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BizDevとは「資産価値を上げる仕事」、GovTechスタートアップが実践する3つのこと

大手からスタートアップまで、多くの企業で募集されている「BizDev」というポジション。でも、企業によって定義があいまいで、どんな仕事かイメージがわかない人も多そうです。

「一部のスタートアップでは、BizDevがSalesの意味で使われていたり、定義が曖昧な場合があります」と指摘するのは、行政の手続きを効率化するサービスを手がけるスタートアップ「グラファー」取締役COOの井原真吾さん。

グラファーは2018年のサービスリリース以降、政令指定都市をはじめとした複数の自治体で公式サービスとして利用が進んでいます。そんな同社では、資産価値にコミットするのが「BizDev」、利益にコミットするのが「Sales」と両者を明確に分けているそう。

ところで、資産価値にコミットするってどういうこと?

6月16日にCoral Capitalが開催したオンラインイベントで、グラファーが定義する「BizDev」について井原さんに深堀りしてもらいました。スタートアップやBizDevに興味を持っている人にとって参考になるはずです。

BizDevは「資産」に向き合う仕事

BizDevの仕事はBS(貸借対照表)の資産価値を上げること、営業の仕事はPL(損益計算書)の利益を上げることだと、井原さんは定義します。

この定義によれば、Salesは1つのプロダクトで今年度の利益を最大化することを優先します。そして、BizDevは1つのプロダクトの適用範囲を広げ、今後の10年、20年でいかに利益を最大化するかを考えます。さらに井原さんはこう続けます。

「Salesはプロダクトを使い始めてもらうまでが勝負。資産価値を重要視するBizDevは、プロダクトを使う前から、使ってもらって価値が出るところにコミットできるかどうかが重要になります」

では、資産価値を上げるために、BizDevはどんなことをしているのでしょうか? グラファーの導入事例を挙げながら、具体的な取り組みを紹介します。

プロダクトのフィードバックを受ける機会をつくる

グラファーはスマホで質問に答えるだけで、必要な行政手続きを市民に案内する「Graffer 手続きガイド」を自治体向けにSaaSで提供しています。

同社のBizDevは製品を導入してくれた自治体の市役所に出向き、実際に利用した市民を集めて座談会を開催。市役所の職員と一緒に、プロダクトを使った感想をヒアリングしました。

そこで耳にしたのが「市役所は2回行くところだと思っている」という市民の声。行政手続きのために市役所に行っても、用意すべき持ち物を忘れてしまい、家に取りに帰って再び市役所に出向かなければならないという意見でした。

この声を受けてグラファーのBizDevは、「Graffer 手続きガイド」のUI改善をプロダクトマネージャーに提案。その結果、必要な行政手続きを紹介する画面で、目立つ場所に「持ち物リスト」を表示することになりました。

「単なるアンケートでは本質的なインサイトに迫るのは難しいですが、自治体と組んで座談会を開いたことで、貴重なフィードバックを拾うことができました。座談会はプロダクト側からの指示ではなくBizDev側の発案。資産価値を上げるための行動でした」(井原さん)

業務の根幹にかかる踏み込んだ提案も

続いては、新型コロナウイルスの影響で、融資に必要な手続きのために窓口に申請が殺到していた横浜市の事例。オンライン申請によって、30〜180分ほど発生していた来庁者の滞在時間を1〜2分に短縮しました

 

窓口滞在時間を削減するにあたっては当初、以下のようなフローを想定していました。

  • 融資制度を利用したい事業者は来庁前に事前に申請
  • 審査結果を、自治体側から事業者に連絡
  • 事業者は印鑑・必要書類を持参して来庁
  • 窓口で押印などの手続きを経て、認定書を交付

しかし、「窓口で印鑑を押す」フローになるということは、「申請日」は来庁時となります。来庁前の申請から時間が経っている場合、申請内容の見直しが必要となるケースが発生するため、かえって運用が複雑になるという問題が発生していました。そのため、手続きに押印をなくすための方法を探ります。

そこでBizDevの担当者は、横浜市と課題を共有し、経済産業省・中小企業庁に融資に必要な認定手続きのガイドラインの見直しを提案をしてもらいました。結果、様式から押印欄を削除し、押印を一律に求めないことを中小企業庁に見直してもらうまでに至りました。この方向性に沿って、横浜市の判断で押印を不要とすることができたのです。

「ただ受注するだけならここまでやらなくていいかもしれませんが、プロダクトの資産価値を上げようとすると、場合によっては一歩踏み込んだ業務の根幹にかかわる提案も必要になってきます」(井原さん)

ときにはクライアントの業務フローも改善する

神戸市からは自治体職員に代わり、住民からの問い合わせを受けたり、中小企業向け補助金の審査を行ったりするアウトソーシング業務も受けています。

実業務を踏まえて課題を抽出しながら業務フローを作成し、その数はアウトソーシング受注から5日間で52版に上りました。さらに、申請を電子申請に促し、補助金審査がスムーズになるように、神戸市公式ホームページの文言の見直しを提案したり、オンライン申請用のトップページを設置。実際に、オンライン申請と郵送申請での審査処理時間は、半分以上の時間差があったため、効果は非常に大きかったそうです。

「BizDevはこのような、言ってしまえば泥臭い作業や調整をやりながら、資産価値を上げるためにプロダクトを使いやすくすることを意識しています。その過程では法律を読み込んで、僕らが簡素化したい手続きが、本当に法律で規制されているかを確認することもあります」(井原さん)

行政の手続きを効率化するサービスを手がけるグラファーのBizDevには、「最終的な市民のメリットを考え、問題解決する志向が求められる」と井原さん。プロダクトの改善から、時には政策の提言、法令の理解を進めながら資産価値を上げるのが仕事と言えそうです。

6月16日に行われたオンラインイベントではこのほか、グラファーのBizDev社員が語るパネルディスカッションも開催。グラファーに転職して感じたこと、BizDevとエンジニアの関係、BizDevとして活躍する人の条件などを語りました。こちらについては、後日掲載の続編記事でお伝えします。

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