本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Cash Management In Startups」を翻訳したものです。
私が20代半ば、ベンチャーキャピタルで働きはじめたばかりの頃、ハードディスクドライブの製造で成功したシーゲイトの有名なファウンダー、アラン・シュガートについて書かれた記事を読みました。アランは「キャッシュは母親よりも重要」と発言したそうです。母親はとても重要な存在なので、アランの言葉は印象的でした。
長年の経験を通じて、私はアランの言葉の意味を理解することができました。スタートアップにとってキャッシュがすべてです。キャッシュはクルマを走らせ続ける燃料で、スタートアップが失敗するのはキャッシュが底を着くことが主な原因です。
私は昨日、ポートフォリオ企業とキャッシュフローの予測モデルについて検討していました。キャッシュフローの予測はとても役立つもので、実践することを強くおすすめします。
キャッシュフローの予測は科学というより芸術に近いものです。あらゆる予測不能な条件(売上、インフラコスト、人材採用のペース、受取債権など)に囲まれた成長企業にとってはなおさらです。
キャッシュフローの予測も他のすべての施策同様、実践することに意味があります。キャッシュフローを予測し、定期的に見直して、その時々の状況の変化に対応し、それがキャッシュの出入りと会社のオペレーションにどう影響するかを考えます。
会社が成熟し、繰り返し入ってくる売上ができれば、強いバランスシートを作ることができるでしょう。そうなれば、半年先や1年先を見据えた計画を持って会社を経営することができます。
けれど、会社を立ち上げてからしばらくは、ことあるごとに計画を変えて経営していくことになります。もし売上が入ってくるペースが遅いのなら、採用ペースも遅らせる必要があります。次の資金調達まであと半年待ちたいと考えるなら、運営方法を変えて時間を稼ぐ必要が出てくるかもしれません。
キャッシュマネジメント/予測とオペレーションは相互に影響します。この2つは連動しているのです。
すべてはキャッシュフローの予測モデルを作るところから始めます。将来を予測した損益計算書のようなものですが、キャッシュの出入りを基準に作成していきます。そこには、保証金や設備購入費といったバランスシートに入る項目も含めます。1年間の預金口座の入出金を予測するようなイメージです。
モデルが完成したら、これを定期的にアップデートしてください。チームの全員、あるいは一部が部屋に集まってアップデートすることが理想的です。その場にいる全員が、会社の経営判断がどのようにキャッシュとランウェイに影響するかを理解することができます。
私はこのプロセスを重要なシニアリーダー陣が集まって週に1回行うのがいいと思っています。チームメンバーの時間を無駄にしているように思うかもしれませんが、スタートアップにとってキャッシュは母親より大事なのです。キャッシュの管理にかけた時間が無駄になることはありません。
Editorial Team / 編集部