500 Startups Japanでは、世界60ヶ国で1600社に投資してきた実績を活かし、日本でも様々なノウハウを起業家の皆さんに伝えていきたいと考えています。
今回はSaaS関連のアーリーステージのスタートアップ向けに、その成長可能性を判断するための3つの指標をご紹介します。また、この指標に合わせて、日々の数字を管理するためのSaaSの指標管理テンプレートもこちらから無料でご利用いただけます。是非、これら指標とテンプレートを活用してください!
日本の「紙業界」に投資したい、と冗談まじりに言うことが時々あります。もちろん、文字通りの「紙」ではありません。何が言いたいかと言うと、ペーパーワークに多くの時間を割かざるを得ない業界の慣習や手続を、ソフトウェアを活用して効率化しようとしている会社に投資したい、ということです。もうすでにしばらく前から「ソフトウェアが世界を飲み込んでいる」のに、日本はそれに乗り遅れている気がします。まだまだ開拓の余地があるでしょう。
幸い、日本でもSaaSが注目されるようになり、この分野に興味を示す起業家や投資家が増えつつあります。これは素晴らしいことですが、アーリーステージのSaaSプレイヤーにとって案外分かりにくいのが、重視すべき指標とそれらの解釈方法ではないでしょうか。
もちろん、注視すべき指標は他にもたくさんありますが、あなたのSaaS事業が見込みあるか否かを判断するときに役立つ3つの指標があります。
1). CACの回収期間が12ヶ月以内であること
CAC(customer acquition cost – 顧客獲得費用)回収期間とは、顧客の獲得にかかった費用を回収するための期間です。つまり、顧客から利益を得られるようになるタイミングを示しています。キャッシュフローに影響するので、スタートアップにとって重要な指標です。もし、株式をあまり放出することなく比較的簡単に資金調達できるのであれば、この回収期間を18ヶ月間に延長することも可能ですが、とにかくこの指標は常に注視することが大事です。
CACの回収期間は、下の数式で計算できます。
CACの回収期間 = CAC ➗ ARPA [(CAC: 顧客獲得単価)/(ARPA: 顧客ごとの平均月間経常収益)]
2). 月間チャーンレートが3%未満であること
チャーンレートとは、既存顧客のうち退会する顧客の割合を意味します。穴の空いたバケツに水を注いでも、バケツは空っぽのままです。顧客獲得に資金を投入するのであれば、同時に、顧客維持に注力しなければ無一文になりかねません。チャーンレートが高いことはSaaS企業にとって終焉を意味するも同然ですが、「チャーンレートが高い」とは果たしてどの程度なのでしょうか?
狙っているセグメントにもよりますが、一ヶ月当たり3%ぐらいに抑えられれば順調だと言えるでしょう。
3). LTVがCACの3倍であること
LTV(Lifetime Value – ライフタイムバリュー)は、言うまでもなく、常にCACを上回っている必要があります。顧客獲得費用が、顧客による支出を上回ってはなりません。目安は、LTV ➗ CACが約3倍であるべきでしょう。
比率が高いことは良いことですが、必ずしも理想的だとは言えません。もしかすると、顧客獲得にかける費用が少な過ぎる上に、会社がそれを上回るペースで成長している、という意味かもしれません。
LTVは、下記数式から算出できます。
LTV =(顧客ごとの平均月間経常収益)➗(月間チャーンレート)
*これはLTVの簡略的な算出方法であり、(ホスティング、サポートやメンテナンスなどを考慮した)総利益を含んでいないことをご承知ください。
CACは、営業(給与)とマーケティングに要した費用を足した数字に、一ヶ月当たりの顧客獲得数で割ると算出できます。
顧客基盤の拡大は重要ですが、それは持続可能なものでなければなりません。実際は、既存顧客を繋ぎ止め、彼らから継続的な収益を得ることに支出する方が安上がりです。既存顧客をハッピーにするだけで、LTV ➗ CACを上げられます!
もしあなたがSaaSスタートアップを経営しているのなら、前述した3つの、そしてもっと多くの指標に気を配るべきでしょう。今回、立ち上げ時に役立つ、重要なSaaS指標をまとめたスプレッドシートも作成しました。スプレッドシートについて質問がありましたら、どうぞ気兼ねなくご連絡ください!
Founding Partner & CEO @ Coral Capital