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ユニコーン企業から学ぶ、創業初期のスタートアップのためのPR

会社の価値を顧客に伝える方法は様々です。自分たちで直接発信するマーケティングの他に、既存ユーザーや外部のメディアといったより信用力のある第三者を介して世の中に伝える方法があります。

自分たちが伝えたい内容を伝えられるマーケティングと比べて、広報活動や口コミは第三者を介するわけですから必ずしも伝えたいメッセージで発信できる訳ではありません。しかし、だからこそ第三者を介することで伝えられるメッセージはより信頼され、影響力を持つものになります。

広報は創業間もないスタートアップにとっては優先度が低くなりがちです。しかし、今ではユニコーン企業として有名な複数のスタートアップも、まだ創業間もない頃にはPRの一つのプロジェクトがユーザー獲得に大きく寄与した事例もあります。今回はC向けビジネスを展開するユニコーン企業が、実際に過去に行ったPRの活用事例についてご紹介したいと思います。

ブロガーを巻き込んだプロジェクトで成長したPinterest

Pinterestがローンチしたばかりの頃、共同創業者たちはそれぞれの知人に連絡をしましたが、なかなか興味を持ってもらえなかったと言います。また、その頃すでに少数のユーザーグループはPinterestを使っていましたが、想定していたユーザー・ユースケースではなく、本当のターゲットユーザーはどのコミュニティにいるのか模索していました

まず同社はオフラインのミートアップを介した、ユーザー獲得に取り組みました。同社は地元のブティックでミートアップを主催し、当時招待制だったPinterestの招待を直接配布することで、ミートアップの参加者を初期ユーザーとして獲得しました。獲得した初期ユーザーは、クラフトを趣味とする人々で、非常に活発なコミュニティで活動する社交的な趣味ということもあり、口コミで広まりました。

その後より質の高いユーザー数を爆発的に増やしていくきっかけとなったのはオンラインを活用したプロジェクトです。2010年5月、同社はSF GIRL BY BAYというブログを運営するVictoria Smith(ヴィクトリア・スミス)氏とコラボし、「Pin It Forward」というキャンペーンを行いました。彼女のブログ上での告知を発端に、チェーンレーターのように次々にユーザー招待していくことができるプロジェクトでした(だれでも「Pin Board」というホーム画面のようなものを作ることができ、チェーンレターのようにある人から次の人へと招待状を送って行く仕組み。全員が招待者として招待状に名前が掲載された)。これにより、Pinterestのコアバリューである「自分が好きなものを介して人と繋がる」という体験をより多くの人に体感してもらうことができたのです。

さらに、2013年5月、同社はイギリスでも同様のキャンペーン「#PinitforwardUK」を実施することで、米国外の地域におけるローカリゼーションを開始しました。このキャンペーンは300人のイギリスのブロガーを募集し、毎日10名ずつが1ヶ月に渡り自分のパッションとそれをどうPinterest上で表現しているかを紹介していくというキャンペーンでした。一番最初のブロガーであるWill Taylor(ウィル・テイラー)氏はPinterestの熱心なユーザーでもありました。

自社サービスの需要が高まる、外部イベントを活用したAirbnb

2008年、デンバーでのDemocratic National Convention(民主党全国大会)の開催に向けて、Airbnb共同創業者のBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏とJoe Gebbia(ジョー・ゲビア)氏は自らのクレジットカードで借金をし、キャンペーンの準備を開始しました。当時の大統領候補Barack Obama(バラク・オバマ)氏とJohn McCain(ジョン・マケイン)氏の名前にちなんだ「Obama O’s」と「Cap’n McCains」の2種類のシリアルを、大学の学生の協力を得て手作りで作成。テックブロガーに送付した後、一箱40ドルで限定販売を開始しました。

Airbnbの当時のサイトURL(airbedandbreakfast.com)とその民泊物件の情報を記載しているシリアルは、限定生産分を全て完売し、3万ドルの売上を獲得。そしてDNC開催の際に予想されていた、周辺の宿泊施設の供給不足に対する新たなソリューションとして、Airbnbはブロガーやメディアに大きく取り上げられました。この際に歌手のKaty Perry(ケーティ・ペリー)氏やセレブのPerez Hilton(パリス・ヒルトン)氏らも、自らの支持を示すためにこのシリアルを食している動画を投稿しています。

このような政治的イベントの他にも、2016年のリオオリンピックにおける #StayWithMe キャンペーン(公式スポンサーとして代替宿泊施設提供者であることをアピールする)など、イベントに合わせた大掛かりなキャンペーンを開催しています。

また、同社はあらかじめ予定されているイベントの他に、突発的な出来事にも瞬時に対応し、キャンペーンを打っています。2014年にTwitter上で、何故かWaterstones(イギリスの本屋)の店舗に閉じ込められたという男性のツイートがバズった際、Airbnb(イギリス)はWaterstonesの公式アカウントよりも素早く反応し、この男性をきっかけとした「Waterstonesの店舗に宿泊できるキャンペーン」を共同で立ち上げています。また2012年のニューヨークのハリケーン「サンディ」の被災者に対する支援として無料の住居提供プログラムを、ニューヨーク市と共同で行いました。

