新型コロナウイルスは世界経済を停滞に追いやり、世界中の政府がこのパンデミックへの対処に奮闘しています。人口の非常に大きな割合が首都圏に集中している日本は特に難しい状況にあります。その人口密度と、東京オリンピックが近づいていることを考えると、今後数か月が正念場となるでしょう。
安倍首相が「非常ボタン」を押したのは、不思議ではありません。休校の要請は、「私たちは真剣にこのウイルスへ対応する必要がある」という強烈なメッセージとなりました。この行為は一部の方に極端だと受け止められていますが、実はこれには先例があります。ある研究によると、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)大流行の際にメキシコで実施された18日間の全国的な一斉休校によって、インフルエンザ感染率が29%〜37%も減少しました。もっとひどかった1918年のインフルエンザ大流行(通称、スペインかぜ)は世界で推定約5,000万人の死者を出しましたが、流行し始めた頃に休校と集会禁止を決めた町は、対応が遅れた町と比べて、週あたりの死亡率が約50%も低かったのです。
多くの企業が、すでにリモートワークの方針を制定している一方で、まだの企業はこの流れに従うようにプレッシャーがかかることでしょう。休校によって多くの人が自宅で子どもの世話をする必要が生じ、多くの企業も基本的にそれを受け入れることが求められています。
このひどい状況は「リモートワークが必要に迫られて広く受け入れられるようになってきている」という想定外の結果をもたらしました。近年トップダウンで働き方改革の動きがある一方で、「物理的にオフィスへ出社しなければならない」という深く根付いた文化的なプレッシャーがボトルネックとなっていました。今回の出来事は、今の働き方に疑問を投げかけるきかっけとなり、リモートワークのメリットを人々に気付かせているのではないでしょうか。
10年前であれば、このショックはリモートワークをメインストリームに押し上げるほど十分ではなかったかもしれません。何がこれまでと違うのかというと、今の私たちにはシームレスにリモートワークを実現するとても強力なツールがあるのです。特にZoomのようなビデオ会議サービスやチャットアプリのSlackは、コミュニケーションのための十分な基本ツールとなります(ちなみに、どちらの株価も先月から急上昇しています)。そしてGoogleドキュメントやMicrosoft Officeがリアルタイムの共同作業を可能にし、TrelloやAsanaは直感的で使いやすいタスク管理システムを提供しています。他にもリモートワークを可能にするプロダクトは、おそらく何千もあります。
より多くの企業がビジネスを継続する方法を見つける必要に迫られることで、日常業務でもこうしたサービスを導入する需要が伸びていくでしょう。この困難な状況下で、こんなことを考えるのは、やや配慮に欠けるかもしれませんが、こうした制約のおかげで大規模なリモートワークは興味深いケーススタディーとなるでしょう。
シリコンバレーでは多くの人が「リモートワーク」というアイディアを20年以上も支持してきました。Apple、Google、Facebook、その他の企業はぜいたくな本社オフィスに何千億円も費やしていますが、多くのソフトウェア・エンジニアは、こうしたオフィスで働くことよりもノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンをつけて、どこからでも働ける自由のほうを選ぶことでしょう。そんな考え方をする人が日本で増えるかどうか興味深く見守りたいところです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital