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500の追加投資の決定は他者に左右されません

前ラウンドのリードインベスターが、次ラウンドのリードインベスターが誰であるかによって追加投資を決める、という話を起業家の方々から時々聞きます。おそらく、追加投資をコミットする前に「スマートマネー」の存在を確認したいのでしょう。投資家が様子見をしたくなる気持ちは分からなくもありません。 なぜなら、(信頼できる)別の方に企業を精査してもらい、その上で投資に値すると判断してもらえると、自分の中で確信を深めることができるからです。実は、追加投資をコミットする前にリードインベスターが誰になるのかを見届けたい、と私たちも言ったことがたしか1回はありました。しかし、いくつかの理由から、今はもう「様子見」の姿勢をとらないことにしています。

第一の理由としては、既存の投資家は、その企業について最も情報を持っているはずだと思うからです。既存の投資家は、すでにインサイダーで情報の非対称性があるので、新規の投資家よりも有利なはずです。彼らは、チーム内のダイナミクスやチームのスピード感も知っているはずです。チーム内のコミュニケーションの良し悪しや、気持ちを一つに頑張れているか否かを把握しているはずです。さらに、今までのところ、何がうまくいっていて何がうまくいっていないのかも、より深く理解しているはずです。そして、ほとんどの場合、市場をよく理解し、そのスタートアップにとって勝算のある領域を理解しているはずです。つまり、インサイダーである以上、既存投資家は投資決定を行う際に有利なので、完全に独立して検討を行うべきなのです。様子見をしていると、少ない情報量に基づいた意見に影響を受けて、バイアスがかかってしまうかもしれません。また、その会社が注目される投資先になったときに、自分たちの出資枠が減少してしまう可能性があります。他の誰かが良いと言ったから自分も追随しようと思うような人に、出資枠を多く与えようと思う起業家なんていないでしょう。

2つ目の理由は、追加投資を行うか否かの意思決定が、その後の資金調達プロセスに大きな影響を与えることになるためです。例えば、資金調達を始めるときに前回のリードインベスターが既に追加投資を表明していることで、そのスタートアップは他の投資家に強いシグナルを送れることになります。そして、集団心理はどちらにも流されやすいです。この例の場合は、他者は「インサイダーが追加投資をするのだから、きっと良いはずだ」と考えるのです。とはいえ補足すると、私たちは、集団心理を動かすために追加投資を決めているわけではありません。他の投資家がそのときにどう考えるかに関わらず、私たち500 Japanが支援する企業への確信度合いに基づいて、追加投資の意思決定をしています。ただ、その判断を早く行った方が、いずれにせよ企業のためになると考えているということです。

投資判断をするときに、外部によるバリデーション(妥当性の確認)に頼りたくなる気持ちは分かりますが、私たち500 Japanはそうしないことを学びました。もちろん、「スマート・インベスター」が次ラウンドをリードすることになれば、私たちもワクワクはしますが、それは私たちが追加投資を行なうか否かの意思決定に影響を及ぼしません。追加投資をいったん決定すれば、私たちの実際の追加投資に影響するのは、そもそもリードインベスターが存在するか否か(そして極端な事例では、その金額と条件が私たち500 Japanの想定範囲内であるか否か)だけです。VCの世界において、周囲の意見を全てシャットアウトして独立して検討することはあまり多くはないでしょう。多くのVCは(ときには私たち500 Japanも)、周りの意見にも影響されがちです。ですが、企業にすでに投資しているのであれば、自分たち自身で追加投資するかしないか意思決定するべきだと私たちは考えています。

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Founding Partner & CEO @ Coral Capital

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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