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起業家の妻が語る、嫁ブロック解消の秘訣

起業家の周囲には、支えとなっている存在がいるものです。それはともに戦う会社のメンバー然り、家族然り。特にCoral Capitalの投資先にはレガシー業界に挑むスタートアップも多く、なかには大手企業の会社員として長く勤めたのち、転身した起業家もいます。では、そんな彼らの変化を、家族はどのように感じ、受け止めているのでしょうか?

そこで今回は、Coral Capital(以下、Coral)のとある投資先企業代表の奥さまに直撃。結婚当時に勤めていた会社を辞めて起業し、そして現在に至るまでの変化を、奥さまである中田さん(仮名)の目線でたどります。そこで見えてきたのは、いわゆる「嫁ブロック」に発展する前の不安と向き合い方でした。

「起業したい気持ちを止められない」と思った

ーさっそくなのですが、ご主人から「起業したい」と言われたのはいつごろだったのでしょうか?

中田:結婚一年目の記念日を迎える少し前でした。私と夫は大学時代から付き合い始めたのですが、当時から「将来起業したい」という話は聞いていたんです。なので、びっくりしたものの「思っていたより早い決断だったな」と感じていました。

ーそのあとはどういったリアクションを?

中田:まずは「何をやるのか」「うまくいかなかったらどうするのか?」を聞きました。もちろん、私が納得できるようにプレゼンしてもらいました。そのときに聞いていた事業内容が「え、そういうジャンルが好きだったの!?」というものだったので…。私としては起業後の人生プランよりも、起業する際の事業内容を一番懸念していました。

ー最大の懸念が事業内容(笑)。でも、起業はOKしたということですか?

中田:そうですね。「ダメだったらどうするの?」と質問したとき、夫は「最初の事業が失敗したとしても、得るものがあるからやりたい」と話したんです。それを聞いて、彼のやりたい気持ちを止めることはできないと思ったんですよね。

ーご主人のことを理解しているから、起業をOKできた?

中田:どうなんでしょうね(笑)。起業したいと言われたときは驚きましたし、「これからの生活はどうなるんだろう」と不安にもなりました。でも、起業は大きな決断なので、話してくれている時点で、本人の気持ちは大方決まっています。彼の場合は事業内容も具体的でしたし、成長プランもありました。「そこまで言うなら」という気持ちでOKしたというのが、正直なところですね。

「なんでこんなにイベントがあるの?」「勉強会、多すぎない?」

ー起業してから、プライベートに変化はありましたか?

中田:会社員時代に比べて働き方を選べるようになり、自由度が上がりました。おかげで、一緒に過ごす時間は以前より増えた気がします。でも…。

ーでも?

中田:プライベートな飲み会が減ったかわりに、起業家同士の勉強会やイベント、会社の合宿などで不在になることが増えました。特に採用を強化したい期間中は、ミートアップなどで平日夜はほぼ不在となってしまいます。

ー確かに、ミートアップなどを開催するスタートアップやイベントに参加するスタートアップは多い印象があります。

中田:そうなんです、多いんですよ! 創業当時はビール一杯だけで終わっていたイベントも、徐々に開始時間が遅くなっていきました。採用強化中じゃないときも、勉強会や何かしらのイベントが月に1度、必ずありました。当初は「なんでこんなにイベントがあるの?」「勉強会、多すぎない?」と思っていましたね。

ー(笑)。

中田:あとは、基本的には頭のなかでずっと仕事をしている状態になったので、オンとオフの境目がなくなったようにも感じています。

ー基本的には仕事をしているということですか?

中田:ソファに座り、スマホで漫画を読んでいるのかと思ったら仕事の資料を読んでいたり。夫と会話していても「あ、今私の話を聞いていないな?」と感じる瞬間が増えました。家でリラックスしているとき、夫の頭のなかで事業アイデアが浮かんだときは、壁打ち相手としてアウトプットに付き合うようにもなりました。

ー奥さまに、お仕事の話をいろいろされているんですね。

中田:社長だからこその悩みもあるので、メンタルケア的にも夫の話をよく聞くようになったかもしれないですね。でも、話し相手として一番ヒヤヒヤしたのは、やはり初めての資金調達の時期でした。

ーピリピリしていた?

中田:そうですね。当時から夫の会社のバックオフィス業務を少し手伝っているので、家で相談に乗ることもありました。資金調達は事業だけでなく、一緒に戦う社員を守るために必要なもの。プレッシャーも大きいです。さすがに今は担当者が入社してくれたので多少緩和されていますが、それでも会社にとって大事なシーンを迎えようとしている時期は、家庭内も少しピリッとしますね。

家族は「起業?」「スタートアップ?」状態。不安だから反対される

ーお話をうかがっていると、中田さんは達観している印象があると言いますか…。

中田:達観していますか?(笑)

ー達観していると言うか、落ち着いていると言うか。Coralの投資先にはレガシー業界に挑むスタートアップも多く、もともと大手企業に勤務していた起業家もいます。そういった方々の間では「嫁ブロックされた」と聞くこともあり、ご家族から起業を反対されるケースは多い印象でした。

中田:反対されるということは、お互いにビジョンを共有できていないということ。起業してからどうなるのかがわからず不安だから、ご家族が反対するのだと思います。そもそも、スタートアップと言われても「??」となりますし。

ーだから先ほど「起業したい」と言われて、起業後のプランもプレゼンしてもらったのですね。

中田:そうです。お互いの意見を反発させても、嫌な気持ちになるだけです。だったら、ポジティブになれるように話し合えばいい。そして、お互いに「仮に失敗してもどうにかなる」と思えるのが一番いいですね。投資家にプレゼンするように、事業内容を説明してもらってもいいかもしません(笑)。

ー「起業したい」「起業はダメ」とお互いが一方的になるのを避けて、不安なところほどしっかり話し合うのが大切なのですね。

中田:相談されたときに、家族側から条件を提示してもいいと思います。相手はすでに「起業したい」という要求をしているので、こちらからは「◯年後にはこうしたい」など考えているビジョンを叶えるための条件を提示するんです。そうすれば、より不安は減るんじゃないかと思います。

ーご主人と話し合うことで、中田さんの不安はすべて消えたのでしょうか?

中田:「不安の落としどころを見つけた」という感じですね。あ、そう言えば起業当初からあった不安が1つ解消されています!

ーというと?

中田:夫は、起業当時の事業をピボットしています。最初の事業内容を聞いたときは懸念がありましたが、今の事業には納得感があります。おかげで、今は以前に比べてだいぶ安心して見守っています(笑)。

ーなるほど(笑)。パートナーだからこそ、不安を残したまま次のステージには進めないということですね。今日はありがとうございました。

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Editorial Team / 編集部

Coral Capital

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