500 Startups Japanでは、起業家やLPの獲得、投資先企業の露出、一般の方へのスタートアップ認知の向上といった目的のために、マーケティングとPRに取り組んでいます。限られたリソースの中で最大限の効果を得るために、500 Startups Japanでは様々な工夫を取り入れています。
私たちはベンチャーキャピタルですが、リソースが限られているという意味では創業初期のスタートアップと近いものがあります。今回はマーケティングの専任スタッフがいない、創業初期のスタートアップでも始められる、コンテンツマーケティングの方法をご紹介したいと思います。プロダクトマーケットフィットを検証する際や、採用のための情報発信を行う際などにご参考にしてください。
1、コンテンツの内容を効率よく作る
500 Startups Japanでは、他の業務を行いながら週2本のブログ・週1本の動画・毎日のSNSポストを投稿しています。これらのコンテンツを全て一人で制作するのは厳しいですが、私たちは次のような方法で実現しています。
- イベントの様子をコンテンツにする:500 Startups Japanではコミュニティ担当の東野が、頻繁に様々なイベントを開催しています。投資先起業家のための勉強会「#500STRONG Night」やメンタリング会「Mentor Lunch」、起業志望者のための共同創業者マッチング会「Founders’ Friday」、シリコンバレーで開催されているアクセラレーターのDemo Dayピッチ解説「DEMO DAY THE MOVIE」など、様々なステージの起業家に役立つようイベントを行なっています。こういった数々のイベントの様子をコンテンツにすることで、非常に効率よく良いコンテンツを作ることができます。下の記事は#500STRONG NightでSmartHRの宮田さんに登壇していただ内容をブログにまとめたものです。
#500STRONG NightでSmartHRの宮田さんに登壇していただ内容をブログにまとめました
- テーマごとにその専門のスタッフに書いてもらう:マーケティング担当がブログを書くだけではなく、チームの他のメンバーにそれぞれの専門のテーマで書いてもらうことで、質の高い記事を継続的に出しやすくなります。そうすることで、会社のブランドだけでなく、メンバーそれぞれのブランドも向上することになります。私たちのチームでは、代表のJamesが毎週ブログを書いてくれますし、マネージングパートナーの澤山も長編ブログを発表してくれます。
澤山は186社の登記簿から、発行済株式数や資本金の増減、優先株式の条件などを調査し発表しました
- インタビューする:外部の専門家にブログを書いてもらうのは大変ですが、インタビューしたり、コメントをもらい、ブログ担当者が記事にまとめることでより幅広いテーマをカバーできるでしょう。500 Srtartups Japanでは、元サンリオ常務取締役で500のメンターの鳩山玲人さんに海外展開のコツをインタビューしたり、SCHAFTをGoogleに売却した加藤崇さんにはクロスボーダーの資金調達やM&Aについてお話を伺い、記事にしました。
加藤さんに日本企業の海外展開・Googleへの売却について語っていた様子をブログにしました
- 翻訳する:海外で人気の記事などを翻訳させてもらうことで、日本にはない最新情報を提供することができます。500 Startups Japanでは、500 Startupsの世界中のファンドのコンテンツを翻訳させていただいていますが、そのほかにも外部投資家や起業家のブログについても500 Startupsのネットワークからアプローチし、許可をとって翻訳させていただいています。
元起業家でシリコンバレーのVCであるElizabeth Yin氏は、ニュートラルな立場で起業にまつわる情報を取り上げており、500 Startups Japanでは翻訳を行っています
2、様々な形式のコンテンツを作成する
コンテンツマーケティングはブログだけではなく、様々なタイプのコンテンツを出すことで、より多くの認知を獲得することができます。例えば資金調達のピッチに関するブログを書いたら、その内容を動画や画像に作り変えることで、再ポストすることができます。同じ内容のコンテンツを様々な形式のコンテンツに落とし込んで配信することで、より多くのユーザーに届けることができます。
