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過去30年で変わったアーリーステージのVCが取るリスク

この間、Benchmarkの創業者のひとりであるアンディー・ラックレフのインタビュー動画を友人が送ってくれました。BenchmarkはeBay、Uber、Twitter、Snapchat、Instagram、Dropboxをはじめとする多くの名だたる企業に投資しており、史上最高峰のVCのひとつとして名を馳せています。

ラックレフはインタビューの中で多くの知見を語っていますが、私が特に興味を惹かれたのは、30年前と現在で、シリコンバレーのアーリーステージVCに伴うリスクはどう変わったのかについてです。

シリコンバレーのスタートアップ投資における30年前と現在の比較

ラックレフによると、彼らが約30年前に投資したスタートアップは概して、技術面のリスクが高く、市場面のリスクが低い企業でした。思い描いたプロダクトを実際に作ることができ、従来のプロダクトより10倍優れたものを提供することができれば、そのプロダクトに需要があることは確実でした。言い換えれば、プロダクトの開発は困難でも、プロダクトを売るのは容易だったということです。

ソフトウェアの重要性が高まっている昨今では、状況は真逆になっています。Uberを作るのは、技術的には可能だと誰もが分かっていました。分からなかったのは、配車サービスを使いたい人がいるかどうかでした。Airbnbを作るのも、技術的には可能だと誰もが分かっていました。分からなかったのは、知らない人の家に泊まりたい人がいるかどうかでした。

また、競争環境も変わりました。今や、同時期に同じ課題に取り組んでいるスタートアップが20社あってもおかしくない時代です。だからこそ、実行面でのリスクが著しく高くなっています。投資家たちは、どのスタートアップが実際にトラクションを得るかを見極め、勝ち馬に投資しなければなりません。多くの場合、勝ち馬になるのはどのスタートアップか、誰もがなんとなく気づいています。こういった状況が、勝ち馬のスタートアップに投資しようとするVC同士の競争を引き起こすのです。

シリコンバレーのアーリーステージVCは、規模が大きくなるにつれ、市場リスクをエンジェル投資家たちに転嫁するようになりました。勝ち馬に投資できるのであれば、より後のラウンドで割高な価格で投資する余裕ができたのです。また、インターネットの利用者が世界的に増えたため、TAM(Total Addressable Market:実現可能な最大の市場規模)も増え、より後のラウンドで投資しても以前と同程度のリターンを得ることができるようになりました。

日本には当てはまらない点もある

ラックレフの主張の大部分はシリコンバレーにまつわるものであり、日本には当てはまらない点がいくつかあります。

ひとつ目の相違点は、日本では市場リスクが一般的に低いということです。理由は、多くのアイデアが、日本で実行に移される前にシリコンバレーで試されているからです。シリコンバレーで何がうまくいき、何がうまくいかないのかを知ることができるのは大きなメリットです。タイムマシンに乗って、未来の日本で何が成功するかを見極めることができるようなものです。もちろん、どんなプロダクトでも日本で再現できるとは限りません。しかし、シリコンバレーと日本で共通するニーズは多く、それらは同じようなプロダクトで解決できるのです。シリコンバレーがアイデアの試験場の役割を果たしてくれることにより、市場リスクはゼロにはならないものの、比較的低いといえます。

とはいえ、日本には日本特有の課題があり、日本のスタートアップエコシステムからは独特のアイデアが生まれていることも確かです。また、日本は多くの科学技術分野やコンテンツ分野において世界をリードしています。そういったケースの多くでは、前述した市場リスクの低さの議論は当てはまらないでしょう。

日本では、実行リスクもシリコンバレーに比べて低くなっています。以前の記事で述べたように、日本は競争が少ないため、スタートアップを立ち上げるには絶好の国です。アメリカや中国では、数十社、時には数百社にも及ぶ同業のスタートアップがしのぎを削っています。しかし日本では、スタートアップを立ち上げようと考える人が比較的少ないため、同じマーケットに取り組むスタートアップも少ないのです。当然それでも実行リスクはありますが、競争環境の影響は少ないでしょう。

シリコンバレーを見れば、日本の未来を100%正しく予測できるとは限りません。しかし、日本が向かうであろう方角を知ることはできます。より多くの人材や資本が日本のスタートアップ市場に参入すれば、日本のスタートアップ業界もシリコンバレーと似た方向にシフトしていくでしょう。

中国は良いケーススタディーです。中国のスタートアップ業界の黎明期には、成功したスタートアップの多くはシリコンバレーの企業を模倣した企業ばかりでした。今日では、決済、ビデオコマース、ハードウェア、AIなど多くの分野において、中国が先駆者となっています。先駆者になると、市場リスクは高まります。また、新たなプレイヤーや投資家が市場に参入し、実行リスクも高まっています。現在の中国とアメリカにおいて、スタートアップが直面するリスクはほとんど変わりません。

日本はまだまだ道半ばです。弊社パートナーのKenが、国ごとの対GDP比で見たスタートアップ投資比率を講演で紹介していました。以下のスライドで見てとれる通り、アメリカと中国が拮抗している一方で、日本は大幅に遅れをとっています。日本のスタートアップ業界は大きな発展をとげましたが、グローバルな舞台で闘うには、まだまだやるべきことがたくさんあります。

プロダクトマーケットフィットベンチャーエコシステム
James Riney

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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