私たちの投資先企業である「SmartHR」が、15億円のシリーズB資金調達ラウンドをクローズしたことをご報告いたします。500 Startups Japanは、このラウンドをリードし、全額を独占的に投資しました。
日本のIT業界に従事している方であれば、きっとSmartHRのことはご存知でしょう。彼らは、面倒な社会保険・労働保険手続きにおける書類の作成や役所への申請、人事マスター管理や従業員とのデータ共有をサポートする、クラウドベースの労務管理ソフトウェアを提供しています。アメリカであれば、Gusto、NamelyやZenefitsなどが類似サービスとして挙げられるでしょう。驚くことに、日本のほとんどの会社は2018年になっても、未だにこうした作業を紙で行い、従業員データをエクセルで管理しています(もし、あなたの会社がそうであれば、人事部にぜひSmartHRのことを教えてあげてください!)
宮田さんと内藤さん、そして彼らのチームは、全ての企業が抱える悩みをピンポイントに解決し、利用しやすく、あらゆる中小企業が欲しがるようなソリューションを構築しました。SmartHRは毎月16%近い成長を遂げており、メルカリ、ベアーズ、ユナイテッド&コレクティブの他多数の企業に高く評価されています。
私たち500 Japanは主に、シードステージのスタートアップに投資していますが、SmartHRのような会社に巡り会えることは中々ありません。そのため、例外的に、このSmartHRのシリーズBにのみ投資をするターゲットファンドを組成しました。アメリカでは、これを「Special Purpose Vehicle」(特別目的事業体)またはSPVと呼んでいます。
このような仕組みがファウンダーにとって理想的なのには、幾つかの理由があります。まず、ラウンドがこれほどの規模になると、日本では投資家の選択肢が限られてしまう点です。さらに、時おり、1〜2億円以下を投資する5〜10社の投資家が集まった大きな「パーティーラウンド」が結成され、結果的に調達の際の交渉が複雑化することがあります。また、このステージで参加する投資家たちは、比較的厳しい報告義務を課すことが多く、その後の投資家対応コストが大きくなりがちです。
この2つの要素が組み合わさると、自らのビジネスに集中する時間よりも、投資家とのコミュニケーションに多くの時間を費やさなくてはならなくなります。一方、SPVであれば、株主名簿上は1人の投資家(SPV)が増えたにすぎず、本当は投資家が複数いるのにも関わらず、直接対応を要するのは信頼できる投資家1人(SPVのGP)だけで済むのです。もちろんSPVのGPは、SPVの投資家(LP)たちとファウンダーの間のコミュニケーションの交通整理を行い、両サイドの利害を調整するために努力を尽くします。
もう1つの本質的なメリットは、宮田さんが資金調達プロセスを実質的にほぼアウトソースできた点です。私たち500 Japanは、SmartHRの資金を約2ヶ月以内に調達しましたが、SmartHRのCEOである宮田さんのミーティング対応などの時間は、累計でも10時間程度に抑えることができました。日本のファウンダーにとって前代未聞のことではないでしょうか。
私たちがここまでするのは、SmartHRに絶対的な確信を持っているからです。今後、似たようなサービスを提供する会社が現れるかもしれませんが、宮田さんと内藤さんの築いた素晴らしい企業文化を再現できる人はいないでしょう。彼らはこれからも、どの競合他社よりも優秀な人材を引き付け、遥かに早いスピードでイノベーションを進めるものと信じています。と言いつつも、宮田さんが、SmartHRのシリーズBをリードする者として500 Japanを選んでくださったことを光栄に思っています。この素晴らしいチャンスを頂けたことに感謝を言い尽くせませんし、これからも全力でサポートしていく所存です!
追伸:私たち500 Japanは、日本のファウンダーをサポートすべく、これまでも、そしてこれからも様々な新しい取り組みの導入を続けていきます。J-KISSや今回のSPVのように、シリコンバレーのコンセプトを日本の仕組みにローカライズして導入する場合も、ブログやイベントを通じて知見や透明性を広める場合も、私たちの願いはエコシステム全体を成長させることです。自分たちのパイの取り分を大きくしたいのではありません。私たちは、パイ全体を大きくすることで、日本のスタートアップをグローバルなレベルで認められるようにしたいのです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital