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この開催間近なイベントに際して、「スタートアップにジョインする前に考えておくべきことは何か」について書くのに良い機会ではないか思いました。ここで私が取り上げる多くのポイントは、スタートアップだけでなくどのようなキャリア決定にも関係してくることでしょう。ただ、スタートアップ界隈に向けて書かれたものは多くないので、この記事が特にお役に立てば幸いです。
あなたが考慮しなければならない、無限にありそうな事項の中でも、まず最初に考えるべきことは「何があなたにとって最も重要なのか」ということです。多くの人にとっては、キャリアアップの加速(Career)、企業文化(Culture)、報酬(Compensation)のどれかではないでしょうか。全て大切ですが、この3つの中でも、どれが最も重要なのか解き明かすことであなたの決断が明確になるでしょう。
もしキャリアアップの加速が最も重要なら
スタートアップの素晴らしい点の1つは、キャリアアップを加速させることができるということです。例えば、大企業では到達するのに何十年もかかるようなポジションでも、わずか数年で得ることができる場合があります。そして上位の職務領域に踏み入れることで、会社の成長とともに権限の幅も広がっていくでしょう。
あるいは全く異なる職務領域へ水平移動して、新たな経験を積むこともできます。多くのスタートアップでは状況が常に変化していくため職務領域の定義が緩かったり一時的なものだったりする傾向があります。セールスマネージャーとして働き始めても、会社が進化するにつれてカスタマーサクセスマネージャーへと役割が変化していくこともありうるのです。あるいは、既に大企業でセールスマネージャーを務めていて、スタートアップのカスタマーサクセスの仕事へ切り替えることに関心があるかもしれません。スタートアップはそういったキャリアチェンジに対して柔軟な傾向があります。
キャリアにおける成長については問うべき質問がいくつかあります。
- 『この仕事につく人にはどんな進歩を期待するのか?』 あなたのキャリアのことを考えている会社がいいでしょう。
- 『この仕事で新しいスキルや技術を学ぶことができるのか?』 価値のあるつぶしのきくスキルが得られるポジションを選ぶべきでしょう。
- 『そのスタートアップは自分が関心のある業界で事業を行っているか?』 一つ前の質問に似ていますが、そこでの経験はあなたの経歴の一部となりキャリアを方向付けるため、これは大切なことです。
- 『この先5年間にわたってどんなポジションの可能性が開いてくると考えられるか?』 会社の成長に合わせてあなたにどんな機会があるのかという全体像は把握しておくべきでしょう。
仕事によっては新しいスキルや権限が得られるだけでなく、長期的なキャリア形成に役立つネットワークやブランドを得られることがあります。スタートアップでのブランド形成やネットワーク形成から得られる恩恵を測るためには、次のことを考えてみましょう。
- 『このスタートアップは既に強固な「ブランド」を手に入れているか?』 有名な企業の出身者になることは、のちにあなたがより良いポジションを得る機会に繋がります。
- 『創業者たちはどんなキャリアを持っているのか?』 もしその会社の創業者たちが成功を積み重ねてきて実績があるのなら、彼らはあなたが良い関係を築くべき相手でしょう。
- 『会社のメンバーはどんなバックラウンドを持っているか?』 チームメンバーに飛び抜けた実績がある人や、尊敬できる優秀な人たちがいれば、彼らから学べることはたくさんあるでしょうし、長期的にはかけがえのない存在になるでしょう。
もし企業文化が最も重要なら
人によっては、自分が心から好きになれる文化を持つ会社で働くことはキャリアを前進させることよりもずっと重要でしょう。
企業文化は会社のコア・バリューと事業の運営方法から始まります。彼らが信じていると言うものや実際にしていることが、その会社の文化を物語ります。次の質問を尋ねることで、これらの要素をより良く理解できるでしょう。
- 『コア・バリューは何なのか?それらはどのようにプロセスやポリシーへ反映されているのか?』 ビジネスにおける意思決定でどのように反映されているのか知ることで、その会社にとって文化がどれだけ重要なのかを感じ取ることができるでしょう。
- 『この会社の人たちとうまくやっていけるだろうか?』 経営陣と話したことはあるかもしれませんが、他の人たちはどうでしょうか?従業員と話してみることで、その会社の文化についてより多くの情報を得ることができ、その文化が社内全体に一貫しているかどうかを見定めることができるでしょう。
- 『優秀なのにその会社ではうまくいかないのはどんな人たちなのか?』 強固な企業文化というものは、一部の人たちにとっては成果を出しにくいものです。それは彼らに才能がないからではなく、その文化にフィットしなかったからです。
