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海外市場で戦うなら「3人目までに外国人を」日本発グローバルな組織づくりのヒント

海外市場でも戦えるスタートアップにするために必要なことは?外国人にもフィットする社内カルチャーをつくるにはどうすればいいか?これは、Coral Capital(以下、Coral)のファウンディングパートナーであるJames Rineyが、起業家やスタートアップと日々やりとりするなかでよく耳にする質問でもあります。

国境を越え、海外を目指す起業家は増えています。そんな彼らへのアドバイスとして、Jamesがうまくいっている事例としてよく話しているのが、投資先企業の1つでもある株式会社Shippioの組織づくりでした。

株式会社Shippioは、国際物流のフォワーディングサービス「Shippio」を運営するスタートアップ。創業当初から外国人を採用し、プロダクト開発を進めてきました。Jamesいわく「なぜ彼らが多くの外国人を受け入れられる組織になれたのか、僕も知りたい」ということで、Shippio代表の佐藤孝徳さんとCTOのUgo Bataillardさんにお話を伺いました。

プロフィール

佐藤孝徳・・・株式会社Shippio、代表取締役社長。2006年に三井物産入社。石油部にて原油トレーディング・マーケティング業務に従事。上海復旦大学への語学留学やMitsui Global Investment(CVC)への出向などを経て、2014年からは中国総代表室(在北京)にて三井物産の中国戦略全般の立案・推進。2016年6月、サークルイン株式会社(現・株式会社Shippio)を設立。現職に至る。

Ugo Bataillard・・・株式会社Shippio、CTO。2009年からOrange Labs Tokyoでインターンシップに参加し、翌年からはリードエンジニアとして勤務。2013年にファッション系アプリ「Fukupix」を提供するSmint株式会社を共同設立。Co-founder & CTOを務める。その後、エン・ジャパン株式会社やKenzai Japanを経て、2017年6月より現職。

グローバル化に悩む組織にありがちな「トップ層が日本人のみ」

James:スタートアップだけでなく、さまざまな日本企業が海外展開を目指しているものの、組織でのグローバル化に苦戦しています。しかし、Shippioは違っています。むしろ、創業当初から外国人が多く在籍していながら、うまくいっています。

佐藤:最近、外国人がいるスタートアップからも似た質問をされるようになりましたね。「どうやってマネジメントしているの?」「社内カルチャーを醸成するためにしていることは?」など。そこで初めて気づいたのですが、Shippioの場合、創業当初からCTOであるUgoがマネジメントに参加していました。振り返ってみると、それがとても効果的だったんです。

James:でも、それはとくに意識して始めたことではなかったと?

佐藤:そうなんです(笑)。多くのスタートアップが、外国人のマネジメントに悩んでいます。そしてたいていは、経営メンバーやマネージャーが日本人だけになっている。Shippioの場合、当初から僕と土屋(Shippio 共同創業COO)、そしてUgoの3人でマネジメントについてとことん話し合ってきました。おかげで、外国人から疑問を投げかけられても、Ugoが説明してくれます。そこに、意味があるんです。

James:確かに、自分が勤めている会社に外国籍の経営メンバーやマネージャーがいないと「ここで働いていて、本当にキャリアアップできるんだろうか」と思うところがありますよね。「日本人以外のメンバーの声も聞いてもらえる」というシグナルは、とても大事です。

Ugo:私もこれまで日本企業に勤めていた経験はありますが、今2人が話していたような課題はとても大きかったです。執行役員などもそうですが、マネージャーも日本人しかいないところは今も多い気がしています。そうすると、どうしてもコミュニケーションにギャップが生まれてしまう。

James:なるほど。あとから入社するということもあり、外国人はマイノリティです。理解してもらえるメンバーがいないとなると、疎外感はさらに高まりますね。

佐藤:経営メンバーが日本人のみだと「ここは大事なところだから日本語で」といったコミュニケーションにもなりがちです。だからこそ海外展開を視野に入れているのであれば、創業当初から取り組むべきなんですよね。

組織をグローバル化させたいなら、1〜3人目までに外国人を

James:「海外展開を視野に入れているなら、創業当初から取り組むべき」と話していましたが、具体的にはどのタイミングからスタートすべきだと思いますか?

佐藤:1〜3人目までの間に1人、外国人を入れたほうがいいです。

James:けっこう初期ですね!

佐藤:そうです。4〜5人目までが日本人だと、日本寄りの社内カルチャーが根付いてしまいます。もちろん、事業スピードをドライブさせるため、やりとりしやすい日本人同士の組織にするメリットも否定しません。しかし、それだと日本人メンバーの比率が増え続け、日本寄りの社内カルチャーをどんどん強めてしまいます。社内カルチャーをあとから変えることほど、難しいものはありません。その点、最初から外国人がいれば、日本人に限った社内カルチャーにはならない。あとから入社する外国人のためにも、その一手は最初から打っておくべきです。

Ugo:個人的に、日本は単一民族的な場面が多いように感じていました。最近ではその問題もだいぶ解消されてきています。しかし、いろいろな価値観やカルチャーがあることを前提とした考え方は、まだ浸透しきっているわけではないんですよね。

James:確かに、「海外市場で戦える組織にしたい」というスタートアップは多いけれど、結果的に組織改変が追いつかなかった事例はいくつもあります。

佐藤:ただはっきり言うと、創業当初から外国人がいるということは、コミュニケーションコストがものすごくかかります! なぜなら、僕らがそうだったから!

