スタートアップで新たなサービスの立ち上げに携わりたい。そんなエンジニアのための採用イベント「Barloon Startup Lightning#1」が、東急が運営する渋谷の招待制イノベーションラボ「SOIL」で、10月8日に開かれました。
よくある採用イベントのようですが、ちょっと変わっているのが、エンジニア募集中のスタートアップではなく、それらの企業に投資しているVC(ベンチャーキャピタル)がプレゼンする点。
VCは、社内ではなく社外の立場から投資先に関わっています。お金を投資しているからこそ、無責任な発言もできません。つまり、一定の責任はありながらも、客観的に評価しているのがVCというわけです。
イベントには、プログラマー起業家支援に特化したファンドを運営するMIRAISE(ミレイズ)、シード期のベンチャーを中心に250社以上に投資するIncubate Fund、そしてCoral Capitalが登壇しました。
以下、VC3社が紹介したスタートアップ12社を、VC視点の推薦コメントとともに紹介します。
Coral Capital出資先の4社
1)ノイン
コスメのECアプリ「NOIN」を運営。メイク術やメイクの悩みを解決する動画や記事も掲載する。アプリ公開から1年で累計流通額8億円、1年半で200万ダウンロードを突破。9月からは自社ブランド商品の販売も開始した。
「化粧品プラットフォームとして急成長していて、年末には300万ダウンロードに届く見込み。化粧品メーカーに購買データやCRMツールを展開するなど、対企業向けの取り組みも強化している。とにかく社長がキレッキレというのも特筆点」(Coral Capital)
スマホの破損や水没、盗難紛失を補償する「スマホ保険」、保険契約者同士がリスクをシェアし、もしものことが起きた際に助け合う「わりかん保険」を提供する。B向けには、数行のコードを加えるだけで、自社サービスのマッチした保険加入を完結させられる「保険API」を2018年9月に開始した。
「保険そのものにテクノロジーを適用しているのが強みで、監督官庁のお墨付きで新しいサービス開発をするなど規制業界に切り込んでいる。例えばスマホ保険は、スマホに搭載されているセンサーを使って、契約者がどれだけスマホを雑に扱っているかがわかり、丁寧に扱っている人は保険料が下がる。B向けの保険APIも伸びる余地がある」(Coral Capital)
3)Graffer
行政手続きを効率化するサービスを開発する。証明書請求に必要な作業をWeb上で完結させる個人向けサービスや、登記簿謄本をネットで取り寄せられる法人向けサービスを手がける。
「B2Cではすべての日本人、B2Bでもすべての法人が利用者になる可能性がある。もともと創業者が、幅広い人に使われるサービスを作りたいという思いから、この領域を選んでいる。創業者は究極の合理主義のような人で、カルチャーも独特。例えば、オフィスでは集中するためにすべての机にパーティションを設置したり、社員は40万円の予算内でPCや椅子、ディスプレイを自分で揃えられたりする。ビジネス側の人も含めて全社員がコードを書けるのも特徴 」(Coral Capital)
4)Anyflow
プログラミングの知識がなくても、複数のSaaSを連携できる、日本版Zapierのようなサービス。多くの企業でSaaSを複数導入することが増えているが、異なるSaaS間でワークフローに沿った形で自動的に連携する仕組みをつくれる。従来はAPIを利用するプログラマーが必要だったことがノンプログラミングで可能。
「Coralの業務もかなりの部分をZapierで自動化しているが、Zapierが日本独特のSaaSに対応する可能性は低い。今後も日本でSaaSが拡大する中、Anyflowは間違いなく需要が高まる。最近注目が非常に高まったため『このサービスに対応してくれれば導入したい』という声が多く、それらの要望に答えるためのエンジニア採用が急務となっている」(Coral Capital)
MIRAISE出資先の4社
5)ロケッタ
テック系ニュースを共有するコミュニティ「ITnews」を運営。エンジニア版NewsPicksのようなサービスで、テック業界の著名人が気になったニュースを拾い上げ、実名でコメントする機能もある。「公式Picker」として、Rubyの父として知られるまつもとゆきひろ氏や、セキュリティ専門家の徳丸浩氏ら参加。2018年12月にリリースし、ユーザー数は約6万5,000人。
「日本にはHackerNewsやRedditのようなITコミュニティが存在しないため、エンジニアはチェックすべき情報を追いきれない。こうした日本のITコミュニティの課題を解決することに価値がある」(MIRAISE)
6)Pegara, Inc.
