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2020年代には何が起きるか?―米著名VCの視点

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「What Will Happen In The 2020s」を翻訳したものです。


2020年になりました。次の10年がどのような時代になるか考えるのに良いタイミングです。

私の好きなフレーズがあります。ビル・ゲイツの言った「人は1年で起きることを過大に見積もり、10年で起きることを低く見積もる」というフレーズです。

2020年からの10年は、人類にとって重要な時代になると私は思っています。世界は私たちを悩ませる、宴会後にやって来た二日酔いのような課題に対し、解決策を見つけなければなりません。

私は楽観主義者で、私たちの社会はそうした課題に向き合うことを恐れず、ソリューションを導き出す知性があると信じています。なので、私は前向きな気持ちで2020年を迎えています。私が次の10年で起きると予想する事柄は次の通りです。

1/
21世紀現在、進行している気候変動の問題は、20世紀における2回の世界大戦に匹敵する問題です。国や機関は、他のことに使っている資本を再分配し、温暖化対策に取り組む必要があります。次の10年で、そのための資本の再分配が行われるでしょう。2010年代から米国をはじめ、ほとんどの国で実施されていますが、今後も二酸化炭素の排出は罪であるかのように課税の対象となるでしょう。温暖化の影響を最も受ける地域の不動産価値は暴落し、温暖化から恩恵を受ける地域の不動産価値は上昇します。

重要な地域とインフラを守るために多額の投資が行われるようになるでしょう。世界で原子力発電が再び注目を集めるでしょう。特に、建設するのが比較的簡単で、安全に運用することができる小型の原子炉を持つ発電所が増えると思います。また、世界で太陽光発電の活用が進み、発電量は現在の650GW程度から、2020年代終盤には2万GWまで増えるでしょう。こうした要因により、資本市場は気候変動の課題に目を向け、他のセクターに影響が出るほど、資本を温暖化対策に集中させることになると思います。

2/
自動化がますます進み、私たちの日々の生活と生産的な活動のために必要なサービスやシステムの運用コストが削減されるでしょう。コンシューマーから得られる巨額の利益を誰が手にすべきかは、2020年代における政治の争点となります。人々は資本主義のあり方に厳しい目を向け、富の再分配と収入をより平等にするための実験的な施策が始まります。こうした波を乗りこなす政治家が人気を得て、新時代のリーダーとなるでしょう。

3/
中国は高い技術力と、急速な変化に適応する能力によって、世界最大の超大国となるでしょう(1番を参照)。これに対して、アメリカは国内にフォーカスするようになり、孤立主義を強めていきます。

4/
各国は、自国のデジタル通貨/仮想通貨版の法定通貨を制作し、活用し始めるでしょう。中国が先陣を切り、最初に動いた恩恵を受けると思います。アメリカは規制当局の締め付けがネックとなり、取り組みには時間がかかってしまいます。そのため、他の国や地域が仮想通貨セクターを牽引する存在になることを許してしまうでしょう。ヨーロッパやアメリカの煩雑な規制当局のチェックを受けないアジアの仮想通貨取引所は、分散型金融テクノロジーを活用し、あらゆる金融商品の取引において主流の市場となるでしょう。

5/
分散型インターネットが台頭するようになります。その筆頭となるのはストレージ、通信、コンピューティングといったインフラの分散化です。分散型のコンシューマー向けアプリケーションが普及するのはもう少し先になると思います。分散型のコンシューマー向けキラーアプリが登場するのは、2020年代もだいぶ進んだ頃になるでしょう。

6/
2020年代終盤までに、植物由来の食品が食事の主流になります。肉を食べるのは、今でいうキャビアを食べるくらい珍しいことになるでしょう。世界の食料生産の主流は農場からラボに移行します。

7/
政府は宇宙開発の投資からますます遠ざかり、宇宙ビジネスの調査と商業化は、営利企業が行うようになるでしょう。2020年代の初頭、宇宙ビジネスへの注目が高まり、投資額は増えます。けれど、投資のリターンが得られるようになるには時間がかかるので、2020年代が終わりに差し掛かるころには宇宙ビジネスへの熱は冷めているでしょう。

8/
政府や企業による人々の監視が普通のことになるでしょう。次の10年で、人々はますます監視から自分の身を守るためのプロダクトやサービスを取り入れるようになります。次の10年で最も成功するコンシュー向けテクノロジーはプライバシー保護に関するものだと思います。

9/
アメリカをはじめ、世界はついにベビーブーマー世代中心の時代から移行します。2020年代終盤にはミレニアル世代とZ世代が多くの組織の責任者になります。株主や有権者、ステークホルダーにとって年齢や経験はさほど重要ではなくなり、ビジョンや新しいことへの挑戦が評価されるようになるでしょう。

10/
次の10年で、ますます遺伝子の研究が進み、人類に大きな恩恵をもたらすでしょう。がんや不治の病とされてきた難病の原因が解明され、治療できるようになります。不妊や生殖の分野でも大きな発展があると思います。一方で、遺伝子の研究が進んだことで新たな病気が発生し、社会は道徳的・倫理的な問題に頭を悩ますことになるでしょう。次の10年で世界は、遺伝子の発展によりもたらされる恩恵と被害のバランスをどのように取るかという課題に取り組むことになります。

これが私の10個の予想です。十分な量ではないでしょうか。この記事を書きながら私はこれから起きることについて深く考えました。読者にとっても、この記事が未来のことを考えるきっかけになったのなら幸いです。それがこの記事の目的ですから。正しく未来を予想することは不可能ですが、考えることが重要です。

 

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