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投資しなかったけれど、投資すべきだったスタートアップ

ベンチャーキャピタリストが誰に投資したかはよく聞きますが、投資しなかった会社や投資しなくて後悔した会社についてはあまり聞かない気がします。Bessemer Venture Partnersはこれを「anti-portfolio」と呼び、おめでとうという意味合いでウェブサイトに「投資しなかった、後悔している」リストを公開しています。このリストにはAirbnb, Apple, Facebook, Google, 等メガホームラン案件が載っています。

日本でこの情報をあまり目にした事がないので、日本のVCそれぞれの一番の「anti-portfolio」をまとめてみたら面白いのではないかと思っています。いくつかのVCに声をかけてみたところ下記の回答がきています。

まず最初に私たちから。

James Riney+澤山陽平, Coral Capital

一番のAnti-Portfolio: KonMari

3年前、500 Startups Japan 1号ファンドが立ち上がってすぐのころ、澤山が外資系金融時代の友人と久々にキャッチアップをしていたら、実はちょっと変わった事業の立ち上げにファウンダーの1人として関わっていると相談されたのがKonMariでした。すでに書籍はグローバルで600万部を超えるヒットになっていたり、Amazon USのレビューがすごいことになっていること、そしてそれを成し遂げたのが日本人であることに驚き、投資検討したものの、その時点ではビジネスとして何をやるかがほとんど決まっていなかったことや、一時的なブームなのかも判断がつかず、KonMariがVCモデルに合致するようなハイパーグロース会社になると確信が持てないということで見送ってしまいました。その後も時たま会ってビジネスモデルを一緒に考えたり、壁打ちに付き合ったりしていたのですが、次に連絡をもらったのはSequoiaからの調達をクロージングしているタイミングで、時すでに遅しでした。さらにその後はみなさんもご存知の通りNetflixオリジナル番組が制作・配信され大ヒットするなど躍進を続けています。VCビジネスは本当に難しく、humbleでいたいと改めて思いました。

手嶋浩己, XTech Ventures

一番のAnti-Portfolio: カンム

ある日の夜、私は5−6人の飲み会で起業家の「ヤマキ」という真面目そうな顔した男と初めて会い、その日は二次会でいわゆるラウンジ的な飲みに突入、「ヤマキ」も真面目そうな顔して大変楽しそうに飲んでおりました。確かその日はおごってあげた記憶があります。「ヤマキ」はデータ分析みたいな事業やってると述べ、「儲かりそうもないなー」と私は勝手に思っていました。後日、「ヤマキ」は「カンム社の八巻」として連絡してきて、実はステルスでピボットの準備をしておりフィンテックの新事業を開始する、それに当たってブリッジラウンド的な資金調達するので、当時私が所属していたユナイテッドから投資してくれないかということでした。当然そういうラウンドなので、条件面的には今思うと魅力的だったと思います。私は八巻の語る事業構想は面白いと感じていたものの、ユナイテッド時代は投資の責任者というわけでもなく、担当事業の片手間で勝手に起案していたという感じだったので、「自社に土地勘のない事業領域なので、起案して役員の賛同を取り付けるのが大変そうで、かつ、自分の業務の優先度的にも少し違うかなー」、一言で言えば「起案がめんどうくさい」という理由で断ってしまいました。その後、その新事業=バンドルカード、は見事躍進していきました。今では、「八巻」は利害関係なく話できる(そういう意味では見送ってよかった?)貴重な友人の一人です。

浅田慎二, Salesforce Ventures

一番のAnti-Portfolio: Uber

7年前の伊藤忠テクノロジーベンチャーズ時代での話です。Scale Venture PartnersというVCからサーバ&Network系ハードウェアスタートアップの投資案件の紹介があり、Boxに投資実行した直後で今後確実にクラウド全盛に移行することを確信していた私は、全くDDに身が入らず断る理由を探しまくっていました。DDの一環で、他の既存投資家の投資理由調査のため、当時Uberの社外取締役だったBill Gurley氏(BenchmarkというTop Tier VC)にアポを取り、ヒアリングをしにいったわけですが、興味が薄い某案件の質問は早々と済ませ、Uberの日本での可能性について持参した市場調査内容・個人向けではなく法人向けであれば配車ニーズがある事・先行的に自社でPoCをトライしても良いと熱弁し、帰国。後日メールで某社へは投資できないが、Uberには投資したいと伝えた直後すぐに返事がきました。辛辣なコメント満載なメッセージの最後に「絶対にUberに投資させるわけがない」と…

当時のUberは、$320M程のValuationでSeries Bを終えたタイミングで最新のValuationは$72B…そろそろIPOするらしいですね。

自分の未熟さを呪った体験でした。。。ちなみにDDをしていた某社は、昨年2018年にSeries Fを調達したようです。

木下慶彦, Skyland Ventures

一番のAnti-Portfolio: アランプロダクツ(旧ゴロー)Candle

若手起業家のシードステージを支援することにフォーカスするSkyland Ventures(SV)の投資ポリシーを定義するキッカケになったのはアランプロダクツ(旧ゴロー)花房さん、Candle金さんへの投資を見送ったことです。

