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「組織をゼロから作る手触り感」が魅力―、スタートアップ人事4人の本音

Coral Capitalが2月8日に開催したスタートアップキャリアイベント「STARTUP AQUARIUM」で行われた職種別セッションから、「人事の仕事を深堀りする」のレポートをお届けします。登壇したのは、SmartHRの薮田孝仁さん、空の田島一平さん、Holmesの増井隆文さん。モデレーターはカケハシの西村晃さんが担当しました。

※STARTUP AQUARIUMの掲載記事一覧はこちら

カルチャーマッチしている人材を採用するには?カオスな環境で選考フローをどう整備したのか?カジュアルながら本質をついたセッションで見えてきたのは、各社が絶対にゆずれない「採用でのこだわり」でした。

スタートアップ人事として、入社してすぐ取り掛かったことは?

西村:本日は「人事の仕事を深堀りする」ということで、事業フェーズやドメインが違う4社での人事の詳細や楽しみ方をお伝えできればと思っています。さっそくですが、スタートアップにフォーカスした人事のやりがいを聞かせてください。まずは、薮田さんから。

薮田:SmartHRの薮田です。前職のLINEから人事に携わるようになり、2018年12月にSmartHRへ入社しました。入社してすぐ着手したのが、新入社員オンボーディング。そしてもう1つが、全社員との面談です。

当時のSmartHRは、80名弱ほどの規模。すでにしっかりとしたカルチャーが根付き始めていました。人事として、カルチャーの何を守るべきなのか、押さえておくべきポイントはどこなのかを知っておく必要があります。そこで、全社員と話し、みんなが何を大事に思っているのか、変えてはいけないことは何かを探りました。その結果、SmartHRのカルチャーの肝である「オープン」は、なくしてほしくないという声が多かったですね。

SmartHRの薮田孝仁さん

田島:空の田島です。僕が空に入社したのは、2018年3月。入社してすぐにやったことは、薮田さんと同じく、全社員との面談。当時はまだマンションの一室で働いているような規模でした。そこから組織をどうやって大きくしていくのか、どうつくっていきたいのかをいろいろ話し合いました。そこで話し合ったことを基盤に、採用などに注力しています。

そして、いざ採用を始めてみて感じたのは「組織において何をすべきなのか」の葛藤でした。人事は、事業との距離が多少あったりします。そうすると、何をすることが事業・組織にとって一番レバレッジが効くのかがわからない。特に、人事ひとり目だったので相談相手がいなくて、自問自答していました。

空の田島一平さん

増井:Holmes(ホームズ)の増井と言います。僕が入社した2019年2月当時、Holmesは11人規模でした。そのため、就業規則も勤怠管理システムもない状態だったんです。出勤退勤時刻はエクセルで各自が入力していましたね。当然ながら、採用プロセスもぐちゃぐちゃ。そこから1年で、50人規模になりました。

入社当時、Holmes代表の笹原から言われたのが、採用プロセスの管理でした。採用候補者とのやりとりはLINEやFacebookメッセンジャーなどバラバラだったので、まずATS(採用管理システム)を導入しました。そして、各チームのリーダーから選考プロセスを巻き取って、求人票の作成や返信メールのテンプレート、スカウト文を作成。これを20職種ぐらい、入社1週間の間で行いました。その後、採用基準やペルソナを作成していたのですが……。ここで壁にぶつかりました。問題は、各チームが採用したい候補者への動機づけ方法や選考ステップのセオリーを理解しきれていなかったこと。そのため、採用リテラシーの周知も同時進行しました。

今でこそ「スクラム採用」と呼ばれるものが登場しています。Holmesではそれに着手する以前に、採用担当が中央集権的に母集団形成をし、選考プロセスをきちんと回しながらクロージングまで進めるフローを整備する必要があると考えました。この一定の採用セオリーを組織内に根付かせることが、入社当時のミッションでしたね。

Holmesの増井隆文さん

C向けとB向けサービス、それぞれの人事の違い「急に100人ほしいとは言われなくなった」

西村:みなさんは前職など、いろいろな規模の企業を経験してきたと思います。当時と今で、人事や採用の違いを感じていますか?

増井:私は20代のころ、NTTデータで6年間ほど働いていました。NTTぐらいの規模になると、人事の年間業務スケジュールが決まっているんです。そこからグリーへ転職するわけですが、「繁忙期はいつですか?」と質問したら、「そんなものはないよ。常に繁忙期だよ」と言われて。メガベンチャーやスタートアップでの人事や採用は、経営判断によって上下左右へ方針がころころ変わります。そんな環境下でも柔軟に対応していく仕事でもあるんですよね。大企業なら、すでにある年間スケジュールに沿って動けばいい。でも、スタートアップは違う。そこが、大きな違いでした。

西村:薮田さんはLINEではC向け事業。一方で、SmartHRはB向け事業です。そこの違いはありましたか?

薮田:SmartHRに入社して思ったのが、toBは人員計画が立てやすいかもしれないと感じました。極端な例えをしますが、toCの採用担当者だと、ゲームがヒットしたら突然「100人ほしい!」となったりするかもしれなくて、人員計画が読めない展開があると思います。今のは極端な例です!それに比べてB向け事業でもあるSmartHRに入社して思ったのが事業計画がしっかりしているので、「今後こうなるかもしれないから、こういう人が必要、これくらい必要」など予測できるところも多いですね。もちろん、どちらも大変であることに変わりはないのですが。とはいえ、SmartHRも、何回もオフィスを引っ越していたりして、人事計画通りかわからないところが悩みです(笑)

田島:空も、B向け事業という意味では、予測はつきやすいですね。薮田さんが言っているC向け事業での「いきなり100人ほしい」と言われるケースは、なかなか起こり得ないと思います。どちらかというと、事業を伸ばしていく上での苦しさのほうがあるかもしれません。

増井:それはありますね。僕もC向け事業とB向け事業、両方の経験があります。でも、どちらにせよ僕らがスタートアップであることに変わりありません。いきなりM&Aやバイアウトして、一気に人が増えたりする可能性もあります。そのとき、カルチャーをどうするのか、制度をどうするのか。僕らが考えていくことになるんですよね。

西村:そんな我々ですが、採用におけるメインのミッションには、どういうものがありますか?

薮田:シンプルに、母集団の形成と選考部分です。そのなかで現時点での僕のミッションは、採用チームのマネジメントです。あとは、オファーコンディションをつくることですね。ここは、会社の報酬バランスに関わる部分でもあります。各チームの責任者とすり合わせた後、決定するようにしています。

田島:僕が一番重きをおいているミッションは「空を伝えること」。そのため、どのポジションの選考フローにおいても、最初に僕が出るようにしています。そこで、採用候補者の方に、空という会社、事業がいかに素敵かをひたすら伝えているんです。もちろん、選考フローの改善や見直しなども重要視しています。

増井:弊社のCEO室長がよく言っているのが「僕らは300年続く事業の3年目に今いる」ということです。事業の世界観を桁違いに広げるためにも、次元を超える人材を採用し続ける。採用においては、そんなハードルの高さにこだわっています。

採用広報、マッチング、リレーション……、4社4様のこだわり

西村:4社4様の取り組みや考え方、打ち手を行っているんですね。そのなかで、一番注力していることは?

増井:Holmesが注力しているのは、採用・広報PRです。転職の顕在層だけでなく、潜在層にもアプローチすることが大事。そこで、早い段階でオウンドメディアも立ち上げました。というのも、Holmesにはチャーミングな社員が多く、積極的に表に出て行って欲しいと思っています。自分の信念を持って語れるとか、行動できる人がたくさんいます。それによって世の中の魅力的な人材を巻き込みたい。Holmesには、採用は全社で全力でやるカルチャーがあります。

オウンドメディアでは、そんなチャーミングな社員をどんどん出すために、インタビュー記事やチームの取り組みを発信しています。そして、社内イベントなどの情報発信をして魅力づけし、採用候補者としてナーチャリングした後、カジュアル面談に引き込んでいく。そういった取り組みを、今の規模から始めています。

