ここ数か月にわたって準備してまいりました新しい取り組み、「Coral Growth」についてお知らせいたします。Coral Growthは既存の機関投資家たちの協力のもと立ち上げられたレイターステージ向けファンドであり、私たちの投資先に対して追加投資を継続的に行うことを目的としています。
基本的に、私たちはシリーズAより前の段階で起業家とパートナーを組みます。そしてファンドのおよそ40%をこのような初期投資に割り当て、残りのおよそ60%については、最も有望な創業者たちへ向けた追加投資枠として確保しています。
しかし、2年前に私たちは新しい試みを実行しました。急成長した投資先企業の1つであるSmartHRのシリーズBのために、専用のファンドを新たに組成し、その全額をこのラウンドに投資したのです。当時の発表でも説明しましたが、これには主に2つの理由があります。
1つ目は、日本にはスタートアップに大きな額を投資できるようなプレイヤーが少ないため、多くの場合、大型ラウンドは複数の投資家が少額を出資することで成り立っているということです。そのため、各投資家を相手にピッチや交渉を行わなければならず、創業者にとって非効率的です。さらに、ラウンドがクローズした後も全ての投資家を対象にコミュニケーションをとらなければならないため、コストがかかります。一方で、SmartHRのために別個に組成したファンドでは、ラウンド全額分をたった1か月半で調達し、CEOの労力もわずか10時間に抑えることができました。
もう1つの理由は、ある企業に対して高い確信がもてたとき、2倍や3倍、4倍の追加投資を行うことを私たちはためらわないということです。以前はコアファンドの資金量が足りなかったため、トップレベルの投資先に対して継続して追加投資を行うことができませんでした。しかし、別の投資ビークルを用意することで、私たちのキャパシティを大きく拡張することができました。
新型コロナウイルスにより市場が打撃を受け、今後2年間、日本のレイターステージの資金調達における課題はより顕著になることが予想されます。日本では、レイターステージの資金調達は事業会社からの出資に大きく依存していますが、それらのストラテジックインベスターが真っ先に撤退するのではないかと私たちは予想しています。一方で、私たちのポートフォリオには、SmartHRの成功に続くポテンシャルがあると考えられる複数の企業があります。これら2つの要素による複合的な影響を受ける中、追加資金を用意し、強い確信がもてる企業への継続的な投資を景気後退時においても可能にできたことを、私たちは誇りに思います。
Coral Growthは27億円のファンドであり、私たちの1号ファンドを拡張する役割を担います。今後2年間にわたって、コアファンドから出資している3〜5社のレイターステージに投資する予定です。これにより、特に有望な投資先企業は、その成長を継続することが可能になります。同時に、歴史に残るような活躍が今後期待される会社への投資機会を、私たちのLP投資家たちに提供することができます。
近年、スタートアップのシンボルとしては「ユニコーン」が好まれてきましたが、これからの2年間においては「ラクダ」の方が比喩として適切かもしれません。新型コロナウイルスという、悲劇をもたらすブラックスワン的な脅威によって、スタートアップエコシステムが影響を受けることは間違いありません。しかし、この状況を乗り越え、さらにたくましく成長できるような強い企業も存在します。このような企業が生き残るための支えとなるリソースを、私たちは用意したのです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital