暗号資産による資本市場のイノベーション

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Innovation In Capital Markets」を翻訳したものです。


数年前、2016年頃だったと思いますが、リミテッドパートナーとの年次総会でブロックチェーンと暗号資産テクノロジーについてディスカッションを行いました。聴衆の1人が、ニューヨーク証券取引所とナスダックはこうした技術を使って資本市場を再構築できるのではないかと話したのを覚えています。私は、そうなるよりもブロックチェーンを用いた新しい市場や既存の暗号資産市場が台頭し、従来の資本市場と競合する可能性が高いと答えました。
そして現在、24時間365日取引可能な暗号資産のマーケットプレイスの時価総額は5,000億ドルを超え、1日の取引額は数千億ドル規模に達しています(訳注:2020年12月中旬時点。2021年2月12日現在の時価総額は約1兆4,500億ドル)。従来の資本市場と比べると見劣りしますが、新参者は常に劣って見えるものです。
従来の資本市場もじっとしているわけではありません。例えば、IPOのプロセスでは本物のイノベーションが起きています。
しかし、世界が向かっている先を知りたいのであれば、暗号資産市場を見るといいでしょう。ブラウザかスマートフォンと暗号資産用のウォレットがあれば、誰でも昼夜問わず、世界中どこからでも暗号資産を買ったり、売ったり、保有したり、送ったりすることができます。暗号資産スタートアップに投資するのに裕福である必要はありません。誰でもできます。
また、暗号資産市場はロックアップやベスティング、ガバナンスなどの分野でもイノベーションを起こしています。従来のIPOでは通常、株主には180日間のロックアップが課せられ、その期間を過ぎると解除されます。暗号資産市場では、さまざまなベスティングやロックアップの条件が試されています。最近では、株主のロックアップ期間を長く設定するものの、早期に少額、あるいは一定の流動性を与える条件が登場しています。
また、暗号資産プロジェクトの運営方法についてトークン保有者のコミュニティが提言できるようにするなど、ガバナンス面でも多くのイノベーションが起きています。ここ数か月の間にトークンの総供給量やインフレ率、テクノロジーロードマップなどについて重要な変更がいくつかのコミュニティで行われました。公開企業では株主が会社の方向性について、このようなレベルの影響を与えることは考えられません。
現在、これらの市場は並行して存在していますが、この状態が永遠に続くとは思えません。証券をトークン化して、トークン化したものを暗号資産市場で取引するのは割と簡単です。今はまだそうなっていませんが、そう遠くない未来に実現するのではないかと思います。そうなれば、従来の市場と新しい市場で、同じ資産が取引されることになります。裁定取引の機会が増え、新しい市場は従来の市場にできるだけ早く適応、変化、進化するプレッシャーをかけることになるでしょう。従来の市場がこれに順応するのは不可能ではないにしても、かなり難しいことです。
暗号資産市場のグローバルな性質は、これまでイノベーションを阻んできた規制当局にとっても課題となります。例えば、なぜ米国のスタートアップに投資するのに裕福でなければならないのでしょうか。これは、一定の富裕層が金を持ち続け、それ以外の人たちが金持ちにならないようにするためです。暗号資産を取引していて、米国で入手できないものがあれば、別の場所で取引したり、貸したり、投資したりすることができます。ほとんどの人がそうしています。これにより、米国のように規制当局が資本市場のイノベーションを疎ましく思い、受け入れるのが遅くても、暗号資産市場ではイノベーションが起こせるのです。
なので、資本市場の未来が知りたいのであれば、従来の市場ではなく、暗号資産市場を見たほうがいいでしょう。イノベーションや実験など、新しいことはすべてそこで起こっています。

Coral Capital

Editorial Team / 編集部

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