fbpx

サンクコストの考え方

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿を翻訳したものです。


サンクコストとは、プロジェクトや投資、その他の取り組みにおいて、すでに費やしてしまった時間やお金(およびその他のリソース)のことです。それらはその取り組みに費やしてしまっており、取り戻せる可能性はほとんどありません。

サンクコストにおいて重要なのは、プロジェクトや投資に関して意思決定する時期が来た時に、その決定にサンクコストを判断要素として含めるべきではないということです。それらのコストはすでになくなってしまったものとして扱い、コストやチャンスに関し目の前にあるものだけに基づき意思決定すべきです。

もう少し具体的に話しましょう。あなたの会社で新プロダクト開発に資金を使ってきたとします。現在までにその取組に6ヶ月を費やし、ソフトウェア開発者3人とプロダクトマネージャー1人の常勤コスト、そしてあなたと会社幹部チームの時間を相当量投入してきました。全て含めると、あなたの会社はこの新プロダクトに30万ドルを使いました。それらのコストは埋没しています。それらはすでに使ってしまっており、そのお金を銀行口座に取り戻す簡単な方法はありません。

さて、この新プロダクト開発に問題が発生したとします。あなたは開発中のプロダクトの現在の出来栄えに満足していません。設計に従って思い通りに機能するとは思えません。修正は可能だと考えていますが、同じ開発チームを使い、幹部チームも同程度の努力をつぎ込んで、さらに6ヶ月かかると予想されています。開発を前に進めるか中止するか判断するのに、すでにプロジェクトで使ってしまった30万ドルは考慮すべきではありません。今後使うことを考えている追加の30万ドルだけを検討すべきです。最初の30万ドルはプロジェクトの続行・中止に関係なく、もう使われてしまっているからです。それは将来についての意思決定とは無関係です。

それを実行するのは簡単ではありません。使ってしまった費用を回復したいと思うのが人間の本性です。ビジネスの世界では、常にこのような場面に直面します。会社に5万ドルなり500万ドルを投資している場合、お金を取り戻すために投資を続ける必要があるという考えに、たやすく流されがちです。もし資金供給を止めれば、投資はほとんどの場合無駄になります。資金を投入し続ければ、最後には投資が上手くいってお金を取り戻し、利益さえ出せるチャンスがあります。

私は25年前にビジネススクールでサンクコストについて教わったにも関わらず、辛い方法でその教訓を学ばなければなりませんでした。それまでに投資してきた資金を守るため防衛的に追加投資を行った場合、たいていその追加投資は損益ギリギリか、明らかに悪い結果に終わります。私は同じことを何度も繰り返し見てきました。だから当社では全ての投資について、新たな資金投入に対する利益に基づき本当に厳しく検討しており、すでに投資してしまった資金は意思決定要素に含めないようにしています。

このことはシード投資や、「オプション」としてシード投資を扱うことに関する議論と結びつきます。あらゆる投資家が合理的であれば、すでに投資してきた資金ではなく、自身のメリットに基づいて追加投資ラウンドを検討します。しかし、ベンチャーキャピタルビジネスの世界は比較的狭く、評判も重要です。取り扱う10件のシード投資の内、1件しか追加投資を行わない投資家は、それが評判となり、今後は質の高いシード投資の機会に恵まれない可能性があります。当社では追加ラウンドを行ったことのある全ての個別シード投資案件を追跡しており、その大部分で良好な投資結果が得られています。しかし、損益ギリギリか、最終的に悪い結果となった追加投資案件も少数ながら存在します。何はともあれ、当社はそういう案件をレピュテーションを得るために扱います。そして、その価値を評価して自分たちのやっていることを把握し、評判を守るために行う追加投資を意識して小さくするように努めています。

現在進行しているプロジェクトや投資に対し追加資金を約束する時期が来たら、増額する投資分は他とは切り離し、その投資から得られる利益について評価する必要があります。すでにプロジェクトに使ってしまったコストは計算に入れるべきではありません。それを計算に入れると、投資判断を誤ります。

+ posts

Editorial Team / 編集部

AVC

Coral Capital

Editorial Team / 編集部

Coral Insightsに登録しませんか?

Coral Insightsのメーリングリストにご登録いただくと、Coral Capitalメンバーによる国内外のスタートアップ業界の最新動向に関するブログや、特別イベントの情報等について、定期的にお送りさせていただきます。ぜひ、ご登録ください!
Load More
New call-to-action