こんにちは、世古圭と申します。珍しい名前ですが「せこ・きよし」と読みます。2020年1月に三菱商事を退職して、2020年2月よりCoral Capitalでシニアアソシエイトとして働きはじめました。すでに、プレスリリースやCoral Capital創業パートナーCEOであるJamesのブログ投稿、あるいは自己紹介動画の「Coral Capital 新メンバー シニアアソシエイト 世古圭に聞く10の質問」
をご覧になった方もいるかもしれませんが、改めて自己紹介と今後の抱負を書いておきたいと思います。
「新しいテクノロジーを生み出すのは、だいたいベンチャー企業、つまりスタートアップだ」
「より良い世界を作ってきたのは、使命感で結ばれた一握りの人たちだった」
「スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ」
これらは僕が大好きな起業家・投資家で、思想家でもあるPeter Thielの言葉です。胸が躍りませんか? 僕は読み返すたびに心が震えます。
テクノロジーを用いてより良い社会を創る。起業家ではなく、ベンチャーキャピタリストという立場ですが、そうした意思ある人たちを応援・サポートしたいというのが今の想いです。
生命や宇宙の謎に惹かれ、大学院で物理工学を学ぶ
僕は三重県の松阪市で山と川と(牛に)囲まれて育ちました。虫取りや魚釣りをしたり、星を眺めたりして遊び、自然と宇宙や生命へ興味を持ち、この世界の謎を解き明かしたいと思い大学へ進学しました。大学・大学院では物理工学を専攻し、僕たちが生きるこの物質世界について学びました。例えば、宇宙の始まりは?なぜ虹ができるのか?という小さい頃からの疑問や、超伝導や量子テレポテーション、生命の誕生における量子力学的振る舞いのような現在でも分からないことが多い最先端のテクノロジーについて学び、その謎を解き明かしていくことにワクワクしていました。大学院では太陽光などの光が電子に変換される新しいメカニズムの開発と、その技術の太陽光発電への応用研究を行っていました。日々新しい発見と失敗の繰り返しで、楽しかった思い出でいっぱいです。
一方で、サイエンスにおける発見やテクノロジーの進歩だけでは世界は変えられないというもどかしさも感じていました。
当時大学院生として次世代型の超高効率太陽光発電デバイスの開発に向けて大手メーカー2社と共同研究していたのですが、両社の経営状況の悪化により研究予算が大幅に削減されしまい、翌年以降研究を存続させることが困難になりました。この技術が実現できれば世界を大きく変えられるのに……。
どの時代、どの世界でも事業を成すにはお金が必要なのか……、と学生ながらに痛感しました。
世界を股にかける事業に憧れ三菱商事に入社
そんな思いもあり、大きなお金を動かせて自分がやりたい事業ができる会社、また、世界を股にかける人生を歩んでみたいとの思いから、商社に入社しました。
入社した三菱商事では、食品原料のトレーディングで世界中を飛び回り、東南アジアでの食品・リテイル関連の新規事業開発で10社以上の新会社の設立に携わりました。また、国内外の大型M&A案件をリードし、実行したりしていました。2019年には社費留学という形で欧州のトップビジネススクールにMBA留学もさせて頂きました。出張でオーストラリアの酪農場に訪問した際に牛に噛まれて病院に搬送されたことから、国内のメーカーさんとゴリゴリのジョイントベンチャー契約交渉をした後に朝まで一緒に飲み明かした思い出まで、学生時代に思い描いていた「グローバルに現場で活躍する商社パーソン」の醍醐味を全身で味わい、楽しく仕事をしていました。
さらなる興奮と熱狂を追い求めてVCに
三菱商事で楽しく仕事をしてはいたのですが、心の中で何か物足りなさと違和感を感じている自分がいました。
1つは自分のアイデンティティの軸とも言えるテクノロジーからキャリアとしてどんどん離れていっていることへの寂しさでした。テクノロジーを用いてより良い世界を作りたい、そのような事業を作り続けたい、という思いから研究の道を外れてビジネスの世界へ飛び込んだのですが、テクノロジーから随分と遠いところに来てしまっている自分がいました。
もう1つの違和感は世界の中での日本の存在感のなさでした。これは特にビジネススクールの中で感じたことですが、もはや世界は日本を見ていない、ということです。日本がトピックとして挙がるのは高度経済成長期の「Japan As No.1」と言われた奇跡の成長やその中で生み出された日本的経営という過去の文脈ばかりでした。世界経済や政治、イノベーションなどの現在や未来の文脈で日本が登場することは、ほとんどありませんでした。僕が商社で行なってきた事業を振り返ってみても、多くの仕事が海外での事業開発や投資でした。
何か停滞感のある日本で、興奮と熱狂に欠ける自分がいる。自分は何がしたいのか、何ができるのか。
その答えが今のベンチャーキャピタリストという仕事でした。まだ世に出ていないテクノロジーやアイディアを掘り起こし、テクノロジーとビジネスの両方の経験がある自分がその架け橋となって世の中に送り出していく、それが日本のスタートアップエコシステムの強化になり、強い日本を取り戻すことに貢献していけるのではないかと思っています。そのような役割を果たしていくことに興奮を覚えています。
138億年前ビッグバンによって始まった宇宙の誕生と同じように、新しいアイディアや技術の誕生、新しいチームや会社の誕生はいつも特別だと思います。そこには熱狂と興奮が詰まっています。
起業家の皆さん、投資家の皆さん、その他多くの関係する皆さんと一緒に日本のスタートアップエコシステムを盛り上げていき、ワクワクする社会や世界を創り続けていけたらと思います。
これからよろしくお願いします!!
世古圭