IPOで3兆円超の時価総額、ルーマニア発のUiPathから日本が学べること

先週に続いて、今週もまた数百億ドル規模のIPOが出ました。4月20日にUiPathが新規上場により13億ドル(約1,400億円)調達し、時価総額がおよそ300億ドル(約3兆2,400億円)まで上昇する結果となったのです。UiPathはロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の世界的なリーディングカンパニーで、世界のRPA市場のおよそ3分の1というシェアを獲得しています。SECに提出されたフォームS1によると、同社は全収益のうち14%を日本で上げているそうです。つまり、日本のRPA市場でおそらく約85億円ものARR(年間経常収益)を得ていることになります。日本に進出しはじめたのが2017年頃であったことを考えると、とんでもない業績です。さらに最近では「デジタル・トランスフォーメーション」が日本の経営陣やメディアの間でバズワードになるといった追い風もあり、同社の伸び代には今後も大いに期待できると考えられるでしょう。

今回のIPOはSpotifyをも超える結果となり、欧州のスタートアップ・エコシステムにとってまたもや過去最高を更新するホームラン級IPOとなりました。また、UiPathとSpotifyの上場にはある共通した特徴があります。どちらも米国からの「観光客」的な投資家、つまり従来は欧州をターゲットにしていなかった米国の投資ファームがキャップテーブル(資本政策表)に名を連ねているのです。フォームS1を見てみても、同社の大株主は上からAccelが28.8%、EarlyBird Managementが11.4%、そしてCapitalGが8.3%と、上位3社のうち2社が米国のファームです。ちなみに彼らと比べるとかなり少ない投資比率ですが、SequoiaやKleiner Perkinsも同社に投資しています。

以前は、シリコンバレー以外に投資する米国ファームはほとんどなく、レアな存在でした。そのため、スウェーデン発のスタートアップというだけであまり知られていなかったSpotifyにFounders Fundが投資したときも、同ファームの逆張り投資家としてのブランドに沿うものでした。しかし、近年は欧州に対する逆張り的なイメージもかなり薄まり、米国からの海外投資家が「観光客」どころか、本格的な「移住者」として欧州のスタートアップ市場に参入しはじめています。ここ最近、SequoiaやLightspeed、Bessemer Venture Partnersがそれぞれヨーロッパにオフィスを設立し、現地のパートナーを採用していることからもこのトレンドが伺えます。同様に、TCVやTiger Global、Coatue、ICONIQなどのヘッジファンドも欧州で積極的に投資しているようです。米国投資家にとって、欧州のスタートアップの活躍はもはや無視できず、「投資せずにいるには良すぎる」と認識されるようになったということでしょう。

日本でも同様のトレンドが進んでいますが、本来のポテンシャルと比べるとやや遅いペースです。日本のスタートアップ界でも、特にヘッジファンドなどの海外投資家が、ある程度進んだ資金調達ステージで投資するケースが増えてきています。また、起業家たちの力量や、彼らの抱く野心のスケールも、以前と比べて格段に上がっています。このような状況から、今後は日本でも数千億円規模のIPOを果たすスタートアップがいくつも出てくるだろうと私は確信しています。しかし、「投資せずにいるには良すぎる」と世界から思われるためには、より大きなスケールで考えなければなりません。他の市場で1兆円以上ものIPOを果たす企業が出てきている中、数千億円程度では十分とは言えません。

ここで1つ思い出してほしいのが、世界中に数多くの国がある中で、Spotifyはスウェーデン、UiPathはルーマニアで生まれているという点です。どちらも、そんなホームラン級の上場を果たす企業が生まれるとは誰も想像しなかったような場所です。現地の経済規模が小さかったため、最初からグローバル視点で考えざるを得ず、そういった意識が結果的に彼らの強みになったのでしょう。一方で、日本の経済規模はその2つの国を合わせたよりも数倍大きいので、日本でもデカコーン企業、つまり1兆円以上の時価総額を達成するスタートアップが生まれない理由がありません。個人的な見解としては、日本のスタートアップ・エコシステムにはデカコーンを生み出すために必要なものがすでにほぼ全て揃っています。唯一足りていないのは、積極的にグローバルを追求していく野心かもしれません。しかし、Coral Capitalはそんな野心あふれる数少ない起業家を必ず見つけ出し、彼らが描く世界的なプロダクトの実現をきっかけに、日本も「投資せずにいるには良すぎる」と世界から思われるようになる日を目指して貢献して参ります。

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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