ベンチャーキャピタリストとして、光栄にも極めて優秀な起業家の方々を支援する機会に恵まれてきました。その中で気づいた傾向の1つが、プロダクト・マーケット・フィットの確立やシリーズAの資金調達を成し遂げたあと、今度は「組織や起業家自身をスケールさせること」が企業にとって最大の課題になってくることです。今回はこの重要な成長局面を迎えた起業家の支えとなる8冊の本をご紹介したいと思います。いずれもリーダーシップやマネジメント、成長に関する貴重な見解や戦略、学びを提供してくれる必読書です。また、日本語訳はまだありませんが、もし英語が苦手でなければ是非おすすめする2冊もご紹介します。
1)「High Output Management」アンドリュー・グローブ著
要約:「High Output Management」はIntelの元CEOであるアンドリュー・グローブ氏による経営の名著です。主に効率性や生産性を上げるためのテクニックなど、成功する組織の作り方や運営方法に関する実践的なアドバイスを提供します。
おすすめポイント:「拡大するチームの効果的なマネジメント」や「高品質なアウトプットを維持する方法」、「プロセスを最適化する方法」など、スケールアップに取り組む起業家にとって非常に参考になる内容が詰まった1冊です。本書が提供するグローブ氏の経験や知見は、起業家としてのリーダーシップスキルを磨き、会社の将来に向けてより良い意思決定を行うための一助となるでしょう。
2)「ビジョナリー・カンパニー:時代を超える生存の原則」ジム・コリンズ著
要約:「ビジョナリー・カンパニー」は実際に成功している企業やそのCEOに共通する「習慣」から成功の秘訣を紐解く前代未聞の経営書です。卓越したパフォーマンスを引き出す原則や、それらの企業がどのようにして長期的成功を実現してきたかを解き明かします。
おすすめポイント:多くの起業家にとって、永続する企業をつくることこそが究極のゴールではないでしょうか。本書の調査は、持続的に発展し続ける組織を作るための、時代を超えて通用する法則や戦略を明らかにします。変わりゆく時代の中でも成功し続ける企業はなにが違うか、そしてその成功をどうやって自社でも再現できるかを知りたい起業家にとって必読の1冊です。
3)「7つの習慣」スティーブン・コヴィー著
要約:人生や仕事の成功を導く「7つの習慣」を提唱し、世界に大きなインパクトを与えたスティーブン・コヴィー博士の自己啓発本です。人として本来持つべき「人格」と、効果的な人生を歩むための時代を超えた「原則」を組み合わせた独自のアプローチが紹介されています。
おすすめポイント:組織の規模拡大と同時に、起業家自身も成長し続ける必要があります。本書は起業家がリーダーシップやコミュニケーション、問題解決などのスキルを向上させることに役立つ実用的な視点や方法を提供します。本書の7つの習慣を実践すれば、ビジネスのスケールアップに伴う様々な課題を乗り越えるために必要な資質を養うことが’できるでしょう。
4)「マイケル・ポーターの競争戦略」ジョアン・マグレッタ著、マイケル・ポーター協力
要約:経営学者マイケル・ポーターの理論を忠実に再現した本書では、業界内の競争要因や、個々の企業のポジションへのその影響を分析するための包括的なフレームワークが紹介されています。変化し続けるビジネス環境に対し、効果的な競争戦略を形成・評価するためのツールや基本原則を学べます。
おすすめポイント:会社をスケールさせるのと同時に、市場環境の変化に速やかに対応していく必要があります。本書は競争ダイナミクスや戦略プランニングなど、会社の競争力を維持しながら成長を促進していく上で欠かせないコンセプトがよくわかる1冊となっています。
5)「爆速成長マネジメント」イラッド・ギル著
要約:複数企業の起業家および投資家として成功しているイラッド・ギル氏が解説する、「スタートアップのスケールアップ」に関する様々なテーマをカバーした包括的なガイドブックです。組織体制や採用、資金調達、取締役会のマネジメントなどをはじめとしたトピックについて、業界リーダーたちの知見やアドバイスを知ることができます。
おすすめポイント:スタートアップを素早く効果的にスケールさせたいと考えている起業家にとって必読の1冊です。ギル氏の経験に加え、成功している様々な起業家の知見が紹介されている本書では、スタートアップに共通する課題への取り組み方や、組織にとってベストな意思決定にたどり着く方法などに関する豊富な知識を得ることできます。