- 『社員同士の交流イベントや飲み会などはどんな感じか?』 比較的に内向的な人たちには毎週強制参加の飲み会などはあなたにとって地獄となるでしょう。
- 『チームメンバーは1 on 1の体制を構築しているか?』 人によって、「体系化」されたマネジメントスタイルを好む場合もあれば、堅苦しくない形式で十分という場合があります。しっかりとしたマネジメントを好むのであれば、1 on 1ミーティングは重要です。
会社がどのように動いているのかという点に企業文化が現れていることがしばしばあります。社員が遅くまで働いているのか、あるいは始業時刻は早いのか?全員いつもオフィスにいるのか、それともリモートワークが多いのか?そのスタートアップでの働き方や柔軟さを理解することは極めて重要です。
- 『リモートワークはどんな規則になっているか?』 家にいて仕事ができることは、全体的な柔軟さの指標となります。もし家やカフェから仕事したいのであれば、これは大きなメリットです。
- 『休暇の規則はどうなっているのか?』 生活の状況によりますが、より多くの休みを取りたいと思う人もいるでしょう。
- 『ここで働く他の人たちに自分と似たような生活状況の人はいるのか?』 従業員の詳細な生活を知る方法はもちろんないでしょうが、オフィスを見回して、そこで働く人たちの雰囲気を感じ取ってみましょう。もしその会社が特定の年齢層や経歴の人だけを引き寄せているのであれば、たぶん彼らのニーズに合わせた方針が取られています。
- 『創業者たちは今年休暇を取ったか?』 あなたが際限なく休暇を得ることができるか、それとも2週間だけなのか。重要なのは、その会社の人が実際に休みを取っているかどうかです。
もし報酬が最も重要なら
誰しも自分の優先順位や環境というものがあります。キャリアアップや企業文化以上に、報酬を優先する方もまた一定数いるかと思います。
報酬について考えるとき、その報酬と引き替えにどれほどのリスクを取ろうとしているのかを考えるべきです。スタートアップの賃金は大企業と比べて必ずしも少ないというわけではありません。実際、日経新聞が昨年掲載した記事によると、スタートアップの平均年収は実は大企業よりも高かったことが示されています。しかしながら、スタートアップはより多くのリスクがある傾向もあります。大きな会社でも小さなスタートアップでも、その会社が給与を支払い続けることができるという保証はありませんが、大企業の方が長く賃金を支払い続けてきたという実績があるのが現実です。
報酬は現金や株式の形を取ることが多いでしょう。現金の方が短期的にはより価値があるように思えますが、もしそのスタートアップが大企業へ成長するとすれば、株式のほうが経済的に人生を変えうるものとなります。
あなたがその会社で得られる報酬を明らかにするための質問の仕方はいくつかあります。
- 『この職務に対する給与レンジはどのくらいか?』 給与レンジが高いほど、さらに多くの収入を得られる可能性があります。また、どのように昇給が決まるのかも知りたいことでしょう。
- 『自分が受け取ることになる株式はその会社の何パーセントに値するのか?』その会社におけるオーナーシップの割合によって、会社のIPOや売却時に得られる潜在的な報酬の雰囲気がつかめることでしょう。
- 『この会社はどのくらいの速さで成長しているのか?』その会社が長期にわたって給料をたくさん支払っていくポテンシャルは、どのくらい速く成長していくのかと密接な関係にあります。より速い成長は、そのスタートアップがより多くの資金を調達して社員に投資出来るかに繋がります。
スタートアップのステージが早期であればあるほど、給与レンジやインセンティブ計画が定まっていない可能性がある、ということは覚えておきましょう。もし体系化されたものを求めるのであれば、よりレイターのステージにあるスタートアップにジョインすると良いでしょう。しかしながら、もし不確実性も楽しめる人なら、アーリーステージにあるスタートアップはワクワクするやりがいと(株式が報酬に含まれていれば)大きな経済的リターンの両方を提供してくれることでしょう。
スタートアップで働くことはリスクがあると捉えられる傾向にありますが、どんなキャリアチェンジにもリスクはつきものです。あなたの優先順位を整理して、正しい質問をすることで、間違った行動を回避して理想的な軌道に乗ることができます。何をすべきか明確にすることは、3つのC(Career・Culture・Compensation)のどれがあなたにとって最も重要なのかを決めることから始まります。
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Founding Partner & CEO @ Coral Capital