I love Japan.
私はアメリカのパスポートを持っていますが、人生の大半をこの国で過ごしてきました。私のアイデンティティは、ひとつの言葉では言い表せません。アメリカ人であることを誇りに思うと同時に、日本の一部であることにも誇りを持っています。日本は極めて優秀で勤勉な人材に満ちた国です。それにもかかわらず、世界から、そして時には日本人自身からも過小評価されてきました。
歴史を振り返れば、日本は何度も「不可能だ」と思われていた地点に到達してきました。
江戸時代の数百年にわたる鎖国と技術停滞の後、日本はわずか30年ほどで近代国家へと変貌を遂げました。やがてアジアで唯一、列強として国際連盟に名を連ねることになります。太平洋戦争の焼け跡からも、再び30年という短い時間で立ち上がり、G5の一角を占めるに至りました。領土拡大ではなく経済成長で再興を果たしたこの二度目の躍進は、日本の底力を示しています。
ただ、この成功体験はやがて硬直化を生み、日本は次の時代の変化を見失うことになります。
私が生まれた1989年は、戦後日本が積み上げてきた成長モデルの終わりを告げる年でした。いわゆる「失われた数十年」の始まりです。
皮肉なことに、バブル崩壊は日本社会を根底から作り替えるほどのショックにはなりませんでした。黒船来航や戦後の焼け野原のように、1990年代の経済崩壊は即座かつ劇的な再発明を迫る出来事ではなかったのです。その代わりに、日本はゆっくりとした衰退に向かいました。まるで長時間かけて茹でられるように。心臓発作ではなく、じわじわと進行する癌のような変化でした。
しかし2026年を迎えるにあたり、その空気は明らかに変わりつつあります。
平成以降に広がった「しょうがない」という諦観の空気は、もはや現実を前に通用しません。地政学と経済の現実が、日本に変化を迫っているからです。
日本は世界の他の国々と比べて相対的に貧しくなり、円は大きく下落しました。人口問題はもはや抽象的な未来の問題ではありません。中国の台頭はパックス・アメリカーナを揺るがしています。もはや、失敗を許容できる余地は多く残されていません。
日本人はよく「ピンチはチャンス」と言います。
まさに今、日本はそのピンチに直面しています。しかし同時に、この危機的な状況こそが日本の「第三の躍進」への好機を生み出しているのです。そしてこれは、Coral Capitalの2026年に向けた投資戦略の中核でもあります。
米中対立がもたらす日本の機会
現在、アメリカと中国は、新興勢力が覇権勢力に挑む際に生じやすい衝突——いわゆる「トゥキディデスの罠」に直面しています。その結果として進むデカップリングは、日本にとって朝鮮戦争以来とも言える大きな経済的機会を生み出しています。
日本はすでに、アメリカにとって最も重要な同盟国です。アメリカへの最大の外国投資国であり、最も多くのアメリカ人を雇用している外国企業群を抱えています。アメリカがサプライチェーンを再構築する中で、日本は「選択肢の一つ」ではなく、「不可欠な存在」になりつつあるのです。
半導体がその象徴です。AI競争の文脈では台湾とTSMCに注目が集まりがちですが、実際の技術スタックはそれほど単純ではありません。日本は、コンピューティングの基礎となる物理レイヤーで事実上の寡占的地位を持っています。
日本企業が握っているもの:
- 世界のフォトレジスト市場の80%以上
- フォトレジスト原材料の70%以上
- シリコンウェハーの50%以上
- 半導体パッケージ用絶縁フィルムのほぼ100%
仮に台湾を巡る有事が起きたとしても、AIや最先端のコンピューティングを前進させるには日本が必要です。
そして半導体は一例に過ぎません。ロボティクス、先端材料、原子力エネルギー、その他のハードテクノロジー領域でも、世界の産業は日本抜きでは成立しない構造になっています。
日本は世界の舞台から消えたわけではありません。消費者からは見えにくいサプライチェーンの奥深くに退きながらも、不可欠な存在として居続けてきたのです。
2026年の投資戦略:日米パートナーシップ
この「第三の躍進」は、過去2回とは違います。国内の大企業が完成品を輸出することで推進されるのではありません。日本とアメリカが双方向に深く統合される形で進むはずです。
私たちの投資戦略はシンプルです。アメリカは日本のハードウェアを必要とし、日本はアメリカのスケールを必要としています。
日本の起業家へ:アメリカで勝ってください
ディープテックや重要産業に取り組む日本のスタートアップにとって、国内市場はもはやゴールではありません。出発点です。防衛、エネルギー、材料といった分野で日本から生まれる技術は、アメリカにとっても国家安全保障上の意味を持ち始めています。そこで求められるのは以下の3点です。
- Day 1からのグローバル展開:日本市場で勝ってから海外へ、という順番を待つ必要はありません
- 戦略的整合性:アメリカ政府と産業界は、積極的に「非中国」のサプライヤーを探しています。その空白を埋める存在こそが、あなたたちです
- カテゴリー定義:目指すべきゴールは、単なるベンダーになることではありません。世界でそのカテゴリーを定義する存在になることです
アメリカの起業家へ:日本と組んでください
アメリカは原子力、ロボティクス、半導体といった重要産業を再構築しようとしていますが、製造能力に明確なボトルネックがあります。中国リスクを下げる最短ルートは孤立ではなく、日本の産業基盤とのパートナーシップです。日本と組むことで、以下の価値を手に入れることができます。
- サプライチェーン:他では入手できない高精度コンポーネントへのアクセス
- 知的財産の保護:安定した法の支配の下、知財流出のリスクを最小限に抑えた事業運営が可能
- 人材:「ものづくり」文化に根ざした高度なエンジニアリング力
潮目が変わり始めている
私はよく、アメリカの最大の強みは「非合理的な楽観」であり、1989年以降の日本の最大の弱点は「非合理的な悲観」だと言ってきました。しかしこれは、不変の国民性ではありません。かつての日本には、大胆さに近い自信があり、その自信が自らの想定を超える結果を生み出してきました。
いま、その自信が戻りつつある兆候が見え始めています。
近年の日本の政策議論には、これまでとは異なる明確な意思が感じられます。原子力、量子コンピューティング、防衛といった分野を国家戦略として位置づけ、「衰退を前提とする議論」から「成長を設計する議論」へと、フレームそのものが切り替わりつつあります。
課題は依然として大きいですが、議論の焦点が「どう生き残るか」から「どう勝つか」へと変わりました。
この変化は重要です。実行の前提条件は、常に自信だからです。
だからこそ私はこれまでの人生の中で、最も日本の未来に希望を感じています。
2026年、Coral Capitalのコミットメント
この「第三の躍進」を実現するには、橋が必要です。国内外を問わず、スタートアップと大企業の間の緊密な協力が必要です。
Coral Capitalは、この変化を傍観しているわけではありません。すでに半導体、原子力、ロボティクス、防衛など、この時代に不可欠な分野へ資本を投下してきました。
2026年、私たちはこの投資戦略に全力で取り組みます。世界市場に打って出る日本の起業家と、ビジネスの成長に日本が欠かせないと理解しているアメリカの起業家を探しています。両者をつなぐこと、それが私たちの役割です。
アメリカは日本を必要とし、日本はアメリカを必要としています。
失われた数十年に、終止符を打つ時が来ています。さあ、動き出しましょう。
