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投資家として、最も「No」と言いづらいのは、どんなスタートアップか

ベンチャーキャピタリストとして活動する中で、「No(投資を見送る)」と言い渡すことは避けては通れません。日本では、ほんの一握りの投資案件に対してVCの数が多すぎると言う人もいます。しかし実際、日本には、VCの手が足りなくなるほど多くのスタートアップがあるのです。ありがたいことに、私たちは毎月300社以上の新しいスタートアップを見る機会に恵まれています。ただ、最終的にその中で投資を決めるのはわずか1、2社にとどまります。ほとんどの案件は明らかに「No」、あるいは明らかに「Yes」なので、ふるいにかけるのは簡単です。しかし、どちらとも言えないケースもあり、その場合の投資判断は困難を極めます。

よくあるのは、創業チームにはとても好感が持てるけれど、攻略しようとしているマーケットにはそれほど期待できない場合です。マニフェストに記したように、私たちはサーファー(創業者)と波(マーケット)の両方に投資します。どんなに一流のサーファーでも、良い波がこなければ大技を披露することはできません。凡庸なマーケットに取り組む優秀なスタートアップに投資すれば、ある程度のリターンは得られるかもしれません。世の中には「無いよりも、あったほうが良いだろう」と言える程度のアイデアは無数にあり、多くの優秀なチームがそれらに取りくんでいます。ただ、そういったスタートアップがそこそこの額で買収されることはあっても、それ以上の結果を出すことは期待し難いでしょう。投資家として陥りやすい心理の罠は、「この会社に投資してもきっと損をすることはないだろう」と投資を正当化してしまうことです。しかし、本当に問うべきは「この会社は日本で、さらにいえば、もしかして世界で有数の素晴らしい企業になるだろうか」という問いなのです。私たちCoral Capitalは、唯一無二の、時代を代表するような企業を探しています。

Noと言うのが難しいもうひとつのケースは、先ほどと全く逆で、マーケットは好ましいけれど、創業チームに対して確信が持てない場合です。私たちは500 Startupsと1号ファンドを立ち上げ、シリコンバレーにもLPがいます。そうしたつながりを通して、最新のトレンドは何か、どんな新しいアイデアが広まりつつあるのかを常に把握しています。そのような先行指標を見て、同様のアイデアが日本でもうまくいくかどうかを検討することもよくあります。シリコンバレーでは、このような姿勢を「Prepared Mind(心構えができている)」と呼びます。常に学び続け、最新のトレンドを追うことで、素晴らしい投資機会を見逃さずにすむのです。しかし、ここにも心理の罠が潜んでいます。それは、何らかの分野の魅力に惑わされてしまったがゆえに、その分野に取り組んではいるけど、創業チームの力量が追いついていない日本のスタートアップに投資してしまうことです。これは賢いやり方とは言えません。一流のサーファーたちによるドリームチームなくしては、どんなに大きな波が来ても台無しになります。また、事業会社の投資部門や、「AI」や「ブロックチェーン」といったバズワードに特化したファンドの投資家も、こういった過ちを犯しがちです。バズワードを活かすも殺すも、創業者の腕次第なのだということを心に留めておきたいものです。

もちろん、VCによって考え方は千差万別です。私たちもこれまでに数々の過ちを犯してきました。そして失敗を繰り返すことのないよう、常に試行錯誤を繰り返し続けています。その一方で、私たちの投資スタンスも、時を経て確立されてきました。それこそが、サーファーと波の両方を重視するという考え方です。シリコンバレーの黎明期では、セコイア・キャピタルはマーケット(波)を、KPCBはテクノロジーを、デイヴィス・アンド・ロック(知名度は低いですが、VC史への貢献度では先の2社に引けを取りません)は人(サーファー)を重視することでそれぞれ有名でした。投資をする上で、まったく重要でないと言い切れる要素はありません。違いが出るのは、どこに比重を置くのかなのです。

エクイティファイナンスベンチャーキャピタルベンチャー投資投資基準

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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