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競合がいることのメリットとデメリット

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のMBA Mondaysというシリーズの投稿を翻訳したものです。


今回は、競合との競争についてお話しします。ほとんどのビジネスにおいて、競合相手がいることは大前提です。私が職場へと歩いて向かっている際、ローカルビジネスの多くが、通りを挟んで文字通り向かい側に競合相手がいることに衝撃を受けます。競合とは、付き合い方を学びながら、依然として事業をうまく継続していけるものであることは明らかです。実際、競合がいることの良い点はいくつかあります。また困難なこともあります。この記事ではその両方について述べてみたいと思います。

最近私は投資先企業のCEOと一緒に朝食をとる機会がありました。その際、「営業チームは競合を嫌うが、マーケティングチームはむしろ好ましく捉える」という話になりました。このことは競合というもののメリットとデメリットの核心に迫るものです。あなたの会社がある案件を獲得しようとする際、手強い競合がいると、その案件を失ってしまうこともしばしばあるでしょう。営業チームは売上が彼らの評価や報酬となるため、そのような状況を嫌います。しかし競合他社が自社製品のマーケティングや、あなたの会社とその競合の双方が解決できる問題点を特定することに大金を投入するのは、あなたの会社にとって良いことなのです。それにより新たな需要が喚起されますし、そのうちのいくらかはあなたの会社に流れるからです。常により少ないものでより多くのものを得ようと努めるマーケティングチームは、このような事態を好みます。

競合がいることにはいくつかの良いことがあります。前述したように、競合がマーケティングに投資し、複数の競合によるマーケティングの努力が合わさって、黎明期の市場の発展が加速されるからです。一社だけで市場を構築するのは非常に難しいことです。また、大きな会社が市場に参入すると、それまで注意を払っていなかった多くの人がその市場を認めるようになります。そこには顧客や、やがてあなたの会社を買収する人も含まれるかもしれません。そしてチームのやる気に火をつける上で競合ほどの存在はなかなかいません。これまで私は多くの会社が市場を支配する座を獲得した後、惰走する場面を見てきました。そして厄介な新しい競合が参入し、彼らによって事業の一部を奪い取られた際、そこでまた突然チームの熱量が再燃するのです。全体として見れば、私は投資先企業が市場で唯一の存在であるよりは、競合がいる方が好きです。

しかし競合との競争は困難を伴います。第一に、強い競合がいると、しばしば頻繁に、彼らに事業を奪われます。それにより営業コストやクロージングに必要な時間が増え、急速な成長が難しくなります。競合はまた、市場でいわゆるFUD(Fear, Uncertainty, Doubt:不安、不確実性、疑念)を広めます。これは特に歯がゆいものです。私は投資先企業の競合がばらまいてきた、ありとあらゆる馬鹿げたたわ言を聞いてきました。そのような「馬鹿げたたわ言」のいくつかは長い間残り、市場における投資先企業の地位を傷つけました。また、競合は強力な協力企業や市場のゲートキーパー的な会社と事業提携といった関係を結ぶこともあり、市場のある分野への参入を難しくしたり、時には不可能にしたりすることもあります。競合は厄介な存在であり、色々な面でビジネスの運営を困難にします。

競合はまた、あなたの資金調達やEXIT戦略にも影響をもたらします。資金調達を行っている競合がいると、彼らと競争するためには資金調達する必要があるのだとしばしば起業家に思わせることになります。通常そんなことはないと私は思いますが、起業家にそうではないと説得するのは難しいでしょう。とは言え、あなたの会社は競合と資本市場やM&A市場で競争することになるでしょう。もし投資家があなたの会社の競合へ投資したら、多くの場合あなたの会社へは投資しないでしょう。もし大きな会社があなたの会社の競合を買収したら、おそらくあなたの会社を買収することはないでしょう。このような競合との争いは起業家の心に特に不安を沸き起こすものです。

競合なしに市場で長く経営し続ける会社は非常に少ないでしょう。俗に「模倣とは最も誠実な追従の形である」と言います。ならばそれに備えましょう。あなたのチームの全員が競合がいることの良い点と悪い点を理解するよう徹底すること。牙を研ぎ、市場でよりタフに戦う準備をするのです。卑劣な攻撃や機会の損失に備えましょう。また、機会が来たら競合のすぐ後ろを追従することを忘れずにいましょう。そして最も重要な点として、競合がいることによりあなたの会社がより良くなるように努めるのです。なぜなら実際にそうあるべきで、それはほとんど必ずと言っていいほど良いことだからです。

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Editorial Team / 編集部

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