スタートアップへの投資を決める前に、デューデリジェンスの一環としてリファレンスをとることがよくあります。私たちは、中心的なチームメンバーがかつて一緒に仕事をしたことのある人に電話をしたり会ったりして、創業者チームのことやチームのダイナミクスのことをより深く理解しようとします。リファレンスをとる際にする質問や注目ポイントをすべて公開してしまうと、今後リファレンスの電話をしても、みんなこのブログで事前に対策を練ってしまうので、今回それはしません。
そこで、直感に反するかもしれませんが、Coralにとって決してマイナス材料にはならないことについて書こうと思います。それはつまり、創業者が協調性に欠ける場合です。リファレンスチェックをしてみると、創業者が、前の職場に「フィットしていなかった」という傾向をつかむ場合があります。その理由は、理屈っぽい、せっかち、過激すぎるなど様々です。多くの採用担当者にとって、こうした特徴はマイナス印象を与えますが、私たちCoralにとってはむしろプラスの場合もあります。
その理由は、私たちCoralが投資するステージで求めているのは、すでに存在する会社を経営することではなく、会社を一から創り上げることだからです。これは全く異なるタイプの人間たちです。Safi Bahcall氏の著書「Loonshots」では、これをアーティストと兵士と形容しています。アーティストの役目は、クレイジーなアイデアを思い付くことであり、兵士の役目は、それを遂行することです。アーティストには革命的なビジネスを思い付いてもらわなければならず、兵士にはそのプロダクトまたはサービスを作り、販売し、届けてもらわなければなりません。アーティストも兵士もかけがえのない存在なので、同じチームにいることが理想的です。しかし、私たちCoral Capitalが投資するようなステージで先ず優先するのは、革命的なアイディアを探すことです。そのため、リファレンスの電話をしたときに、創業者がクリエイティブだったけど組織にフィットしなかった、と伺うことは最高なことだと思っています。それこそが、探し求めているアーティストです。
とは言え、アーティストと兵士の均衡がとれた組織であれば、そのときこそ本当に金脈を掘り当てたようなものです。Jobs氏が、アーティストと兵士の双方、すなわちJony IvesとTim Cook双方のありがたみを知ってから、Apple社の時価総額は大きく伸びました。双方が活躍できる企業文化を構築できれば、伝説的な企業を構築できるかもしれません。
追伸: Loonshotsは素晴らしい本でした。組織におけるイノベーションと業務執行のバランスについて学びたいと思っているスタートアップや企業の管理職の方がいらっしゃいましたら、この本はぜひお勧めします。和訳版はまだ出ていないと思いますが、出版されたら一読の価値はあるはずです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital