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誰もが自由に使えるシード投資のための投資契約書

J-KISSとはCoral Capitalがメンテナンスを行いオープンソースとして無償公開しているコンバーティブル・エクイティを使ったシード投資のための投資契約書です。契約書のひな形は、こちらのページからダウンロードしていただけます。

J-KISS利用のメリット

投資実行が速い

スタートアップにおける資金調達では、J-KISSのようなコンバーティブル投資手段は、株式による資金調達に比べて交渉から着金までの全てが圧倒的に速く完了します。これは投資家にとっても魅力的ですが、事業づくりに専念したいスタートアップにとっても重要なことです。

投資の詳細条件を繰り延べできる

J-KISSによる資金調達では細かな条件の決定を、次の大きな資金調達まで繰り延べます。一旦、「仮」の投資契約で最低限の条件だけ定めて資金調達しておき、事業がもっと進捗してから行う、より大きな資金調達の際に締結する投資契約に後で置き換える=転換することができます。

透明性が高い

シード期の多くの場合、ひな形の条項について修正を加えることなく利用ができます。修正が加えられていないことは契約書冒頭に明記されます。逆に言えば、修正されている場合には容易にそれがわかります。このことから業界標準の契約書という透明性の高さが担保されます。

安い

J-KISSはシリコンバレーで培われたノウハウの詰まった投資契約書のひな形です。弁護士や税理士といった専門家のレビュー済みで、国内の規制や法律に適合しています。このため投資契約の修正や交渉を省くことができ、結果として起業家と投資家双方の取引コストを最小限にできます。

J-KISS 解説動画

最新版J-KISS2.0パッケージのダウンロード

J-KISSは正式には「J-KISS型新株予約権」であり、J-KISSによる資金調達であっても、株主総会決議や登記など様々な手続きは必要となります。そこで、スタートアップのエクイティファイナンスに強いaviators司法書士事務所の司法書士 真下幸宏さんのご協力を受け、J-KISSによる資金調達において必要となる全ての手続き書類をパッケージ化した「J-KISSパッケージ」を公開しています。以下よりダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。

パッケージに含まれる「0_J-KISS型新株予約権発行のフロー.docx」に、J-KISS型新株予約権による資金調達の手続きの流れについて詳細に書かれているので、よく読んでからご利用ください。また、以下の場合においては、必ず専門家に相談をしてください。

  • 各テンプレートの●以外の箇所を修正するとき。
  • 法務局の要請により登記内容を変更するとき。
  • 発行会社が、取締役会設置会社であるとき。(発行手順が異なります)

注:本パッケージは取締役会非設置会社についてのものになります。発行会社が取締役会設置会社である場合は発行手順が異なるため、司法書士などの専門家に必ず相談してください。

免責

  • J-KISSは、日米のベンチャーファイナンスに詳しい森・濱田松本法律事務所の増島雅和先生によって設計され、その後のメンテナンスおよびバージョン2.0の設計については木村・多久島・山口法律事務所の山口孝太弁護士およびそのチームにおいて担当されているため、法的な課題はクリアされていますが、ご利用の際には事前に諸条件をご自身の弁護士と確認することをお勧めします。Coral Capitalは、J-KISS利用によるいかなる結果について一切の責任を負いかねます。
  • Coral Capitalは、本契約に係る新株予約権の本邦税務上の取り扱いについて、KPMG税理士法人への確認を行い、基本的には、有償時価発行新株予約権として取り扱われうるものと考えております。ただし、実際の本契約の利用に際しては、その具体的な契約内容に基づき、新株予約権の課税上の取扱いを顧問税理士等にご確認ください。

よくあるご質問

Q. J-KISSとは?

J-KISSとは、Coral Capitalがメンテナンスを行いオープンソースとして無償公開しているコンバーティブル・エクイティを使ったシード投資のための投資契約書です。Coral Capitalの前身である500 Startups Japanが2016年4月にバージョン1.0を公開しました。最新版は2022年4月に公開されたバージョン2.0です。

J-KISSの元となった契約書は、シリコンバレーの500 Startupsが2014年7月に公開したKISS(Keep It Simple Security)という名称のシード投資のための標準ドキュメントです。また、2022年4月のアップデートで、Y CombinatorのSAFEの内容も取り入れました。

