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グローバル投資家からの資金調達について、SmartHRの事例から学べること

私たちが1号ファンドを立ち上げた際、日本におけるクロスボーダーM&A資金調達の機会に関する記事をそれぞれ書きました。M&Aの面では、幸運にも投資先であるPocket ConciergeをAmerican Expressに売却することができました。また資金調達の面では、Airbus Venturesを投資先であるInfostellarのシリーズAラウンドのリード投資家として迎えることができました。最近では、投資先のSmartHRが、国内外の投資家からシリーズCラウンドで61.5億円の資金調達を行うのに私たちも協力しました。

「グローバル投資家から資金調達するにはどうすればよいか」とファウンダー達から尋ねられることが近ごろますます増えているので、私たちの知見をいくらか共有したいと思います。当記事では、最も高い注目を集めたSmartHRによる資金調達を例に説明します。

そもそも、なぜグローバル投資家から資金調達するべきなのか?

SmartHRによる資金調達から学べる最も大きな教訓は、「グローバル投資家の持つ規模感は国内の投資家と大きく異なる」ということです。国内の投資家と話をしたところ、5〜10億円規模の投資を検討できる企業は相当数ありました。しかし、これほど大きなラウンドの場合、より大きな額を投資できる投資家のほうが望ましかったのです(そうでなければ、交渉相手や契約相手となる投資家の数や、調達後のキャップテーブル上の株主の数が増えすぎてしまいます)。私たちが話したレイターステージのグローバル投資家は、はるかに大きな規模の投資に興味を持っていました。ある投資家は、「実は、当社の最低投資額は30億円からで、可能なら既存投資家から買い取りたいとも考えています」と話していました。私たちは持ち株を売却するつもりはなかったものの、その言葉には感銘を受けました。

またグローバル投資家は、はるかに長い時間軸で投資を考える傾向がありました。国内の投資家からはよく、「IPOの時期はいつ頃を予定していますか」と尋ねられました。一方、グローバル投資家は会社のグロースや、日本市場すべてをどう獲得するかということに注目する傾向がありました。将来、より大きな成果を得られるのなら、投資先が上場するのを待ち続けることに彼らは前向きだったのです。

グローバル投資家から資金調達するなら、「グローバル展開する」必要があるのか?

私がよく耳にする誤解のひとつに、「グローバル投資家から資金調達するということは、事業をグローバル展開する意図があるということ」というものがあります。これは事実ではありません。私たちが話したグローバル投資家たちは、市場規模に関心があり、SmartHRの潜在的な市場規模は、国内で大規模な企業を構築するのに十分であると認識していました。あなたの企業が取り組んでいるマーケットが国内では小さいと投資家に思われるのであれば、グローバル展開について問われるかもしれません。そうでなければ、グローバル展開するかどうかは関係ありません。

海外の有名企業に似ていることはメリットである

グローバル投資家に私たちの投資先企業について説明する際には、海外で有名な類似企業を探し、シンプルに「〇〇の日本版」と言うようにしています。例えば、SmartHRの場合は「Gusto/Zenefits/Namelyの日本版」と説明していました。もちろん、さまざまな点で違いはありますが、まずは企業の事業内容とポテンシャルを端的に伝えることが重要です。グローバル投資家は、そういった海外企業のプロダクト、ビジネスモデル、評価指標に精通していることが多いので、それらと比較することで、投資家は少なくとも概要をつかむことができます。詳細については、その後で説明すればよいのです。

SmartHRの場合、プロダクトが米国の他の成功事例とよく似ていただけでなく、SaaS企業であったため、評価指標が理解しやすいものでした。投資家が日本について詳しくなくとも、評価指標を比較することで、SmartHRがうまくいっていると分かったのです。

バイリンガルでバイカルチュラルの経営陣がいるととても助かる

SmartHRのCEOである宮田さんが初期にとった行動の中で後に功を奏したのが、英語が堪能なCOOとCFOを採用したことです。倉橋さん(COO)と玉木さん(CFO)は、私たちがシリーズBをリードする直前に入社したのですが、2人の語学力が後に役に立つことになるとはっきり分かっていたわけではありません。しかしシリーズCの際、2人の語学力が必要不可欠であることに私は気付きました。私たちが投資家を紹介したり、資金調達のミーティングに参加した際、倉橋さんと玉木さんは、投資家とのコミュニケーションや契約の締結といった仕事の大部分をこなしました。私たちがいくら投資家を紹介しようとも、うまくコミュニケーションを取ることができなければ、契約締結に至るのはほぼ不可能だったでしょう。

さらに役立ったのは、既存投資家の多くがバイリンガルかつバイカルチュラルであったことです。WiLの難波さんとBeenextの前田さんは2人とも英語が堪能で、海外の投資家とも話が合います。2人とも、SmartHRと投資家を引き合わせたり、SmartHRのポテンシャルを説明する上で重要な役割を果たしました。私にはバイアスがあるかもしれませんが、もしも既存投資家との関係が良くなかったとしたら、グローバル投資家から資金を調達するのはずっと難しかったと思います。そして良い関係を築くには、バイリンガルであることだけでなく、バイカルチュラルであることも必要です。

ちなみに、宮田さんも英語学習に取り組んでいて、あっという間にとても上手になりました!そういった努力はとても大切です。

日本では、より大きな成果を求めて、より長い間上場しないことを選ぶファウンダーが増えています。そのため、グロースステージの資金調達をグローバル投資家から行う企業もこれから増えると私たちは考えています。日本のスタートアップの規模や目標が大きくなるのと並行して、各ラウンドでの調達規模もより大きくなっています。そういった大きなビジョンを実現するには資本が必要であり、その一部は海外から調達する必要が出てきます。私たちはこれからも、日本の企業と海外の投資家を結ぶ架け橋の一端であり続けたいと願っています。

M&ASmartHRエクイティファイナンスベンチャーエコシステム

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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