本ブログはBenchmarkでジェネラル・パートナーを務めるサラ・タベル(Sarah Tavel)氏のブログ記事「“White Space” For Building A Marketplace: How To Find Your Competition’s Vulnerabilities — And Capitalize」をご本人の許可を得て翻訳したものです。Benchmarkはかつてアーリーステージ期のeBayに出資していたほか、タベル氏はBtoC、BtoBのマーケットプレイスに多く投資しています。
私がよく受ける質問の1つに、「消費者向けマーケットプレイスを構築できる空き領域(ホワイトスペース)は残っていますか」というものがあります。
そう尋ねたくなる気持ちは、わかります。どんなカテゴリーや業種を考えてみても、すでに他の会社がいて(1)地盤を固めている、または(2)あなたよりも有利な立場にいるように思えるでしょう。だからこそ、「ホワイトスペース」を大きくて広い、手つかずのチャンスのあるエリアと定義すると、すべての「スペース」がすでに取られているように見えるのです。
しかし、多くの人が忘れているのは、実は現在の既存企業の多くが、それ以前の既存ビジネスを破壊してきたということです。Airbnbは、HomeAway(2005年)やVRBO(1995年!)の数年後にサービスを開始しました。GOATが創業したのは、eBayより10年以上も後です。また、以前書いたように、DoorDash、Uber Eats、Postmatesは、GrubHubの10年後に設立されています。
教訓:既存の企業がいても、その企業に脆さがないとは限らない。
例えば、eBay*を例に挙げてみましょう。
一見すると、eBayの取り扱い範囲は圧倒的です。このプラットフォームは、非常に多くの異なる分野に広がっており、他のタイプの消費者向けマーケットプレイスは、eBayの後塵を拝することになると思われがちです。「ホワイトスペースはない」と、消費者向けマーケットプレイスを作ろうとする起業家は考えるかもしれません。
しかし、eBay、Craigslist、LinkedIn、YouTubeなどの水平型マーケットプレイスは、実は非常に脆弱です(もしあなたがこれらのマーケットプレイスに破壊的イノベーションを起こしたいと考えているのであれば、ぜひご連絡ください!)。
2009年、GOATというスニーカーのマーケットプレイスは、eBayで十分なサービスを享受していないユースケース、つまり限定品や希少価値の高いスニーカーを探している顧客に着目しました。GOATの創業者たちは、共同創業者のDaishin SuganoがコレクターズアイテムのスニーカーをeBayで注文したところ、偽造品が送られてきたことをきっかけに、このアイデアにたどり着きました。GOATの創業者たちが気づいたのは、eBayが靴の分野でスケールしていたとしても、実は満たされていないニーズがあるということでした。つまり、スニーカーの購入者は、eBayの商品が本物であると信頼できないのです。信頼の欠如は、大きな供給基盤が生み出す潜在的な流動性を損ねてしまいます。
意味:「ホワイトスペース」は見えにくいところに隠れている
ホワイトスペースを見つけて起業するまでの道のりが、分析的なプロセスであることは稀で、多くの場合は隠された真実(GOATの場合は、残念な顧客体験でした!)を見つけるところから始まります。とはいえ、「トップダウン」で機会を見つけるアプローチや、見つけた機会を検証する方法を提案するとしたら、下記3つのアプローチで既存企業の脆弱性やそれを活用する方法を考え抜くべきだとお答えするでしょう。
1. 水平展開する大きなマーケットプレイスを見て、NPSの低い垂直市場を特定し、自社プロダクトで既存の供給基盤の流動性を飛躍的に向上させる。確かに、既存企業はより大きな供給基盤を持っています。しかし、そのことはあなたの会社がプロダクトを活用することで、既存企業を飛躍的に超える流動性を実現できないことを意味しているわけではありません。こんな風に考えてみてください。あなたが狙っている Yeezy(訳注:アディダスとカニエ・ウェストが共同開発する高級ブランド)のスニーカーを買うのに、GOAT か eBay のどちらを信頼しますか?秘境にあるビッグサーの温泉近くで宿泊施設を Hipcamp と Airbnb で探したり、公式規定に則った高級野球バットを SidelineSwap と eBay で探したりしてみてください。流動性は、マーケットプレイスが集約する供給基盤の総量よりもはるかに重要です。だからこそ、もっと広い視野で、プロダクト、プロダクト、プロダクトと考えてみましょう。
2. 小さくて、見落とされていて、あまり評価されていないニッチを見つけ出し、そこから参入して拡大する。再びスニーカーの例で言えば、eBay でコレクターズスニーカーを買わない人が多かったのは、獲得可能な市場の規模を示す兆候ではありませんでした。機会は、信頼性の欠如によって制限されていたのです。この核となる脆弱性を修正することで、GOAT は eBay からシェアを奪っただけでなく、実は市場機会の規模を拡大したのです。Etsy は、ハンドメイド商品の分野で、早くからこの機会を見出していました。Pinduoduo は、アリババやタオバオの料金体系では手の届かない、低所得者層の超少額購入に焦点を当てました。
3. 供給の最小単位を再定義することで、獲得可能な供給量を劇的に増やす方法を見つける。以前にも書いたように、HomeAway はバケーションハウスのレンタルに限っていましたが、Airbnb が供給の最小単位を定義しなおし、範囲を広げたことで、獲得可能な供給基盤を拡大してHomeAway を追い抜き、市場を席巻しました。Postmates 、DoorDash 、Uber Eats がGrubHub の流動性を飛躍的に上回ったのは、自分たちでは配達できなかったレストランが配達できるようにして、レストランの選択肢を劇的に広げたことによるものです。
周りを見渡せば、ホワイトスペースはまだ至るところに存在しています。理解すべきなのは、「すでに開拓済み 」と思われるマーケットプレイスこそ、その内側を探しに行くべきだということです。
*ベンチマーク社の投資先企業を示しています。
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Editorial Team / 編集部