初期のターゲットユーザーを明確にし、アプローチを行ったUber

2009年にUberCab(2010年にUberに改名)として立ち上がったUberは、2010年にブラックカーのオンデマンド配車サービスをサンフランシスコでローンチしました。当初アーリーアダプターになり得るテックコミュニティの人々にリーチするため、様々なイベントを後援しました。テックイベント参加者に対し、無料ライドを提供することで、実際にサービスの価値を感じてもらい口コミで広がるのを狙ったのです。2011年5月にニューヨーク市でのサービスを開始した際も、まずはテックコミュニティへアプローチしました。リリースの夜、Uberが開催したクローズドのディナーイベントには、業界のインサイダーがUberで来場しました。

少し話は逸れますが、同社はイベント時の無料ライドの提供を、ユーザー獲得のためのキャンペーンだけでなく、ロビーイングツールとしても活用しています。同社は2015年に車の渋滞を防ぐために、カーサービスの成長を抑制するというニューヨーク市の法案に抗議するデモを行った際、デモに参加しようとしているユーザーに対しに無料ライドを提供することで参加者を増やしました。

無料ライドの他に、同社はキャッチーなキャンペーンも数多く手がけており、バレンタインにバラを届けるUber Rose、猫の日に可愛い子猫を届けるUberKITTENSなどを行っています。もちろんこういったキャッチーなキャンペーンを行うのも効果はあると思いますが、個人的には実際のサービスのコアバリューを伝えられる無料ライド等と比べると直接的な効果は見込みづらいとは考えています。

カルチャーとブランドを大事にし続けるLyft

2012年の夏、Zimride(大学向けのライドシェアサービスや長距離移動のシェアリングサービスを展開する2007年創業の会社)の新規事業としてLyftは立ち上がり、サンフランシスコでサービスを開始しました。翌年5月にAndreessen HorowitzがリードするシリーズCラウンドで6000万ドル調達した際、同社は1週間の乗車数は3万回を超えていることを明らかにしました。

同社は初期から、強いコミュニティとブランド構築に取り組んでおり、競合であるUberと戦う上でも長期的な強みになっています。実際に皆さんもLyftと聞くと真っ先にピンクのヒゲを想像するのではないでしょうか。当初ブラックカーサービスを提供し、黒字に白文字のロゴで高級感を感じさせるUberのブランドに対し、Lyftはショッキングピンクのロゴやヒゲをつけた車など親しみやすいブランドを徹底しています。同社はこのヒゲを笑顔の象徴として掲げており、Lyftの自動車は車の前面に大きなピンクのヒゲをつけてユーザーや街中の人々にアピールをしていました(現在ではフロントに設置されたアンプ)。

リリースから数年以上経っても、同社のカルチャーやブランドイメージは強く、Uberが世間から非難を浴びているタイミングで大きく差をつけました。2017年1月27日、トランプ大統領がイスラム教7カ国からの入国停止措置の大統領令に署名し、JFK空港でタクシー運転手の労働団体を含む大規模な反対運動が生じた際、Uberは通常通りサービスを提供したことで非難を浴びました。その一方でLyftは1月29日、この大統領令に反対する姿勢を示し、ACLU(American Civil Liberties Union)に100万ドルの寄付を約束し、多くの人々から支持を得ました。1月30日には、Uberのアプリをアンインストールする活動 #deleteUber キャンペーンが開催され、Second Measureによると、その週でUberのマーケットシェアが前週の81%から76%に低下し、一方でLyftはそのほぼ同数のシェアを獲得したとのことです。

画像出典:Re/Code

同社マーケティングVPであるMelissa Waters氏は、「消費者がLyftを選択することについて『気分が良くなる』ようにすることを重視している」と語っており、ユーザー体験の中で会社のブランドやカルチャーが大きく関わっていることが同社の事例からもよくわかりました。

自社が提供する価値を、適切な相手に伝える

これまでPinterest, Airbnb, Uber, Lyftの偉大な4社の事例をご紹介しました。これらに共通していることは、いずれも自社が提供する「価値」とその「対象」を明確にし、適切な対象に自社の価値を届けるための手法としてマーケティングや広報を活用していることです。

実際に、初期のスタートアップ(プロダクトはあるフェーズ)が認知を拡大する際に改めて考えるべきは、⑴自分たちのサービスを最も求めているコアユーザーは誰なのか。⑵彼・彼女らが自分たちのサービスを最も必要とするシーンはどういった場面なのか。この2点をおさえることは非常に重要です。

また、LyftとUberの事例からもわかるように、対象に届けるメッセージにはサービスのコアバリュー(ユーザーに提供できる圧倒的な価値)だけでなく、会社のカルチャーやブランドイメージも含まれます。スタートアップが早期に自社のカルチャーやミッションを定義することは、強いチームを作るだけでなく盤石なユーザー基盤を作る上でも非常に重要だと私たちは考えています。

広報

吉澤 美弥子

Senior Associate @ Coral Capital

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