500 Startups Japanでは、ブログの他に以下のような方法で様々な形式のコンテンツを作って、効率的にマーケティングを行っています。
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- 動画:ブログのために誰かにインタビューを行う際には、動画も撮影し、文章だけでなく動画としても投稿できるようにします。動画と文章の両方で投稿することで、多くのリーチが獲得できます。
数々のSaaS企業に投資をしている倉林陽さんに、シードのSaaS企業が集中すべきKPIについてお話を伺いました
- ライブ動画:Facebook、Twitter、Instagramなどのライブ配信機能使って簡単に配信できるようになりました。イベントの様子をライブ配信することで、来場できなかった人たちにもリアルタイムに会場の雰囲気を共有することができます。ライブ配信の動画は、単に内容を伝えるだけではなく、その場のリアルな雰囲気も共有できるので、ブランドやカルチャーに非常に貢献するでしょう。
500 StartupsのDEMO DAYを実況する、恒例のパブリックビューイングイベントを生放送
- Quote画像:画像に文字が入ったQuoteも目を引くので、リーチを得やすいです。500 Startupsは様々なQuote画像を作って投稿しています。それぞれのチャネルごとに最適な画像サイズ・比率があったり、デザインの雰囲気もターゲットによって異なるので、たくさん試してみるのをおすすめします。
- スライドショー:Quote画像をまとめて、スライドショー動画にし、音楽をつけることで、画像以上により多くの方が見てくれます。Facebookのコンテンツ作成ツールを使えば、簡単に音楽つきのスライドショーを作ることができるのでおすすめです。
- プレスリリース:ニュースがあった際にはブログではなく、プレスリリースにまとめて投稿します。500 Startupsでは月1~2回程度行っています。リリース内容の分野をカバーしている記者さんに響いた場合には、メディアにも取り上げていただけるので、より多くの方にアプローチできます。
3、出したコンテンツを改善する
実際に投稿していく中で、配信している情報でターゲットを獲得できているのか確認しつつ、次のプランを練ります。私たちは以下のことを毎週追いかけ、改善につなげています。
- リーチ数:各チャネルでどのくらいの人にリーチできたのか数字を確認することができます(インプレッションなど)
- コメント:数字だけではなく、実施にあったご意見を改善や向上に取り入れる必要がある。直接のコメント記入だけでなく、TwitterやFacebookにシェアされた文言や反応も確認しましょう。
- ヒアリング:ターゲットとしているペルソナに当てはまる人たちに定期的にヒアリングを行いましょう。自分たちのコンテンツを見ているのか、他の競合のコンテンツと比べてどのような印象を抱いているのか、どんなコンテンツが欲しいのか。
チャネルごとにアルゴリズムが変わると最適な方法も変わってしまいます(昨年末にFacebookはページのリーチ数のアルゴリズムを変え、その影響はとても大きかったです)。定期的に数字を追い、その時々のベストプラクティスを検証し続けることが何よりも重要になってきます。とはいえ、数字だけを追ってしまうと自社のブランドや伝えたいメッセージから逸れてしまう事もあります。軌道修正する意味でも、定期的にターゲット層(私たちの場合、メインは起業家)に伝わっているか確認したり、メッセージを考える時間が必要になります。
4、とにかく継続
コンテンツを作り投稿しても、継続的に求められている情報を出していかなければ、ブランド向上の十分な効果は得られません。質を下げずに、設定した投稿目標をきちんと達成し続けることが何より大切です。
以上が500 Startups Japanで取り組んでいるコンテンツマーケティングの手法になります。アーリーステージのスタートアップでも、プロダクトマーケットフィットを検証したり、採用のためにマーケティングを少ないリソースで取り組む必要が出てきます。そんな時により効率よく質の高い情報を出していくことが求められるので、今回のポストを参考にしていただければ幸いです。
Senior Associate @ Coral Capital