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スタートアップのCTO 4人が語る、ビジネスを技術で成長させる醍醐味

スタートアップにおけるエンジニアの仕事を深堀りしてみようというパネルディスカッションが、2月8日に開催されたスタートアップキャリアイベント「STARTUP AQUARIUM」で行われました。

比較的アーリーステージのスタートアップでは、個々のエンジニアのロールが明確に決まっていないぶん、裁量が大きく、技術の選択や解決方法などを選べる一方で、施策やアイデアを形にして最終的にデリバリーしなければならない厳しさも。そうしたスタートアップでエンジニアをする醍醐味を4人のCTOが語りました。

多様な言語・技術を使うスタートアップの現場

竹井:まず皆さんの事業と技術の紹介をお願いします。

小川:ノインは化粧品のECプラットフォームを作っています。メーカーからコスメ商品を仕入れてC向けに販売しています。また、どんなお客さんがどういう商品を閲覧して購入しているかの情報を収集し、B向けに販売し化粧品メーカーのマーケティングに有効活用していただいています。使っている技術は幅広くて、AndroidではKotlin、iOSでSwift、WebフロントエンドはNuxtとVue、Vue.js、サーバーサイドはRuby on RailsとPython、一部はGo言語もあります。

ノイン株式会社 執行役員 CTO 小川 雅史さん

城戸:LegalscapeでCTOをしています。法務の領域でテックを使って面白いことをやろう、という会社です。お客さんは弁護士事務所などですが、皆さんむちゃくちゃリサーチするんですね。とにかくググって、図書室に本を取りに行って、なければ秘書が国会図書館に走ってコピーを取る。「ぜんぶ1か所でリサーチできるツールがなんでないの?」とITの人は思っちゃうじゃないですか。そういうプロダクトを作っています。

仕事内容にはWeb開発もあれば、自然言語処理もあります。使っている技術はTypeScriptで、フロントエンドもバックエンドも一気通貫にやってます。これは完全に趣味なんですけど「型が付いて楽しいなあ」と。

この分野ではPDFの処理がめちゃくちゃ重要で、とにかくすべてPDFです。それも運が良ければで、運が悪ければ紙なんですけどね。PDFを処理する技術が武器になるんですが、語るに語れない闇もあったりします。

松木:NatureでCTOをやっています。Nature Remoというスマートリモコンを作っている会社です。赤外線リモコンで動く普通のテレビやエアコンやライトを、家の外からスマートフォンアプリで操作したり、声を使ってスマートスピーカー経由で操作できるデバイスです。おかげさまで10万台以上売れてます。最近、次の製品としてスマートエネルギーハブ、Nature Remo Eという、家の電力のモニタリングや制御をする製品を作っています。まず家の電力をスマートに。その先は電力事業を視野に入れています。

IoTデバイスの会社なので組み込み開発もあります。一方、サーバー側のシステムもある。10万台以上のデバイスが常に僕らのシステムにつながっている。そこが面白い、しびれるポイントでもあります。

技術は、サーバーサイドは主にAWS、DockerとGo、スマートフォンアプリはReact Nativeで開発しています。組み込み開発は、マイコンボードメーカーのクロスコンパイラを使ってCで書いていますが、Rustを使えたりすると嬉しいなと妄想したりもしています。

竹井:僕自身はBassetという会社の代表取締役をやらせていただいています。出自はソフトウェアエンジニアで、データ処理や分析が好きでやってきました。未踏プロジェクトや、あちこちでインターンをさせていただく中でスタートアップに出会いました。就職したのは前職のbitFlyerだけで、あとはスタートアップのキャリアの中で技術と向かい合ってきました。

Nature株式会社 取締役CTO 松木雅幸さん

自分で技術的な選択を提案でき、成長が目に見える

竹井:そもそもスタートアップにおけるエンジニアの仕事とは、というとこから聞かせてください。どういう仕事をしていますか? どういう難しさがありますか?

小川:C向けサービスを提供しているので、商品を買ってもらうためのいろいろな施策が上がってくる。各施策に対してエンジニアが開発に取り組む。そこでただ作るだけでなく、施策にどういう目的があるか、どうKPIを伸ばすのかをしっかり理解して実装に落とし込む。そのさい、エンジニアの視点から目的を理解した上で「もっとこうした方がいい」と提案できる。例えば技術的な選択を提案できる。ここがスタートアップの面白さの1つです。

竹井:スタートアップなので、技術の選択と、一方のビジネス要件というクリティカルなところで、バチバチとやる?