Q. シリーズA以降はJ-KISSはどうなりますか?

消滅します。正確には、適格資金調達(ひな形では1億円以上の株式での資金調達)が行われることが決定した場合、J-KISSは転換されてシリーズA優先株に変わります。J-KISSの投資契約書に含まれる様々な条項は、シリーズA優先株とは完全に独立したものであり、シリーズA転換後はそれらは消滅します。

Q. J-KISS 2.0で旧バージョンの1.x系と比べて新しくなった点は何ですか?
  1. バリュエーションキャップをプレマネーからポストマネーに変更し、資金調達ラウンドごとの希薄化率が分かりやすくなったこと
  2. ひな形として公開されている契約書の条項について、その内容に変更が加えられていないことがひと目で分かるよう表明する文を加えたこと

の2点です。詳しくは、J-KISS2.0で変更された点を解説するブログ記事をご覧ください。

Q. 古いバージョンのJ-KISS 1.x系はどうなりますか?

こちらのページで継続して公開していますが、新規の利用は推奨しません。ただし、すでにJ-KISS 1.x系で調達済みのスタートアップであれば、転換の計算が複雑になってしまうため、引き続き1.x系を使うのが良いでしょう。

Q. J-KISSは、どのくらい利用されていますか?

正確な統計は分かりませんが、エンジェル投資や事業会社によるシード投資では2割程度利用されているのではないかと見ています。Coral Capitalがリードするシード、もしくはプレシリーズAの資金調達ラウンドでは、特別な理由がない限り、基本的にJ-KISSを使っています。なお、J-KISS Packageは年間約1,000件ほどダウンロードされています。

コンバーティブル・エクイティは、シリコンバレーで培われたノウハウの詰まった、速い・安い・透明性の高い資金調達を実現する手段で、近年、日本でも経済産業省や経団連の後押しもあり、活用が進みつつあります。シード期の資金調達に、ぜひご活用ください。

Q. 事業会社やエンジェルによる投資でも利用できますか?

もちろんです。事業会社、エンジェルの方々にとって、以下のようなメリットがあるようです。

事業会社がシード投資でJ-KISSを利用するメリット

シードステージにおけるバリュエーションの根拠を、スタートアップ投資に馴染みのない経営陣にロジカルに説明するのは難しいことがあります。正確なバリュエーションは次回の(おそらく)VCがリードするシリーズAラウンドで確定する、というのは事業会社にとって使いやすいポイントのようです。

エンジェル投資でJ-KISSを利用するメリット

エンジェル投資家は増えつつあり、中には投資経験の浅い人も含まれています。また、そもそもエンジェル投資家にとって投資は本業ではありません。調達経験の浅いスタートアップと、投資経験の浅いエンジェル投資家で、一から契約書を作成し交渉するよりは、ある程度標準化された契約書テンプレートとして無償公開されているJ-KISSを使うというのは選択肢として現実的ではないでしょうか。

Q. J-KISSはエンジェル税制の対象になりますか?

令和6年度の税制改正により、2024年4月1日以降に取得したJ-KISSについてはエンジェル税制の対象になるようになりました。

一方で、投資時ではなく、行使時がエンジェル税制における控除の基準日となることには注意が必要です。

詳細はエンジェル税制の対象に加わった際の、こちらのブログ記事をご参照ください。

Q. J-KISSが転換される前に買収された場合、どうなりますか?

投資額の2倍で金銭償還するか、バリュエーションキャップで普通株に転換した後で買収されることになります。J-KISSが転換される前に買収されるということはつまり、シリーズAに達する前、つまりプロダクトマーケットフィットする前に、acq-hireされるケースを想定しています。この場合、普通株による投資だと、起業家には数億円といったまとまった額のキャッシュが入る一方で、投資家には投資元本程度しか戻らないことになり、これが一般的になると深刻なモラルハザードのリスクがあります。そこで、転換前に買収される場合は投資額の2倍で金銭償還することを基本としています。

なお、このような2倍程度のリターンは、数十倍から数百倍のリターンを期待するシードVCのパフォーマンスにとってはほぼ意味をなしません。この取り決めはVC向けというよりはエンジェル投資家向けだったり、起業家のモラルハザードを防ぐという意味合いがほとんどです。