数週間前にアメリカに向かっていた際に、私はとある調査を始めました。ここ2年間ぐらいの、日本のテック企業によるIPOの状況を知りたいと思ったのです。調査対象には、昨年IPOを行い、現在の時価総額が100億円(約9000万ドル)を超え、2008年以降に設立(ベンチャー・キャピタル・ファンドの満期は通常10年なので)されたテック企業を選びました。IPO時の時価総額ではなく、現在の時価総額に注目した理由については後述します。
IPO時の時価総額を基準にしたチャートは以下の通りです。唯一のユニコーン・イグジットはメルカリでした。他は5億ドルを下回る、より少額なイグジットでした。メルカリを含めると、12社中8社が1億ドルを超えています。これをどのように解釈するかは人それぞれです。「えー、日本では意義のあるIPOってあんまりないじゃん」と思う人もいれば、「へー、日本では2.5ヶ月毎に1億ドル超のIPOがあるんだ」と解釈する人もいるでしょう。
現在の時価総額も確認してみようと思った理由は、日本のスタートアップ界隈の人たちが時々冗談半分で言う「日本におけるIPOはシリーズBみたいなもんだよ」という事を検証したかったからです。これまでは、2000万ドル超の資金調達をしたくても民間市場から調達するという選択肢があまりなく、株式を公開するしかありませんでした。調達環境は変わりつつありますが、国内でグロースキャピタル or 大型資金を調達するのはやはり難しいことです。いずれにせよ、仮にIPOがシリーズBなのであれば、「シリーズB」後の時価総額は一体どれくらいに増加しているのだろうか?2018年7月27日現在の時価総額を活用すると、チャートの様子は大分変わります。
現在、時価総額が10億ドルを超える企業は2社、約9億ドルで間もなく10億ドルに達しようとしている企業が1社あります。さらに、2社が約6億ドルでした。12社全社が1億ドルを超えています。M&Aのイグジットを含まない、20ヶ月のサンプルとしては決して悪くありません。ユニコーンは注目度が高いので、記事になることが多いです。しかし、ユニコーンとは、時価総額が10億ドルを超える未公開企業に限定されるので、株式公開後に時価総額が10億ドルを超えた企業は除外されてしまいます。
さらに興味深かったのが、設立からIPOまでの期間が平均6年間だったことです。未公開のうちは潤沢なキャッシュを享受できるグローバルなスタートアップ環境では、IPOがどんどん先延ばしにされる傾向があります。投資家としてキャッシュを得るには10年近くかかることになります。この仕組みが良いか悪いかは別として、流動化までに長い期間を要することは日本ではあまり多くはありません。
日本のスタートアップ市場はまだ発展の途中ですが、決して悪いものではありません。本当はもっと注目されるべきです。日本にも勝者は間違いなくいます – しかも、書面上の含み益だけの勝者ではなく、すでに流動化できている本物の勝者たちなのです!
Notes: USDJPY 111.04, graphs use log scale, thanks to Masaya Hisakado for helping me with the data 🙂
Founding Partner & CEO @ Coral Capital