ディープラーニングに最適なGPUクラウド「GPUクラウド」を運営する。ディープラーニングのデータサイエンティストが直面する、演算リソース不足を補うためのクラウドサービス。ローンチから1年半で40か国、300社以上の顧客が使っている。
「機械学習やAIを活用する企業は多いが、それらの企業向けにソリューションを手がける会社は日本ではなかなかない。ストックオプション、リモートワーク、英語の勉強支援などが充実しているのも魅力」(MIRAISE)
7)ウゴトル
ダンスやスポーツなどの自己トレーニングを支援する動画アプリ「ウゴトル」を運営。動画の中で見たいところを選択して、コマ送りやスロー再生、繰り返し再生ができる。ダンスやスポーツ用途以外に、アイドルの振り付けを覚えたいユーザーからも支持されている。累計ダウンロード数は90万、MAUは6万ユーザー。
「最初は個人アプリとして始まったが、創業者が7年かけて作り続けていて、他の企業では追いつけないレベルになっている。ユーザーもかなり増え、教える人と教わりたい人のマッチングも視野にあり、ビジネスに転換するフェイズに来ている」(MIRAISE)
オープンソースソフトウェア(OSS)の収益化を支援するサービス「Dev」を運営。OSSエンジニアに対して、ダウンロード数に応じてトークン(Devトークン)を無償配布する。Devトークンは仮想通貨交換所でEthereumトークンと交換性があり、これを報酬として受け取れる。2018年のベータ版公開以降、OSSの累積ダウンロード数は67億を超える。
「無償で利用可能なOSSの83%は、金銭的な問題などから開発が1年以上継続しない課題がある。OSSのほかにも論文など、『お金が入りにくいけど、正しいこと』を追求できる経済圏を作っていけるのが魅力」(MIRAISE)
Incubate Fund出資先の4社
9)iCARE
健康診断やストレスチェックなどの健康労務をクラウドで効率化する、人事担当者向けサービス「Carely」を運営。従業員の健康情報を一元管理したり、健康診断の予約や残業時間の管理などを行える。ストレスチェックの結果やチャットログをもとに、個別に健康のアドバイスをする事業も視野に入れている。
「CTOがプロダクト責任者であり、人事部長も兼ねているので、クリエイターへの理解がある会社。全社員がコーダーなのも特徴。オフィスでのストレッチや、ランニングや筋トレなどの社内部活動もあり、従業員の健康に対する取り組みも充実している」(Incubate Fund)
10)WOVN.io
自社サイトに1行のスクリプトを埋めるだけで、サイトを多言語化できるサービス「WOVN.io」を提供。翻訳は40か国語に対応し、国内外の1万5,000サイト以上が導入している。
「東京オリンピックに向けて訪日外国人は増えており、2018年で3,000万人を突破した。その一方、日本語のサイトしかないために、サービスを使いたくても使えない外国人も多い。WOVN.ioはサイト多言語化のコストと期間を大幅に削減できるのが魅力。JRや東京メトロ、金融機関などの大企業から、SmartHRなどのベンチャーまで幅広く導入している」(Incubate Fund)
11)TERASS
都心のハイエンドマンションを紹介する不動産ポータルサイト「TERASS」を運営し、約600の物件を紹介する。今後はハイエンド物件の購入者と、販売エージェントをダイレクトにマッチするプラットフォームを年明けにリリースする。
「米国では、購入者とエージェントをダイレクトにマッチングする不動産テックが注目されている。例えばSoftbank Vision Fundも投資するCOMPASSは、4,400億円の評価額がついている。TERASSは、こうしたテクノロジーを日本で展開しようとしている」(Incubate Fund)
12)Schoo
オンライン動画学習サービス「Schoo」を運営。生放送の授業を受講できる無料会員は40万人。個人や法人向けに、見逃した授業をいつでも閲覧できる有料サービスも提供する。
「法人向けサービスは800社以上が導入している。9月にはKDDIからシリーズCの資金調達、業務提携も行うなど、絶好調の会社。リモートワークをはじめ、働きやすさを重視しているのも特徴」(Incubate Fund)
Editorial Team / 編集部