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スタートアップの売却における主要な問題

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のMBA Mondaysというシリーズの投稿を翻訳したものです。また、記事公開にあたり、プルータス・マネジメントアドバイザリーに日本での実務の観点からコメントいただいています。


これから数回のブログを通して、スタートアップのM&Aにまつわる主要問題の説明をご紹介します。

会社を売却する際に起業家の皆さんやその投資家、経営陣が考慮すべき主要問題とは、以下の各項目だと私は考えます。

  • 買収価格
  • 買収対価
  • 表明保証とエスクロー
  • 統合後の事業計画 (経営統合計画)
  • ステイパッケージ (従業員残留の包括提案)
  • 政府許諾可等
  • ブレークアップフィー (違約金)
  • タイミング

買収価格は買い手が事業に対して支払う総額です。最も重要かつシンプルな問題です。

買収対価とは、買い手が買収価格を提示する際に利用するメカニズムです。その最もシンプルな形式は、皆さんの現地通貨の現金で支払うというものです。これは対価支払いの最も一般的な形式でもあります。ほかの一般的な対価形式としては、買い手企業の株式での支払いというものがあります。その場合、流動性のある(すぐに市場で売却可能な)上場企業の株式、または未上場企業の流動性のない株式での支払いがあり得ます。また、買い手は借入債務、アーンアウト・プランやその他の数多くの複雑で一般的ではない形式により対価を支払う場合もあります。

表明保証とは、皆さんが売り手として責任を負うべき法的な誓約、義務です。買収価格の一部は通常は一定期間、保留されてエスクロー (第三者預託) に預託され、表明保証リスクを担保します*。このエスクローの金額は通常、買収価格の一定の割合となります。10%が一般的ですが、私自身は低い割合だと5%、高い割合だと25%という事例を見たことがあります。(*編注:なお、日本の場合では、規模にもよりますが、米国ほど一般的ではありません。)

統合後の事業計画 (経営統合計画)とは、買い手が皆さんの会社を取得後、その事業を運営する計画、方法を指します。多くの売り手はこの問題についてあまり考慮していませんが、私は非常に重要だと考えています。株主だけではなく、当該事業のすべてのステークホルダーの利害について考えた場合、統合後の事業計画は売買取引全体の非常に大切な一部になります。

ステイパッケージとは、買い手が皆さんの会社のチームに対して作成する報酬計画のことです。買い手が皆さんに残留を望んでいる場合には、皆さん自身に対するステイパッケージもあり得ますし、実際、大抵のケースではそう望むはずです。こうしたパッケージは、残留期間にわたってベスティング(*編注:一定の時期の経過に応じて権利を確定させる契約条件)される現金と株式の組み合わせになっています。一般的には対価の一部、とりわけ皆さんの会社のその時点ではまだベスティングされていない従業員株式が、ステイパッケージに適用される可能性があります。

関連する国の政府(皆さんの会社の所在国だけに限りません)が、会社の売却について許可を行う必要がある場合があります。小規模の売買契約については通常は政府許可は必要なく、1億ドルを下回る契約では、ほとんど必要ないでしょう。10億ドル以上になるような非常に大規模な契約については、こうした許可の問題に直面します。政府に独占への懸念を抱かせるような巨大企業は通常、企業取得のための政府許可を得る必要が出てきます。

会社売却が公表されたのに契約が成立せず、皆さんの事業に否定的な結果がもたらされた場合、当該取引が未成立なのであれば、皆さんは買い手に対してブレークアップフィーの支払いを望むことでしょう。大抵の買い手はその支払いに同意しようとはしませんが、多くの取引でブレークアップフィーは存在しています。非常に大規模な売買案件の場合であればなおさらです。

多くの売り手はあまり重視していませんが、タイミングも大切な問題です。売却取引は、幹部チーム、さらには全チームとっても非常に厄介なものです。あまりに長期にわたる売却取引は、会社事業やステークホルダーたちにとって非常に有害にもなり得ます。会社売却の基本合意書に時間的な誓約を盛り込み、買い手にそれを順守するよう求めることもできます。

これらの点が、私の経験上、会社売却における最も重要な問題となります。次週以降の数回のブログポストでは、そうした主要問題を浮き彫りにする現実世界でのケーススタディに焦点を当てようと思います。

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