本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Key Business Metrics」を翻訳したものです。
あらゆるビジネスは一連の評価指標を持ち、その指標を定期的にチェックすべきです。指標には現金、売上、利益など、過去このブログで取り上げてきた会計に関するものも使えますが、指標に使うものは、これらに限定すべきではありません。
会社が初めての製品やサービスを開発している初期の段階では、指標は開発リソース、完成した機能、既知のバグなどの製品開発に関連したものかもしれません。製品またはサービスをローンチした後は、顧客数、DAU(デイリーアクティブユーザー数)、チャーンレート(解約率)、無料トライアルから有料顧客へのコンバージョン率などにシフトするかもしれません。
ビジネスの成長と発展に伴い、チームに公開できる収集データの量が増えます。注意しないと、大量のデータでチームを困らせることもあります。
したがって、少数の重要なビジネス指標に集約させることが非常に重要になります。通常4〜6種類の指標があれば、ビジネスの全体的な健全性と成長軌道を十分判断できます。その少数の指標にチームが集中するのが一番です。
当社(Union Square Ventrues)のポートフォリオ会社、Meetupは、成功しているMeetupグループに焦点を合わせるのが有益であると学びました。成功しているMeetupグループとはアクティブで、定期的にミーティングを行い、メンバー数を伸ばし、そしてMeetupに料金を支払っているグループです。Meetupはその他にも、月間ユニーク訪問者数、新規Meetupグループ数、総登録ユーザー数、売上、利益、現金などのデータセットにも注目できます。Meetupはそのデータを収集して社内チームと共有しています。しかし、最も注目するのは成功しているMeetupグループです。これがMeetupでは非常にうまく機能し、同社の重要なビジネス指標となっています。
ビジネスにおいて、最も重要なデータの収集が最も難しいこともあります。Twitterは、すべてのツイートの1日、1か月、または1年間の閲覧回数の合計が、Twitter全体へのリーチを判断するのに欠かせない評価基準であると理解しています。しかし、ツイートの多くがサードパーティのサービス、Webページ、アプリなどを利用して閲覧されているため、そのデータを収集するのは非常に困難です。Twitterは、ようやくそうしたデータの測定を始めたところです(翻訳者注記:この記事は2010年執筆のものです)。
重要なビジネス指標に選ぶのは収益と成長の要因ですが、すべてがそうとは限りません。Etsyは顧客サービス指標に多大な労力を割いています。この取り組みはコストがかかるもので、収益改善には貢献しません。しかし、Etsyは顧客サービスが同社マーケットプレイスの健全性に欠かせないことを把握しているので、顧客サービス指標はEtsyにとって重要なビジネス指標です。
管理チームは時間をかけて、注目すべき重要なビジネス指標について話し合い、選択する必要があります。管理チームは定期的にデータを収集する必要があり、データはリアルタイムに近いほど良いと思います。そしてチーム全体に重要なビジネス指標を公表すべきです。
社内で誰がどのビジネス指標を見ることができるか限定するのは、不合理だと思います。売上指標は開発部門と共有すべきですし、顧客サービス指標は財務部門と共有すべきといった具合です。
大型スクリーンを購入してオフィスのあちこちの壁に取り付け、重要なビジネス指標を公開して誰でも見ることができるようにしている企業もあります。とても良い方法だと思います。また、重要なビジネス指標とその傾向を、社内全体に電子メールで定期的に知らせるのも良い方法だと思います。そしてもちろん、その指標は取締役会および主要な投資主とも共有すべきだと思います。
財務予測(今後数週間のトピック)を公表するときは、その財務業績を予測する期間における重要な事業指標の予測や想定を含めるべきです。この指標の多くはあなたの財務プロジェクションを左右する要因となりますが、長期的なビジネス全体の発展を実現するのにも役立ちます。
自分の会社にとって重要なビジネス指標が何であるかを、ときどき見直すと良いでしょう。少なくとも年に1回、単年度の予算編成の頃などに見直すことをお勧めします。ビジネスの成長と発展に伴い、重要なビジネス指標の一部を毎年変更することになるでしょう。新しい指標を追加し続けるだけではなく、不要になったと思われる指標を削除する必要もあります。ほとんどのチームメンバーが暗記できる程度の数に、チェックする重要なビジネス指標の合計数を抑えましょう。重要なビジネス指標は、少ないほど効果が上がります。
重要なビジネス指標のチェックが大切な理由は数多くありますが、おそらく最も重要な理由は文化的なものです。ビジネス指標を把握することで、全員が同じ認識を共有し、ビジネスのさまざまな部門の人を連携させ、重要なビジネス指標が適切な方向に向かっていることを確認することで成功の文化につながります。重要なビジネス指標が新たに大きな節目に達したときは、それを祝うことが欠かせません。ばかげたことと思う人もいるでしょうが、チームが協力して急成長できる力強い企業文化を築くために極めて重要なことです。
Editorial Team / 編集部