人向けに切り替えるつもりでした」と振り返る白髭さん。しかし、2020年9月にCoral Capitalから2,500万円の資金調達を受け、前倒しで法人向けにピボットする決断をしたそうです。

法人向けサービスを展開するにあたってはセキュリティを強化。2020年12月には国際規格認証である「ISO/IEC27001」を取得するなど、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)にのっとった情報管理に取り組んでいます。

利用料金は、月額1万円のプラン(1か月で100通までの郵便物を受け取り、月4回までの転送に対応)など3種類。ちなみに、アテナはお試し期間がないため、すべてが有料ユーザーです。

導入実績は法人向けサービス開始からわずか半年で100社を突破し、累計で数万通の郵便物を電子化してきました。導入企業は個人経営の会社やスタートアップ、数百名規模の上場企業など、業種や規模は多岐にわたります。

白髭さんによれば、法人向けサービスを契約した企業の解約件数はこれまで0件。今年1月に緊急事態宣言が再発令されたことを受け、引き合いが急増しているそうです。

「去年の夏頃は、『出社する勤務体系に戻る可能性があるので、長期的に検討させてください』であったり『第二波が来たら考えさせてください』といった反応が多かったんですが、11月末くらいからは『すぐに入りたいです』というケースがすごく増えてきました」

大企業向けにはSaaS型サービス提供へ

白髭さんによれば、アテナでクラウド化している郵便物のうち、圧倒的に多いのが請求書だそうです。今後は徐々に請求書が電子化される動きが予想されますが、データ化すべき郵便物が減ることはアテナにとって逆風となるのでしょうか。この問いに白髭さんはこう答えます。

「1日に1万通以上の郵便物が届くような会社では、郵便物をすべてExcelに登録したり、写真を撮ってTeamsで送ったりしています。私たちはそうした企業に対して、郵便物を効率的に管理できるシステムを安価に、誰でも使えるようにしていきたいと考えています」

このサービスはSaaS型の「atena Cloud(アテナクラウド)」としてベータ版を無償提供中で、2021年夏に正式リリース予定。アテナクラウドは利用者側で郵便物の開封やスキャンを行いますが、郵便物をExcelで管理したり、社員に通知する業務を効率化できるそうです。

アフターコロナでも“クラウド郵便”の需要は増えるはず

コロナ禍に生まれたアテナですが、アフターコロナでもクラウド郵便の需要は変わらず、むしろ増えるはずだと白髭さんは見ています。

「コロナをきっかけにリモートワークに移行したり、オフィスを減床・廃止する企業が増えると、郵便物の配布先がなくなってしまう問題が出てきます。最近はそのようなアフターコロナを見据えた“新しい働き方”を模索する、未来志向のお客様に検討いただくことが増えたと感じています」

N-Technologiesは緊急事態宣言が再発令されたことを受け、アテナの初月半額キャンペーンを実施しています。発令地域に限らず、2月7日までに新規申し込みした全ての企業が対象です。「郵便物のための出社をなくしたい」という総務担当者や経営者の方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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Content Lead @ Coral Capital

Satoru Masuda

Content Lead @ Coral Capital

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