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利益か成長か

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「利益か成長か」を翻訳したものです。

私は高い成長が見込まれるテック企業に投資してきましたが、その中で常に苦心し続けてきたことの1つに、収益化とより速い成長との間の緊張関係を挙げることができます。テック業界の成長を見込んで投資する世界では(上場市場でも未上場市場でも)、成長の方が収益化より重要で、まず「市場をつかんだ」後に収益化に注力すればいい、というのが中心的な考え方になっています。これは、営業やマーケティングに多く投資し、「自然体」では達成できないような成長率を目指そう、といった動きにつながるものです。

少し前にとある取締役会で見た公式を、2〜3か月前のブログで紹介しました。その公式というのは、前年比の成長率に営業利益率を足した数字が、最低でも40%以上でなければならない、というものです。つまり、前年比100%成長していれば、営業利益率はマイナス60%でもいいということです。もしくは、成長率ゼロでも、営業利益率が40%あればいいということです。また、前年比の成長率が20%、営業利益率が20%でもいいということです。この40%という目標の数字は特に魔法の数字というわけではないのですが、利益(もしくは損失)と成長に関して、どのような数字の関係なら許容されるのかを何らかの形ではっきりさせておくのはいいことだと思います。制約を一切設けることなく、正気を失ったかのように、成長のための成長に投資し過ぎた結果、その投資が失敗に終わってしまったという企業の例を、これまで見過ぎるほど見てきました。

過去10年で私たちが関わったり投資したりした中の一握りの超トップレベルの企業は、このトレードオフを行いませんでした。こうした企業は設立直後から収益化に成功し、その利益を事業に再投資して、資金を無駄にしたり資金調達の必要に迫られたりすることなく、非常に高い対前年比成長率を実現して成長し続けました。この最も良い例はIndeed.comですが、それ以外にも同様の例はたくさんあり、どれも私は非常に特別な企業として深く尊敬しています。

テクノロジーの世界では、成長に多く投資していなければ(そして資本を失っていなければ)長期的に見たときの潜在的な事業価値の最大化につながっていない、というのが主流の考えとなっています。しかし上述の経験から、この考えに私は疑問を感じるようになりました。この考えは絶対的なものではないのではないか。こうしたトレードオフを回避できるような、市場での明確な構造的競争優位性を持つ極めて特別な企業であればいいのではないか。もしくは、鋭くて経験豊かなビジネスパーソンであればこうしたことができるのではないか、と(ちなみに私はIndeed.comの創業者のPaul(ポール)とRony(ロニー)はこう呼ぶにふさわしいと思います)。

さらに、利益を上げようという動機、つまり毎年、利益をあげるために使っている経費より多くの売上を立てようという考え方は、経営チームにとって非常に価値のある制約になる、とも考えています。こうした動機を持っていれば必然的に、検討中の投資に関して、チームが創造的に、そして論理的に考えることになります。人材、製品、営業、また事業のその他の部分に不要な投資をすることがなくなり、無駄がなくて筋肉質な、非常に効率的に機能する組織を維持できるようになります。損失を補填するだけの十分な資本があり「成長に投資している」から利益を上げなくてもいいとなると、組織の焦点を定め、皆が互いに競って努力するようなトップレベルのチーム保つための厳しい意思決定をする必要がない、ということにもなってしまいます。

こう書いたからといって、ポジティブキャッシュフローの盲信者だと思われたくはありません。私たちの仕事というのは、スタートアップがプロダクトを市場に出し、事業やチームを成長させ、創業者や経営陣、株主に価値を創出することを目指し、営業損失を出しても大丈夫なように、企業に投資をすることです。私たちの投資先のスタートアップのほとんどは損失を出していて、赤字が多く並ぶ損益計算書や、いつ資金が底を尽きて倒産するかを示す計算結果を見ることにも、私たちは慣れています。

しかし、私が見るどの事業計画でも、大幅に高額な資金調達が可能な状態まで事業を引っ張り上げることが目的として挙げられているのには、少し飽き飽きしてしまっています。その目的は間違ってはいませんし、ベンチャーやスタートアップというゲームはそのように展開されるものです。しかし、ある時点では、持続可能な収益性の確保を目的とする事業計画の方を見てみたいのです。持続可能というところが特に重要です。

なぜこれを強調するかというと、先述の通り、私たちがUSVで関わってきた最高の企業の中には、創業直後に収益化に成功し、その後何年間も黒字を維持しながら売上高を前年比100%で伸ばし続けた企業があるからです。それは可能なのです。起業する人がそれを可能だと思わないのは、それが可能だと教えてくれる人がいないからかもしれません。だから私が、それを伝えようとしているのです。

AVC企業文化の構築

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