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スタートアップ投資がしたい? 独立系VCを始めるのはオススメしません

今でこそベンチャーキャピタリストとして働いていますが、実は最初からそれを目指していたわけではありません。前に立ち上げたスタートアップでバーンアウトしてしまったあと、少しリフレッシュして充電する時間が私には必要でした。そこで、次の会社を立ち上げるまでの有意義な充電期間として、しばらくは投資家側に立って経験を積んでみようと考えたのが最初のきっかけでした。投資家になれば、様々な業界やビジネスモデルについて学べる上に、次のスタートアップに活かせる強力な人脈作りができます。起業家として次の高みを目指す上で、最適な「ベースキャンプ」になると思ったのです。

転機が訪れたのは、DeNAで投資家として働く中で500 Startupsの方々と親しくなり、彼らの日本向けファンドを共同で立ち上げないかと持ちかけられたときでした。乗り気になった私は長年の友人であるYoheiを誘い、ともに正真正銘の「ベンチャーキャピタリスト」としてスタートを切ることになったのです。

それでも最初の頃は、いつかまたスタートアップの起業家になることを頭のどこかで思い描いていました。しかし、ベンチャーキャピタリストとして成長する中で、私の起業家としての野心が着実に満たされていくことを実感するうちに、その考えも次第に薄れていきました。ベンチャーキャピタリストとスタートアップ起業家の活動は似ている部分が多く、私が起業家になっていたらやっていたであろうことを別の形で実現できていたからです。

まずはわかりやすいところで、資金調達面で似ていました。当時はベンチャーキャピタルファームを経営した経験も実績もありませんでしたが、それでも私たちに賭けてみる価値があると、他の投資家たちを説得しなければなりませんでした。ファームを立ち上げたばかりの私たちは、本当の意味で「シードステージ」の投資家だったのです。それが達成できたら、次は起業家相手に「マーケティング」を行い、投資を受け入れてもらえるよう説得するという課題が待ち受けていました。そのためには戦略を練ることや、戦略の実行に必要な運営体制を整えることも必要でした。また、優秀な人材を採用し、モチベーションを高め、彼らの成長や成功にとってCoral Capitalが常に最適な場所であるよう取り組むことも、CEOとしての私の重要な仕事でした。

このように、ベンチャーキャピタルのCEOとしての業務のうち、実際の投資活動が占める割合は実は非常に少なく、私にとって意外なことでした。ベンチャーキャピタリストの活動の中で1番目立つのが投資というだけで、自分のファームを立ち上げた場合、それは多々ある業務のごく一部にしかすぎないのです。資金調達やIR活動、マーケティング、ファンド管理、運営業務、戦略、採用、経営、ポートフォリオ管理などなど、独立系VCを作り上げていくには投資以外にも様々な業務が必要です。

起業家気質の私にとって、今の仕事はとても楽しく、やりがいがあります。難しい課題に取り組むことも、興奮や不安(もしくは両方)で眠れない夜も、私にとっては生き甲斐を実感できる充実した日々です。ただし、スタートアップへの投資に集中したい人には、ファームを経営するというこの仕事はあまりお勧めできません。投資以外の業務にあまりにも多くの時間を割かなければならないからです。それよりも、成長中のファームで、運営がほぼ軌道に乗っているようなところを私なら選びます。そこで自身の投資家としての腕を存分に発揮し、上を目指すのがベストではないでしょうか。

P.S. ……、ところで採用中って言いましたっけ?

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Founding Partner & CEO @ Coral Capital

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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