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アウトソーシング

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿を翻訳したものです。


この記事を書くにあたって、まずアウトソーシングとは何か、そして企業がアウトソーシングを行う理由について説明することから始めたいと思います。その次に、スタートアップの観点から見たアウトソーシングについて話してみたいと思います。

アウトソーシングとは、ある企業が別の企業を採用し、特定の職務を行ってもらうことを言います。ウィキペディアでは「サードパーティへ業務委託すること」と定義されています。このアウトソーシングという用語は、労働力や仕事を海外に移すことと同義になりましたが、アウトソーシングは地理的に定義されるものではありません。廊下を隔てた向こう側の企業にアウトソースすることもできるのです。

ある企業が別の企業にアウトソースする理由は主に2つあり、それはすなわちコストとスキルです。委託先のサードパーティの企業は、より低コストで、もしくはより高品質で、あるいはその両方を満たして要求される仕事を実行することができます。場合によっては、時間がその要素となることもあります。委託先の企業の方が早く仕事ができるというのもよくある話です。

ビジネスのうち、あらゆる種類の職務がアウトソースできます。ビジネスのほぼすべての業務がアウトソースされるのを折にふれ見てきました。しかし、最もよくアウトソースされるのはソフトウェア・エンジニアリングやデータ入力およびデータクレンジング、カスタマーサービス、技術サポート、そして簿記や会計です。

スタートアップは最も活発にアウトソーシングを行う企業形態ですが、これは当然のことと言えます。創業チームには一つか二つの分野のスキルしかなく、ビジネスを立ち上げるために必要なスキルがすべて揃っていないことも多いものです。それゆえ、スタートアップは自社が専門知識を持っていないタスクをアウトソースするのです。これは良いことづくめではなく、悪いことにもなり得ます。

具体的に言えば、ソフトウェア企業の創業チームがソフトウェア開発をアウトソースしてしまうのはいかなる場合においても良くないことだと私は考えています。このケースはよく見受けられます。あるチームが当社のオフィスに来て売り込みをかけるとします。私が「御社には何人のメンバーがいるのですか?」と尋ねると、「ここにいるのが全員です」と答えます。そして「誰がコードを書いているのですか?」と尋ねると、「コーディングについては外注する企業を押さえました」と言うのです。これは私にとって非常に残念な瞬間なのです。なぜならこれは、当社(Union Square Ventures)としてはそのチームにはほぼ確実に投資をしないということを意味するからです。ソフトウェア企業は自社にとって最も重要な能力は自社で持っておく必要があると当社は考えています。その能力とはすなわち自社の製品を自社の中で生み出す能力です。

ソフトウェア企業の創業チームには有能なプロダクト・マネージャー (たいていの場合これは創業者本人です) がいるべきですし、コードの大部分を書ける有能なソフトウェア開発者を少なくとも数人は抱えておくべきです。時にはソフトウェア・エンジニアリングの一部をアウトソースするのも確かに理にかなったことではあるでしょう。最近(訳注:原文は2010年9月のポストです)よく目にするのは、BlackBerryのアプリやその他モバイルアプリの開発のアウトソーシングです。現在のところ、モバイルアプリの開発はまだ誕生したばかりのスキルですが、当社の投資先企業にとってはこの先しばらく重要なスキルになると見られるため、投資先企業にはモバイルアプリの開発を行う人材を社内に招くことも推奨しています。

カスタマーサービスや技術サポートは、アメリカ国内はもちろん、国外のコールセンターにも非常に容易に外注できる労働集約型の業務ですから、スタートアップにとってはアウトソースしたくなる業務だと思います。どこかの時点で、ほとんどの企業がこの業務を部分的に、あるいはすべてアウトソースすることでしょう。しかし、スタートアップは「企業としてすっかり成長する」(それが何を意味するにせよ) までは、この業務をアウトソーシングするべきではないと考えています。カスタマーサービスや技術サポートは、スタートアップにとっては顧客との対話に最適な方法です。スタートアップが顧客と対話できる唯一の接点である場合もあります。顧客からのフィードバックはスタートアップにとってこの上なく重要ですから、自社の中で行うことが肝要です。

スタートアップがアウトソースしてもいい、むしろするべきだと当社が考えている分野の1つに、データ入力とデータクレンジングがあります。これはスタートアップにとって戦略上重要ではありませんし、大抵の場合コストと時間がかかる作業ですが、簡単にアウトソース可能です。

ほとんどのスタートアップが初期の段階でアウトソースする職務が簿記と会計ですが、これも理にかなっています。簿記と会計はほとんどの創業者が持っていない特定のスキルです。この業務をアウトソースすることにより、会計帳簿を正確かつ最新の状態に保つことができます。

私は全般的には、アウトソーシングは良いことだと思っています。企業は自社のコア・コンピタンスとなるスキルや職務を育てていくべきで、そうでないスキルや職務はアウトソースすべきだと考えています。アメリカは、アウトソーシングを悪者扱いするのではなく、アウトソーシングに投資すべきだと考えています。アメリカの経済的に脆弱な地域には、アウトソーシングを利用して経済を築き、成長させるチャンスがたくさんあると思っています。

しかしスタートアップにとっては、アウトソーシングは注意して扱うべき問題です。コア・コンピタンスとなるものや重要なフィードバックが得られる接点はアウトソーシングすべきではありません。創業チームにそのような職務を行うスキルがない場合は、スキルのある人間を探して、雇用するか創業チームに加わってもらうようにしましょう。

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Editorial Team / 編集部

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