昨年の記事で、スタートアップ機会を検討する際に「Why Japan?」という質問について考えることの重要性を説明しました。海外からのスタートアップではなく、日本生まれのスタートアップだからこそ国内のカテゴリーリーダーになれる明確な根拠が存在するか、という点について同記事では主に考察しました。日本のスタートアップに優位性をもたらすファクターについて、「国内市場」に絞って紹介したわけです。
しかし、同記事では触れませんでしたが、「Why Japan?」の質問にはもう1つの側面があります。日本のスタートアップだからこそ、カテゴリーの「グローバル市場」を勝ち抜ける独自の優位性があるか、という意味での「Why Japan?」です。Coral Capitalでは、スタートアップへの投資を検討する際にこの点についても考慮することが多いです。実際、私たちの投資先企業のうち何社かは、このもう1つの「Why Japan?」に対する答えを持っています。
たとえば、投資先の宇宙ロボット企業であるGITAIは、日本のロボット研究の歴史が長く、世界有数のロボット技術者を国内に有しているという点から恩恵を受けています。また、宇宙開発への取り組みに関しても日本は世界トップレベルですので、その点でも有利です。
同じく投資先の核融合スタートアップである京都フュージョニアリングも良い例です。日本は核融合技術で世界をリードする国になれる可能性が高いと考える理由はいくつもあります。まずは、単純に必要性の高さが挙げられます。日本のエネルギー自給率はOECD加盟国の中でも非常に低く、安全かつ無制限に得られる自給自足的なエネルギー源の確保は国としての最優先課題の1つです。また、関連分野における技術力の高さにおいても日本は有利です。例えば、超伝導コイルは核融合炉を構成する重要なパーツですが、その製作には数ミリメートルレベルでの精密な技術力が必要です。この超伝導コイルなどは、まさに日本の職人技や製造技術が発揮される分野の1つです。また、国際的な核融合炉開発プロジェクトであるITERにおいて、日鉄エンジニアリングや三菱重工、三菱電機が以前から大きく貢献している点からも日本の優位性がうかがえます。業界トップクラスの人材が国内に多くそろっていることを意味しているのです。
これら以外でも、グローバル市場での「Why Japan?」への答えとして、ゲームやエンタメ、ヘルスケアなどの分野も有望です。実際、日本には任天堂やソニーなど、世界をリードするゲーム会社がいくつもあります。アニメや漫画も世界中で人気です。製薬や医療機器などでも、複数の日本企業が世界大手のキープレイヤーとして活躍しています。
とは言うものの、実際に「Why Japan?」のグローバル面での答えを明確に示せるスタートアップを見つけるとなると、国内市場のみと比べて明らかに難しいのが現状です。言葉や文化の壁、そもそもグローバルで戦おうと思っている人があまりいないといった現実があります。資金供給不足も野心的なグローバル展開を困難にさせていた原因の1つでしたが、これに関しては最近では風向きが変わってきているようです。
個人的には、日本のスタートアップがグローバル企業へと成長することに是非とも貢献させていただきたいと思っています。以前にもツイートで言いましたが、これからは日本にもユニコーンがどんどん増えていくと考えられる一方で、デカコーン(1兆円企業)を目指すとなると、やはりグローバル展開が必要になってくるでしょう。今後、日本のみならず、世界全体を大きく変えるようなデカコーンが日本からいくつも生まれてくる日を心待ちにしています。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital