そろそろGAFAと呼ぶのをやめても良いかもしれない

本記事はTemma Abe氏による寄稿です。Abe氏は東京大学経済学部を卒業後に新卒で三菱商事に入社。2016年からのアクセンチュア勤務を経て、2019年からは米国西海岸に在住し、UC BerkeleyのMBAプログラムを経て、シリコンバレーで勤務しています。現地テック業界で流行のニュースレターやポッドキャストを数多く購読しており、そこから得られる情報やインサイトを日本語で発信する活動をされています。


アメリカに来て驚いたことの1つが、日本では当たり前のように使われている「GAFA」という単語が、多くのアメリカ人に通じない、ということでした。もちろん、アメリカ人の中でも、SFベイエリアにあるビジネススクールにいるので、当然ながらテック業界にも詳しい人たちの話です。代わりに良く使われる名称は、私の体感では、「Big Tech」や「Tech Giants」などです。Google検索で比較すると、Big Techが2,700万件、GAFAが800万件、FAANGが300万件のヒット数でした。

GAFAと呼んでいるのが日本特有かもしれないことを示す事例としては、NYUの著名教授・作家・起業家であるScott Galloway氏の代表作のタイトルが、米国版では「the four」であるのに対して、日本語版は「GAFA」に変更したという話もあります。確かに「the four」は個人的にも分かりにくい気はしますが、アメリカではGAFAという言葉はそれほど使われていない、ということがここからも分かると思います。

「GAFA」は、良いグルーピングなのか?

アメリカでは通じないとしても、日本では各種メディアで「GAFA」という文字を見ない日はないくらいに浸透しているので、改めて突っ込むような話ではないかもしれません。ただし、皆が共通認識をもって同じ言葉を使っているのか、「GAFA」とは何を象徴しているのか、実はあまり明確でないのではないか、と思わされることも多いです。ぼんやりとした共通見解として「圧倒的なオンライン上の顧客接点を武器に、特定市場の独占に成功しており、その強大なパワー・資金力を駆使して既存産業をディスラプトしそうな脅威的な存在」というのは言えそうです。それでも、以下のような疑問が出てきます。

  • 時価総額ベースで考えれば、Microsoftが入っていないのはおかしい。
  • 既存産業へのインパクトや世の中を騒がせている度合いで考えれば、Teslaが入るべきではないか。
  • 昨今のテック・スタートアップ業界におけるもっとも重要なテーマの1つと言えるSaaSを本業にしている会社が1つも入っていない。
  • ビジネスモデルの共通点で考えれば、「プラットフォーマー」という名称が適切ではないか。そうすれば、Uber、Spotify、Shopify、Robloxなどの新興プレイヤーが出てきても包含することができる。
  • 中国テック企業の台頭に伴い、GAFA+BATという言い回しも目にするが、今後はインドや東南アジアなどから新たな巨人が現れれば、どんどんリストを追加していくのか。運用が追いつかなさそう。

GAFA同士の比較に意味はあるのか?

GAFA間の比較をしている記事も見かけますが、どんな視点で分析をしているのか、明確ではないと感じることもあります。個人的には、日本の総合商社が、それぞれかなり異なる事業ポートフォリオを持っているのにも関わらず一括りにされて比較されることに違和感があるのと同様に、GAFA間を比較することにそれほど意義はない気がします。昨今はAppleとFacebookのバトルが激しくなってきたり、Google CloudがAWSにチャレンジしたりしていますが、それぞれの本業(検索、Mac/iPhone、SNS、Eコマース)は別々であり、お互いに「持ちつ持たれつ」の関係になっている部分も大きいです。

おそらく、投資家の立場からは、テック企業への投資配分を決める上でGAFA比較を行う意義はあるかもしれません。ただし、GAFAがテック業界のトレンドの全てを反映しているとは限らない、という点には留意すべきかと思います。GAFAのどれに投資をするかという視点から始めると、大きなトレンドや急成長分野を逃してしまうかもしれません。例えば、米大手VCのBessemer Venture Partnersは、GAFAではなく、MT SAAS(Microsoft、Twilio、Salesforce、Amazon、Adobe、Shopify)に注目すべしと提唱したりしています。ここでのポイントは、MT SAASというグルーピングが優れているか否かという話ではなく、テックならGAFAを押さえておけば良いという考え方は危険かもしれない、という点です。

ちなみに、個人的にもっともGAFA比較の意味があると感じるのは、就職活動においてです。MBAの就職先として、コンサルと並んでかなりの人数が「Big Tech」に流れます。学生の間では、「Amazonは最も採用人数が多いが、ハードワークで競争的」「Googleは自由闊達なイメージはあるが、今ではかなり官僚的になっている」「Facebookは企業イメージをカバーするためか、給料がかなり高い」「Appleはクローズドな文化で、転職せずに長く働く人が多い」といったような噂話が飛び交います(なお、実際に筆者が聞いたことのあるものですが、内容の真偽は知りません)。卒業直後に「Big Tech」の名前が履歴書に載ることは、その後のキャリア形成に有利に働きやすいという定説や、留学生にとってはビザをスポンサーしてくれる最大の雇用主である、ということで人気が集中します。

「GAFA」の称号は喜ぶべきものなのか?

おそらく「GAFA」という言葉が使われ始めたときと比べて、世の中全体でテック業界への風当たりは強くなっており、特に「GAFA」はその中でも独占的なパワーを行使して各種ステークホルダーを搾取している、という批判の声が大きくなっているのは間違いないと思います。

もしかするとMicrosoftは「GAFAM」と一括りにされることを望んでいない可能性もある気がします。GAFAが米国議会への公聴会に招致され、テック企業が世の中に悪影響を与えているという批判の矢面に立たされる中で、自らはひっそりと影を潜めたいと思っているかもしれません。

また、GAFAの中でもFacebookは世間から特に厳しい目で見られており、時価総額でも他3社から水をあけられている中で、引き続き同グループに入れるべきなのか、という意見もありそうです。

まとめ:

  • 「GAFA」は、すでに日本では広く浸透しているが、アメリカ人には通じない場合もある。
  • 「GAFA」はシンプルで使いやすいが、その単語だけでは捉えられないテックトレンドがある (より解像度高く、業界や事業を捉える必要があるのではないか)
  • 「GAFA」の持つネガティブなイメージが今後、さらに強くなっていく可能性もある。

Coral Capital

Editorial Team / 編集部

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