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黄金の手錠、4年のベスティングが終わるまで怠ける文化を防ぐには

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Golden Handcuffs」を翻訳したものです。「黄金の手錠」(golden handcuffs)とは離職を防ぐための報酬設計のことで、将来の昇給やストック・オプションのベスティングなどを指します。退職すると権利がなくなるために、モチベーションが下がったままであるのに会社に留まる社員が発生するという問題について取り上げています。


Daniel Olshanskyからツイッターでこのような質問がありました。

「@fredwilson 社員は仕事を辞めたいと思っていても、黄金の手錠のせいで会社に留まってしまうことがあります。このような「ベスティングが終わるまで怠ける」文化を防ぐ方法について以前に書いたことがありますか?」

AVCでこの問題を取り上げたことはないと思いますが、バリュエーションの高い私たちの投資先企業でこの問題が起きているのを見たことがあります。

問題はこうです。高成長企業に入社する際、社員は会社のバリュエーションと連動して価値が高まるストップオプションを受け取ります。会社を退職する場合、ベスティングが終わった分は行使し(税金も支払う)、ベスティングが終わっていない分は放棄しなければなりません。なので、仕事に不満があっても退職せず、会社に残ってしまうのです。やりがいのある仕事ができていないのかもしれませんし、職場のマネジメントに問題があるのかもしれません。これが「ベスティングが終わるまで怠ける」文化が起きる原因です。

私の考えは以下の通りです。

(1) 4年でベスティングが完了するストックオプションは贈り物ではありません。一定期間を過ぎたら自動で得られるのではなく、継続的に成果を出した報酬として受け取るべきものです。成果を出していないのなら、ストックオプションが付与されない可能性があることを社員は理解すべきでしょう。会社は、ストックオプションを発行したときだけでなく、継続的にこのことを社員にはっきりと伝えてください。これは文化の問題であり、そのように扱う必要があります。

(2) マネージャーとチームメンバーが頻繁に成果の振り返りや双方向のフィードバックを行うようにするなどして、会社は社員のパフォーマンスが何かしらの変化に結びつくパフォーマンス主軸の文化を作る必要があります。パフォーマンスがチームの再編やマネジメント層の変化、社員の解雇などに反映される文化を作るということです。積極的にパフォーマンスを管理しないのなら、社員のモラルは下がり、「ベスティングが終わるまで怠ける」文化といった有害な問題が起きるでしょう。

(3) マネジャーや会社の経営陣はこれを自分の責任と捉え、取り組まなければなりません。社員は周りの環境に順応します。会社に「ベスティングするまで怠ける」文化があるのなら、まずは自分たちに問題がないかよく見てみることです。

(4) 私は、ストックオプションの行使に合わせて資金が借りられるサービスが登場することを期待しています。現在これに積極的に取り組んでいる企業がいくつかあります。退職する社員は、ストックオプションを行使した際にかかる税金が支払えるよう、価値ある株式を担保にノンリコース(訳注:責任の範囲が担保に限定されるローン)で資金を借りられるようにすべきでしょう。そうすれば社員が税金(場合によっては行使価格)を支払う余裕がないから退職できないという問題の一部を解決できると思います。

(5) ストックオプションの制度そのものに問題であるとは考えていません。行使時に課税する政策は良くないと思いますし、米国政府には課税するタイミングを流動性イベントの発生時に変えてほしいとは思っています。とはいえ、この問題は資本市場を利用して解決できるのではないかと私は考えています。

(6)「黄金の手錠」に関連するほとんどの問題は、この問題に正面から取り組み、社員の反感を買うかもしれない難しい決断を下すことを避けてきた経営陣のマネジメント能力の低さが原因であると考えています。

Daniel、これがこの問題についての私の考えです。 質問してくれてありがとう。

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Editorial Team / 編集部

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