個人が不動産の物件探しをネットでやる場合、たいていは既存プレイヤーであるSUUMOやHOME’S、at homeといった大手不動産情報サイトの物件にヒットして、そこから条件を入力したり、類似物件をクリックして物件探しをするということになることが多いのではないでしょうか?
不動産情報サイトはレッドオーシャンの激戦市場で、掲載件数やSEOの強さから、今から市場に参入するのは難しいでしょう。リクルート(SUUMO)が紙媒体からネットの世界へと自らを変えていき、いまもこの市場のジャイアントであるのを見ると、そもそも新規プレイヤーがこの市場に参入するのは相当に無理があると思うかもしれません。
アプリならSEOで戦う必要がない
ところが、投資銀行から戦略コンサルを経て、不動産テック領域でBluAgeを2018年に起業した、28歳の若き佐々木拓輝氏の見方は全く違います。
「ネットで部屋探しをすると、いろんなサイトが出てくる。でも、結局どこが良いか分からないまま内見の予約を入れるのですが、そのプロセスに無駄がある」(BluAge佐々木CEO)
なぜそうなるかというと、ユーザーが不動産サイトに問い合わせを入れると、それを仲介事業者が見て素早く返答し、そこから内見の日程を決めて……、というプロセスが入るからだそうです。このとき仲介事業者はプラットフォーム上で他社と競合していて、数社で顧客獲得を競っているといいます。競っているのは見込み顧客のリードだけではありません。個々の不動産情報サイト上での表示位置についても競争が起こっています。いわゆる一般的なWebの世界でいうSEO的なものと同様に、より写真の数を増やしたり、パノラマ写真を追加したりと物件掲載の労力が増えているのだとか。そのコストが最終的にユーザーに仲介手数料としてかかってきていて、誰も得しない状況が発生しているのだといいます。
BluAgeが提供するアプリの「カナリー」は「物件をアプリで探す人が増えている」(佐々木CEO)という前提を元に、この市場に対して効率性とユーザー体験の良さを武器に切り込んでいます。カナリーは、ユーザーが内見したい日時に合わせて近くの不動産エージェントをマッチングすることで、部屋探しにおける内見までの無駄をなくしています。2018年11月にリリースしたプレビュー版では、すでに1万以上のアプリダウンロード、1000件以上の内見依頼を獲得しているそうです。佐々木氏は、こう言います。
「部屋探しは2、3週間と短期間に高い濃度で行うものなのでアプリが有利。アプリならSEOで勝負しなくてもいい」
集客をポータルサイトに頼らざるを得ない状況では、サイト上での競争に勝つためにエージェントも一定の事業規模でなければならなかったそうです。また、AirbnbやUberなどで起こったように、サービス提供側とユーザー側の双方が相互評価することで不動仲介ビジネスの世界に透明性をもたらすのも狙い。これまでは必ずしも良心的なエージェントばかりではなかったそうです。
あらゆる業界において競争の末に矛盾や非効率が蓄積していくことがあります。紙媒体からネット、ネットからアプリという流れの中で、まだまだ非効率を変えていける業界は多くあることでしょう。
Editorial Team / 編集部