6)「確率思考」アニー・デューク著
要約:元プロポーカープレイヤーかつ意思決定のコンサルタントとして活躍するアニー・デューク氏による、非常に考えさせられる1冊です。不確実性を受け入れ、リスクを評価し、結果から学ぶというプロセスを通してより良い意思決定にたどり着く技術を本書は紹介します。アニー・デューク氏の著書は以前も紹介したことがありますが、彼女の本はどれも読み応えがあり、おすすめできるものばかりです。
おすすめポイント:スタートアップをスケールさせるために、起業家は数え切れないほど多くの重要な決断をしなければなりません。本書では、不確実でリスクの高い状況であっても、より多くの情報に基づいた選択をするための思考ツールやフレームワークが紹介されています。組織にとって最終的に最も良い結果につながる意思決定の実現に貢献する1冊です。
7)「7 POWERS 最強企業を生む7つの戦略」ハミルトン・ヘルマー著
要約:ビジネス戦略の理解や形成に役立つ、シンプルかつ的確なフレームワークが本書では紹介されています。実際の体験談や実用的なアイデアを交えながら、持続的な競争優位性を確保するための「7つの力」について解説します。
おすすめポイント:強力な戦略基盤の確立を目指している起業家にとって必読の1冊です。「7つの力」を理解し、会社のビジネスモデルに応用できれば、長期的な成功や強固な市場ポジションの実現につながるでしょう。
8)「ポジショニング戦略」アル・ライズ著
要約:「Positioning」はアル・ライズ氏によるマーケティングの名著です。ポジショニングの概念を詳しく解説し、強力なブランドイメージの構築におけるその重要性を説きます。強固な市場ポジションの確立や、プロダクトやサービスの差別化などについて戦略や知見が紹介されています。
おすすめポイント:スタートアップの規模が拡大するとともに、効果的なマーケティングやブランディングの必要性も高まります。本書を読めば、強力なブランドポジションニング戦略を形成するために必要な知識やツールを得ることができます。競争の激しい業界環境において、顧客を獲得・確保することに役立つ1冊となるでしょう。
9)「The Great CEO Within」(英語版のみ)マット・モカリー著
要約:エグゼキュティブ・コーチングで有名なマット・モカリー氏による、CEOや起業家がより優れたリーダーになるための実践的ガイドブックです。目標設定や時間管理、コミュニケーション、意思決定、チームビルディングなどをはじめとした重要なトピックをカバーしています。
おすすめポイント:CEOとしてより効果的に企業に貢献するための実践的なアドバイスやテクニックを紹介する本書は、リーダーシップスキルを上げたいと考えている起業家にとって最適な1冊です。モカリー氏の知見を借りることで、健全で活気のある企業カルチャーを醸成しながら組織の成長を促がすことができるでしょう。
10)「Outlive: The Science and Art of Longevity」(英語版のみ)ピーター・アッティア著
要約:本書では長寿について最新の科学から考察し、健康やパフォーマンスの最適化に役立つ実用的なTipsを紹介しています。栄養や運動、睡眠、ストレス管理などの観点から、より長く健康的な生活を送るための知識や情報を読者にわかりやすく解説します。
おすすめポイント:効果的なリーダーとして組織を率いるためには、起業家自身の心身の健康にも気を配る必要があります。スタートアップをスケールさせることに伴う様々な課題を前にしても、最大のパフォーマンスやレジリエンスを維持できることが理想的です。本書が提供する実用的なアドバイスは健康の最適化に貢献し、その手助けとなるでしょう。
スタートアップをスケールさせることは決して簡単ではありません。しかし、時代を問わず通用する戦略やテクニックというのもあり、それらはスケールアップに伴う様々な課題を乗り越えることや、起業家自身や組織の成長を促進し続けるための手助けとなるでしょう。上に紹介した本が提供する貴重な知見や戦略、学びは、いずれも起業家にとって仕事と人生の両方において豊な成長につながるものです。長期的な成功を実現するための基礎に貢献する10冊を、ぜひご一読ください。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital