米著名VCのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz:a16z)共同創業者、ベン・ホロウィッツの新著「Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる」の日本語版が、4月17日に書店に並びました。
ベン・ホロウィッツといえば2015年に邦訳が出た「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」で、ご存じの方も多いでしょう。日本でも10万部が売れたベストセラーで、テック系起業家のベンが、創業したOpswareというスタートアップに次々と襲いかかる難局を、どう切り抜け、最終的に16億ドルでヒューレット・パッカードにM&Aされたかという実体験を描いた本です。その描写と教訓の数々は、日本のスタートアップの起業家や経営者にも響くものがあり、今や日本のスタートアップ界では「ハードシングス」という言葉は、多くの起業家が直面する苦境を指す言葉として定着した感があります。
そのベン・ホロウィッツの第2弾である「Who You Are」は組織文化とリーダーシップに関する事例と洞察の1冊です。
歴史に学ぶ:ハイチ革命とシリコンバレー
考察対象となっているのは、人類の歴史上の事例、ベン・ホロウィッツ自身がボードメンバーとして体験したり、見聞きしたシリコンバレーの事例です。ベンは、数々の事例から、そこに共通するルールを抽出していきます。鋭敏なパターン認識と言語化の力は、投資家としての彼の面目躍如といったところかもしれません。
優れた組織文化をつくり上げた歴史上の事例としては、
- ハイチ革命を率いたトゥーサン・ルーベルチュール
- 700年続いた日本の武士道
- 多民族を統率してモンゴル帝国を築いたチンギス・ハン
- 殺人犯として刑務所に入り、受刑者たちに規律と社会貢献のきっかけを与えたシャカ・サンゴール
という事績・文化について紹介しています。
例えば、ハイチ革命は有色人種の奴隷による蜂起が成功し、独立を勝ち取った稀有な歴史的偉業です。それを率いたルーベルチュールは、自由を奪われ、生き延びるだけで必死という奴隷たちを、規律を守り、未来に向って戦う精鋭部隊としてまとめ上げました。そのために彼が取った方法は、現代的企業の組織文化醸成でも大いに参考にすべきことがある、というのがベンの見立てです。その1つはショッキングなルールをつくり、リーダー自らがそのルールを体現することですが、実はAmazon創業者のジェフ・ベゾスも同様のことをしているのだという指摘が興味深いところです。
もう1つだけ例を出すと、組織文化に大切なことを徹底して浸透させるあまり、それを唱えたリーダーが思いもよらない形で逆噴射することがあるということを、刑務所内での殺人、Uberのスキャンダルの数々という事例からベンは導き出しています。もともとリーダーが唱えていた価値観そのものには「殺せ」とも、一線を越えた実践を正当化するようなこともヒトコトも書いていません。しかし、現場はリーダーの言葉を解釈して、それを実行するものだというのです。
ベンが抽出した組織文化にまつまるルールの数々は、それぞれ示唆深いものの、そのどれとどれを組み合わせれば正解、というようなものではありません。成功している組織には、それぞれ異なる文化と価値観があり、それを決めるのはリーダー自身。自分の内面から出た信念の言葉と、それを裏付ける行動があってはじめて組織に文化は根付くのだ、とベンは説きます。
さて、Coral Capitalでは本書の翻訳を担当された浅枝大志さんにお時間をいただき、書籍の内容やポイントを解説いただくインタビューを実施しました。以下に動画として公開します。浅枝さんはご自身も起業家として、いくつか事業を興し、多くのハードシングスをくぐり抜けてきた方です。帰国子女であることからスタートアップ関連のイベントで同時通訳をされるなどの活躍もされています。今回、「著者のベン・ホロウィッツに代わって内容をしゃべれるぐらい読み込んだ」ということで解説をお願いしました。
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