田島:僕らがこだわっているのは、マッチングです。当たり前なのですが、自分以上に優秀な人を採用すればチームが成長できます。そういった人しか採用しないと、固く決めているんです。そして、空のビジョンである「Happy Growth」。一人ひとりが空で働いて幸せになれるかどうかを、既存社員含めて考えています。その人がやりたいことと、空が任せたい仕事が深くマッチしているのか。そのマッチング度を見るために、選考フロー時に「空に入ったらどんなことをするか?」をプレゼンしてもらい、入社後はその仕事を任せるようにしています。

薮田:SmartHRでも「この人を本当に採用すべきか」は、やはりこだわっています。最近だと迷ったら「No Go」と言っています。一方で、将来的に必要な人かもしれない人はOKとしています。例えば、ロビイング担当者。今すぐではないけれど、2年後には必要になる。でも、必要な人がそのときすぐに採用できるかどうかわからない。会社に慣れるにも時間がかかる。ならば、早めに採用しておいたほうがいい。そこは積極的に動いています。

西村:カケハシに関して、少し言わせていただくと。カケハシでは、人材紹介会社や採用媒体といったベンダーさんなどの外部の方といかにリレーションを築くかが大事。もちろん、これは他のスタートアップも同じだと思います。特に僕らは、医療業界の方々ともやりとりがあります。SaaSとしての魅力も、そういった方々が伝えてくださることを重視し、そのためのコミュニケーションをしていたりします。

カケハシの西村晃さん

「組織をゼロから作る手触り感」がスタートアップ人事の魅力

西村:最後に、どんな人にきてほしいのかも含めて、一言ずつお願いします。

薮田:スタートアップで人事をやる魅力の1つは、人の顔と名前がちゃんと見えるところ。どんな人たちの役に立っているのかがリアルにわかるし、どう成長しているのかも見える。そこは、スタートアップの人事になってよかったと感じるところですね。
どんな人が欲しいか?という質問については、SmartHRの場合、プロダクト愛が強い人が多いと感じています。いいプロダクトを開発したい、売りたい、広めたい。そう思えることが重要かなと思っています。

田島:人事はめちゃくちゃおもしろいですよね。事業成長にすごく貢献できるし、自分たちが作りたい組織をゼロから作る手触り感がある。

先ほどもお話ししましたが、空のミッションは「Happy Growth」です。なので、自分の幸せについて真剣に考えられる人がいいなと思っています。何のために空にくるのか、「こうなれたら、自分は幸せだな」という目的意識を持っている人は合っていると思います。空は他の会社に比べてアーリーなほうなので、ハッピーな会社をつくっていくことに興味がある人はぜひ、お話しさせてください。

増井:田島さんとかぶるんですけど、スタートアップの人事は超楽しい。言ってしまうと、人事は「杓子定規な仕事」と蔑まれやすい職種でもあります。表に出ない仕事もたくさんある。でも、自分たちの仕事が事業や会社の成長、そして市場を変える可能性がとても高い。そこの面白さに、ぜひ挑戦していただきたいと思っています。僕自身が大企業出身ということもあり、スタートアップのエコシステムとして、優秀な人を大企業からお招きしたいという想いがあります。欧米に比べて、日本のスタートアップは、まだまだ優秀な人材が足りません。そこを広げていくことに注力したいんです。

西村:カケハシでも、みなさんがお話ししていたように、組織の目指している方向に、自分の人生を重ねられるかどうかが重要だと思っています。5年、10年と働き続けるかはわかりませんが、この瞬間、猛烈に組織の方向性に合わせてみようと思える人と一緒に働くことは、すごく楽しいです。なので、採用でも重要視しています。

本日は、「スタートアップの人事の何が楽しいか」をお伝えできればと思っていました。楽しい人事4人のセッションは以上で終わりです。どうもありがとうございました。

(構成:福岡夏樹)

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Editorial Team / 編集部

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