James・Ugo:(笑)

佐藤:僕と土屋だけだったら「これでいいじゃん!」と進められることも、Ugoから「Why?」と投げかけられ、そのたびにストップをかけて、お互いが持つカルチャーの垣根を越えてわかり合えるまで話し続けてきました。とてもいいことではあるのですが、当時はお互いにフラストレーションを抱えていたと思います。しかし、そのフラストレーションこそ、後々レバレッジを効かせる要素になります。おかげで、ほかの外国人もマネジメントできるようになった気がしています。

James:コミュニケーションコストがものすごくかかっていたという話でしたが、実際に「動き始めた」と感じたのはいつごろですか?

佐藤:昨年の今ごろ、僕と土屋とUgoの3人でちゃんと時間をつくって話し合い、お互いの考えを落とし込んでいく作業をしていました。それが本当にいい意味で動き始めるまでに、1年かかりましたね。

空気を読みたがる日本人メンバーと、それを遮る外国人

James:採用はどうやってきたのでしょうか? バイリンガルなメンバーがいればコミュニケーションもスムーズになります。しかし、実際にそういった人は少ないです。

佐藤:海外採用をやっていて感じたのは、むしろグローバルのほうがプールが大きいということ、「日本で働きたい」と思っている外国人はわりと多いということです。逆に、日本人だけだと、採用プールも国内に限られます。海外採用に切り替えたことは、いろいろな人材に出会える強みになったように感じています。

James:採用する際、意識して見ているところはありますか?

佐藤:Shippioの場合、英語もしくは日本語のいずれかがビジネスレベル以上であればOKとしています。そしてもう1つは、どちらか話せないほうの言語も「聞けばだいたいわかる」レベルであることです。英語を話せない人の多くが、会話のスピードに合わせて単語が頭に浮かばず、返答ができない状態です。話していることがなんとなくでもわかれば、得意な言語で返せばいい。Shippioのプロダクトチームは、日本人と外国人がいい比率でミックスになっています。そのなかには英語・日本語に関わらず、得意な言語で質問するといったコミュニケーションが成立していますね。

Ugo:「わからないと言える」「質問できる」は、大事なことです。日本人はよく、相手が話している内容を理解できていなくても、最後まで聞こうとします。そして、一呼吸置いてから質問したり答えたりする。間違えないように、気を配っているんですよね。もちろん、それは悪いことではありません。しかし、外国人はそうじゃない。相手が話している途中でも「ちょっと待って!」「今のところ、わからなかった!」と、躊躇なくストップをかけます。

James:僕もストップをかけていますね!

佐藤:わからないことを「わからない」「だから教えて」というのは、Shippioの裏カルチャーでもあります。基本的なことでもありますが、「雰囲気」を重んじる日本人にとってわりと苦手な分野でもあります。しかし、自分の発言や考えに責任を持っているならば、話に流されてしまったり、雰囲気を重視してスルーするようなことをしていはいけない。そういう意味では、Shippioはディスカッションが盛んです。

Ugo:ここは、海外のカルチャーが強く出ている部分と言えます。むしろ、そういったカルチャーがないと外国人はフィットしないかもしれません。同じゴールに向かってひた走っているなかでは、あくまでも「成功するためにどうすればいいのか」をディスカッションすべきなんです。そのため、Shippioのプロダクトチームは「AからBに進んでいください」という指示どおりに動くことは100%ないです。「もっといいやり方はないか?」と、効率やクリエイティビティに関して深く話し合いながら、プロジェクトを進めていくことが日常なんです。

佐藤:なんなら、ゴール設定ですでに戦っている感じもありますよね(笑)。

Ugo:そうそう、すごくディスカッションしますよね(笑)。

佐藤:そういう意味では、Shippioでは今、とことん言い合えるカルチャーがうまく醸成され始めているところです。疑問があればすぐに聞き、解決するやりとりが成立しているから、物事がクリアなんです。外国人が、日本にはない思想で作り上げた社内カルチャーです。これは、僕らが海外進出するうえでも大事な要素だと思っています。

起業家こそ「説明できるレベルの英語」を話すべき

James:僕個人としては、創業者を含めて英語を話せることは大事だと思っています。そのため、「海外展開をしたい」という起業家に出会ったら、本気かどうかを確認しているんです。例えば、その時点で英語でのコミュニケーションに切り替えたり…。

佐藤:それ、僕にもしましたよね!(笑)。急に目の色が変わって「では、日本語での説明はここまでにしましょう」と言われて。

Ugo:(笑)

James:でも、佐藤さんは全部英語で話してくれましたよね。だから本気だと思いましたよ(笑)。僕は日本人じゃないからこそ、そのあたりもちゃんとチェックできると思っています。だから「本気で海外へ行きたいのであれば、この会話も英語でしましょう!」と言います。そういう前提です。

佐藤:そうですね、起業家などトップ層の英語力は必須です。さらに言うと、話せるだけではなく「説明できる」レベルであるのが望ましいですね。僕らも、さまざまなコミュニケーションを試してきました。先ほど「最初の頃はコミュニケーションコストがかかった」と話しましたが、なかでも特に細かくすり合わせてきたのが「言葉のニュアンス」です。そのなかで「英語を話せる」と「英語で説明できる」は異なっていることに気づきました。大事な場面こそ、後者のスキルが求められます。

James:そのレベルまでお互いに話し合える環境は、日本人以外のメンバーも働きやすそうですね!

佐藤:そうですね。僕らはアーリーステージにいるスタートアップです。大企業に比べて資本的な体力はありませんが、英語でバリバリと仕事ができる環境は整っています。IPOもしていない外国人が自由に働ける環境があるという意味では、まだ限られています。今、僕らはその選択肢の1つになれている実感はありますね。


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Editorial Team / 編集部

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