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起業家のどこを見ている? 私の答えは「一貫性とチーム」

「VCは起業家のどこを見て投資を決めているのか?」。これは今も昔もずっと問われ続けていているものであり、かつVCによって判断基準が異なるために共通解が出にくい部分とも言えます。

Coral Capital(以下、Coral)では、500 Startups Japanの頃から貫いている投資スタンスに「その投資対象が本当に1,000億円規模になるかどうか」があります。これは大元である米・500 Startupsの考えと同じもの。そのため、投資対象かどうかを判断する際に「諦めずに挑戦し続けられる人かどうか」「大きな壁に本気で挑む人かどうか」を必ず見ています。もちろん、結果として小さなイグジットになることを否定しているわけではありません。あくまでもスタンスとして、です。

では、「諦めずに挑戦し続けられる人かどうか」「大きな壁に本気で挑む人かどうか」を判断するときに自分はどこを見るようにしているのか? これまでの投資を振り返りながらブレイクダウンしてみたところ、「一貫性」というキーワードがあると思っています。起業家の事業に対する熱意はもちろんですが、その想いがまっすぐ行動に結びついているのか?その行動に、起業家の姿勢があらわれると思っているのです。

「45日もかかってしまった」と話す起業家

「一貫性」をキーワードに、Coralの投資先企業を振り返ってみます。例えば、株式会社justInCaseのCEO兼Co-founderの畑加寿也さん。

畑さんとの出会いは2016年に開催されたスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo」のスピードデーティングでした。スピードデーティングとは、15分という制限時間内に起業家と話すTechCrunch Tokyoが行っているマッチングです。このスピードデーティングで、アクチュアリー資格を持つ人からの事前申し込みを見て興味を持ち、会ったのが畑さんでした。当時用意されていたのはプレゼン資料のみでしたが、とてもユニークな事業アイデアだったのでいくつかアドバイスをして、「そのアイデアがもう少し進んだら連絡ください」というやりとりで終わりました。

驚いたのは、それから約1ヶ月半後です。畑さんから再び連絡をもらったので会ってみたら、TechCrunch Tokyoのときはプレゼン資料のみだった事業アイデアはプロトタイプまで完成し、メンバーも増えていました。さらに、プロトタイプを自ら開発し、友人などに使ってもらい試験運用をスタートさせていて、データなども集まり始めていたのです。

なかでも私が一番感心したのは、畑さんが開口一番で言った「すみません、45日もかかってしまって」のひと言。私からすると「たった45日でここまで進めたのか!?」ですが、畑さんは「45日もかかってしまった」と感じている。彼の高い目標と、それに対する行動量は、投資の決定打になりました。

奇跡的すぎるキャリアを兼ね備えていた起業家

奇跡的な一貫性を見せた例が、コネクテッドロボティクス株式会社沢登哲也さんです。

最初に出会ったのはミクシィと共催したJ-KISSの勉強会でした。そんな沢登さんへの投資のきっかけになったのは、Maker Faire Tokyo。そこで彼はたこ焼きロボットのプロトタイプを出展していました。(ちなみに私もいちエンジニアとして参加。友人と3人でVR戦車というガジェットを近くのブースで出展していました)。Maker Faire Tokyoでは子ども連れの参加者が多かったこともあり、たこ焼きロボットは常に大人気。たこ焼きをつくる過程に注目が集まるだけでなく、「頑張れ!」と応援されるシーンもありました。

沢登さんはMaker Faire Tokyoで手応えを感じ、たこ焼きロボットを本格的にビジネスとして考えていくために、後日、私のところへ相談に来てくれました。これまでは軽い雑談程度だったので、沢登さんと深く話し合うのはそのタイミングが初めて。そこで、沢登さんのキャリアが「この上ないほど調理ロボット事業にぴったり」であることがわかりました。