彼らはシードラウンドの初回のタイミング、 それ以降のタイミングでも相談してくれましたがSVは投資を断ってしまいました。

初回のお断りは事業自体が難しいドメインでは無いかと感じていたり、以降はこのタイミングでの追加調達で成長させて行けるかのイメージが湧かなかった、手伝えるイメージが無かったなどですが、基本的にはVCが投資を断るときの普通の理由です。

ここで学んだことは:

①若い起業家の短期間でのトライアンドエラーを信じる:スタートアップに大事なのはトライアンドエラーのスピードです

②何回も投資提案されたら、投資する:金余りで刹那的に提案されるケースも多いですが、何回も提案に来てくれたら感謝するようにしたいと思います

これらを踏まえ、トライアンドエラーの早い若手のシードラウンドへ投資するのがSVと定義し直しました。これからも頑張ります。

和田 圭祐, Incubate Fund

一番のAnti-Portfolio: ラクスル

インキュベイトファンドでは、創業した2010年以降、Incubate Campというプログラムの運営を続けています。2011年以降、米国Y Combinatorのモデルの和風アレンジを目指したシード投資のプログラムとして運営され、2014年以降は、VC業界横断で支援関係を創出および最大化することを意識したプログラムとなっています。

しかし実は、2010年の第一回は、「合宿してみよう」という謎で雑な発想から独特のコンセプトで開催されてしまいました。我ながら奇怪なイベントにも関わらず、とても有望で魅力的な起業家たちが参加してくれたのですが、その中にラクスルの松本社長がいました。我々は、不慣れな合宿の開催に疲弊し、一方的に仲良くなったつもりになって、満足して終わってしまったことを深く後悔と反省しています。

投資機会というのは、継続的な会話の中でじっくり関係を深めながら生まれるものも多いですが、創業から日の浅いステージでは出会いの勢いで一気に進むものもあります。後者については、あれこれ考えすぎて躊躇わずに、勇気を持って踏み込む準備を常日頃からしていなければいけないということを学びました。

同時に、残念ながら我々だけの判断に万能性はなく、限界と機会損失があることを自覚しました。起業家のポテンシャルを見出せるベストな投資家(もちろんそれが我々であれば嬉しいのですが)との出会いこそが最重要であると日々自分に言い聞かせ、エコシステム思想のアプローチも心がけています。

堤 達生, STRIVE

一番のAnti-Portfolio: Meleap

私にとってのAnti-Portfolioは、テクノスポーツHADOを展開されているMeleapさんですね。

Meleapさん自体は、成長途上の会社ですが、必ず、成功すると思っています。正直、投資を見送ったというよりは、条件面・私の投資のスタイルと折り合うことができず、断られてしまったのですが、今でも投資したかったなと思っています。CEOの福田さんは、ビジョナリーで知的でエネルギッシュで忍耐強く、素晴らしい起業家だと思います。だいたい、いい大人が“かめはめ波を出したいのですよね!”なんて、真顔で言って、それを実現しようしていること自体が、面白いし、それだけで投資したくなりますね。あと、個人的な志向ですが、どちらかというとマーケットリプレイス型の事業よりもマーケットクリエイション型の事業が好きで、そういう意味でも、テクノスポーツという新しいジャンルを創ろうとしている姿勢は、共感できますね。

この件で、私が学んだことは、あまり自分のスタイルに拘り過ぎないってことですね。もちろんスタイルは大事ですし、スタイルに則った方が成功確率が上がるというのも経験則からわかっているのですが、それに拘っていると本当に大きな“獲物”を逃してしまうこともあるので、そのあたりピュアにみていきたいですね。

長野泰和, KVP

一番のAnti-Portfolio: ココナラ

SBIインベストメントと合弁でKLab VenturesというVCを運営していた時代の話です。当時起業直後のココナラ南さんに会って、すぐに投資したいと思いました。ただ、ココナラは今でこそビジネスを確立しつつあるも当時はワンコインスキルマーケットみたいなイメージで正直ビジネスとして成立するかな?という印象が拭えないまま投資委員会を開催しました。当時のKLab Venturesは私が一応社長ではあったものの、KLabの役員やSBIインベストメントサイドを説得しないと投資判断できないスキームでした。

で、実際の投資委員会では箸にも棒にもかからなく残念ながら投資には至りませんでした。今でも覚えてますがその時の南さんのピッチはほんと素晴らしかったです。それでも投資に至らなかった自分の実力不足とスキーム的な限界を感じました。

ココナラのようなビジネスはまだまだ未知数だけど、南さんという起業家に賭ける!みたいな投資の意思決定はステークホルダーが多くなると難しくなります。そして、それができないとシードに特化したVCというのはそもそも成立しないです。この件は独立性を担保したVCでないと勝負できないと考えるきっかけとなり、3年後のKVP設立に至った印象深いものとなりました。

ベンチャーキャピタルベンチャー投資投資基準

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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