私たち500 Startups Japanがこれまでに投資してきたテーマの一つに、最新のテクノロジーを導入できずにスピード感を失ってしまった、規模が大きく旧態依然とした業界に挑むスタートアップへの投資があります。例えば、保険、物流、不動産などの業界です。
その過程で私たちが気づいたのは、こうした業界にアプローチする方法が基本的に2つあることです。1つは、ツールを構築し、既存企業にそのツールを提供するやり方です。このアプローチは成功するかもしれませんが、それには試練が伴います。多くの場合、既存企業は、これまでのやり方で何とかなっているので、居心地の良い現状を変えたくないと思ってしまいがちです。病気だという自覚のない患者に薬を売るのが難しいのと一緒です。そのため、セールスサイクルは非常に長くなることがあります。そして仮に、製品を買ってもらったとしても、もともとテクノロジーを活用することに慣れていないので、そうしたサービスのポテンシャルを最大限に引き出せないことも少なくありません。
もう1つのアプローチは、構築したテクノロジーを活用して、直接その業界に参入してしまうやり方です。まずは対象とする業界で、フルスタックでテクノロジーを駆使するプレイヤーになります。業務運営上の課題は色々とあるかもしれませんが、それらをいったん克服すれば、業界へのアプローチは、既存企業へツールを販売するアプローチよりも、むしろ早くなるはずです。多くの場合、テクノロジーを活かした新規の業務を設計する方が、既存の業務にテクノロジーを適用することよりも容易です。後者だと、現場の業務の進め方が既に固まっているので、例えば、「今までずっとこうやってきたし上手く行ってるんだから、なぜ変えなければならないのか?」と押し返されてしまうこともあるからです。
500 Startups Japanのポートフォリオ企業であるShippioは、フォワーダーにSaaSを販売しようとしたときにこのことに気づき、第二種貨物利用運送事業者の許可を取得しました。同じくポートフォリオ企業であるjustInCaseも、フルスタックとなって自ら少額短期保険業として登録を受けました。さらにすむたすも、不動産業界で同じようなアプローチを取っています。
本日、このテーマでの最新の投資先として、CAPSへの投資を発表できることを大変嬉しく思っています。CAPSは、テクノロジーを駆使したクリニックをチェーン展開することで、プライマリケア業界にアプローチしています。これまで医療機関は限られた医療資源の中で直接の医療行為以外の、患者及び現場の医療従事者のユーザー・エクスペリエンス向上になかなかリソースを割けずにいました。
この状況は変えなければなりません。診察の予約、キャンセルや変更はオンラインで出来るべきです。通院する度に、クリップボードに挟んだたくさんの書類を手渡されるべきではありません。以前受診したときの診察内容は、オンラインで簡単にアクセスできるべきです。クリニックは、患者を顧客として扱うべきです。カスタマー・エクスペリエンスを評価して改善するために、アンケートを実施し患者の待ち時間をトラッキングすべきです。
こうしたコンセプトは、他の多くの業界ではスタンダートと化しているのに、私たちは、医療機関は例外扱いしても良いという固定観念に囚われてきました。こうした概念を覆し、本来私たちが得られるべき「患者体験」の提供にチャレンジするCAPSを支援できることを大変誇らしく思っています。
未来のクリニックを構築するエンジニアやマーケター等のビジネス職と医療スタッフを募集しています。ぜひご応募ください!
Founding Partner & CEO @ Coral Capital