沢登さんは学生時代にロボットコンテストで優勝。大学卒業後は、飲食店の経営に携わりました。しかし、飲食店での激務に燃え尽きて退職し、その後はMIT発のロボット系スタートアップにジョインしています。その後、自ら起業し、ピボットしながら現在の業務用調理ロボットの開発へとたどり着いたというのです。

スタートアップではファウンダーマーケットフィットのために「技術がわかる人」「経営がわかる人」など、事業に必要な要素を持つ人材を集めるパターンはよくあります。しかし、沢登さんの場合はロボット関連の技術を理解でき、飲食店経営の経験がある。そして、すでにたこ焼きロボットという実物もある。もちろんあくまでも結果的に「connecting the dots」となった事例ではありますが、これほど多くの要素を兼ね備えているパターンは稀です。「こんなにもファウンダーマーケットフィットする人がほかにいるだろうか!」となり、すぐに投資しようと決断しました。

「チーム」によって、成功への道のりが変わる

「一貫性」以外にもう1つ見ているところを挙げるとすれば、それは「チーム」です。たとえ仲が良い者同士とはいえ、そこにビジネスが絡むと関係性は変化します。そのため、一緒に働いた経験があるかどうか、もしくはプロジェクトを一緒に進めたことがあるかどうかは大事な条件だと思っています。

Coralでは、投資前にスタートアップのコアメンバーたちと、会議室以外の場所でフランクに話す機会を持つことも多いです。例えば、居酒屋やカフェなど。要するに、会議室というかしこまった場以外での彼らの自然な姿を見たいのです。フランクに話しながら人柄を見たり、話したりして、チーム全体の雰囲気を見ます。

もちろん、チーム内の関係性だけが原因で事業や会社が失敗すると決まっているわけではありません。しかし、コアメンバーたちの人間関係によるトラブルは、わりと根が深いインシデントになりがちです。事業を成功させるための道のりが遠回りになってしまうのは、とても辛いことです。そういった要因が潜んでいないかどうかも、投資判断のときに見ています。

起業家をサポートし、リターンを出していくためにも

起業家の姿勢としてよく言われるのは「短期で悲観的、長期で楽観的でなければいけない」というものがあります。彼らが挑む領域は、未踏の地です。当然ながら何が起こるかわかりません。そういった中では悲観と楽観という、相反する要素を持ちながらゴールを目指す必要があります。VCは、そんな起業家をサポートし、そのうえでリターンをきっちりとだしていかなければならない仕事です。だからこそ「本当にこの人に投資すべきか」のジャッジは厳密になります。

とはいえ、起業家と話すときにいつもジャッジするつもりで見ているかというと、そうではありません。そもそも私は起業家と話し、新しいアイディアやその未来について盛り上がるのが一番好きなので、ワクワクしていることのほうが多いです。個人的には、投資対象かどうかは別としてもっといろいろな方々に会い、アイデアに触れていきたいと考えています。


■プロフィール

澤山 陽平・・・Coral Capital 創業パートナー。2015年より500 Startups Japan マネージングパートナー。シードステージ企業へ40社以上に投資し、総額約100億円を運用。500 Startups Japan以前は、野村證券の未上場企業調査部門である野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(NR&A)にて IT セクターの未上場企業の調査/評価/支援業務に従事し多くのテックIPOを手がけた。さらに以前はJ.P. Morganの投資銀行部門でTMTセクターをカバレッジし、数千億円のクロスボーダーM&Aのアドバイザリーなどに携わった。東京大学大学院 工学系研究科 原子力国際専攻修了。修士(工学)。
現在でも継続的にコーディングを行っており、おそらく国内で唯一ハッカソンで優勝した実績を持つベンチャーキャピタリスト。個人として TechCrunch Tokyo Hackathon に参加し、2014 年は TOP5入賞、2015年はIBM賞を受賞したほか、大学時代の友人とMaker Faire Tokyoに4年連続出展するなど幅広く活動。

ファウンダーマーケットフィットベンチャー投資投資基準

澤山 陽平

Founding Partner @ Coral Capital

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