小川:そうです。好き勝手をやればいい訳ではなく、ビジネスを伸ばさないといけないので時間軸と並行して考えて意思決定する。

城戸:うちは、皆さんに比べてまだひよっこで、フルタイムのメンバーが4人しかいません。エンジニアというロールがあるというより、みんながいろいろなことをやっていて、プロダクトのWeb開発やデータの処理、リサーチをやりつつ、お客様にプレゼンしに行ったり、交渉の場でビジネスの話をしたりします。エンジニアっぽくないことも含めてエンジニアの仕事になっている点が違うところかな。

株式会社Legalscape 取締役・最高技術責任者 城戸祐亮さん

松木:うちも15名ぐらいの所帯で、エンジニアはハードウエア担当や僕も入れて5人ぐらい。垣根なく、やりたいものをやっています。社員はみな自社製品のユーザーなので、意見を出し合って作っています。

人も増えているんですが、やりたいことはもっと増えています。優先順位を付けて、何をやるか、やらないかを決めていかないと。今年からスクラムっぽいものを始めました。僕は認定スクラムマスターの認定を持っているんですけど、「かんばんボード」を入れて2週間ごとにスプリントを区切って仕組み化しています。

竹井:スクラムは効果的な手法だと思いますが、運営はうまく統括できていますか?

松木:とりあえず始めてみた段階です。前の職場でも使っていて、狙い通りいけば良い仕組みなので。うちの場合はハードウェアが絡むので、試行錯誤は必要だと思っています。

竹井:私たちの会社の話ですが、Bassetはデータ分析の会社でもあるので、エンジニアヘビーなところがあります。データ分析のパイプラインをどう作ってデプロイしていくのか。ここの統括はなかなか難しい。メンバーの3分の2ぐらいがエンジニアなんですけど、プライオリティの関連付けの難しさはスタートアップだろうが大企業だろうが変わらないところだと思います。

アイデアを実現に持っていく責任を負うこと

竹井:次に、カルチャーについてお聞きします。大企業とスタートアップの違いをどう考えますか?

小川:私自身は大企業に詳しくないですが、面接で大きな会社からやってきた方の話を聞くと、「1つのことしかできない」とおっしゃる方が多い。スタートアップでは、やりたいことがなんでもできる。もともと得意なことがあって入社した人が多い。アプリエンジニアで入ったけど今はサーバーサイドAPIを書いているとか、自分で作った施策がちゃんと使われているか見るためにSQLを自分で書いてデータ分析して次のやり方を考えたり。

化粧品という商材を扱っているので「エモい」できごともあります。Instagramなんかでダイレクトにメッセージがくる。ダメだと罵声が飛んできたりもします。いい意見も悪い意見も、自分たちの課題として解決していく文化があります。

城戸:僕の前職は大企業で、マイクロソフトでOSを作っていました。知らないところに上司がいて、その上の上司も知らないところにいて、何を作っているのか全体像が見えず、手元だけが見えていた。今は4人のチームなのでお客様と直接会いますし、B向けなのでお客様の要望もシビアです。ツールで短縮される1分1秒にお金がかかる仕事のお客様なので、緊張感があります。

松木:自分で思いついたアイデアをそのまま実現まで持って行けることが、スタートアップのエンジニアの醍醐味かなと思います。会社の人数も15人くらいなので、会社に自分が及ぼせる影響の範囲が大きいですね。

いい点は、状況に言い訳しづらくなることです。会社や状況に文句を言ってもしょうがない。自分でなんとかする。それは自分を叱咤する意味でいいなと思ってます。

竹井:うちの会社、Bassetはすごくグローバルで、国籍がバラバラ、社内の会話も日本語や英語が混じっています。使う技術スタックもバックグラウンドも様々。デリバリーしないといけない、技術は自分で考える、そこに責任を持つ。こうしたことがスタートアップのエンジニアならではの使命感かと思います。

株式会社Basset 代表取締役 竹井悠人さん(モデレータ)

裁量と熱量、「エンジニアの醍醐味が詰まっている」

竹井:皆さんの会社ではどんなエンジニアを募集していますか?

小川:先に説明したようにネイティブアプリでKotlinとSwift、サーバーサイドでRuby on Rails、WebフロントエンドでNuxtとVueと幅広い技術を使っているので、それぞれのエンジニアを募集しています。最近インフラも強化してSREのチームを立ち上げたいと思っているところです。溜まっているデータ分析のため機械学習のチームも募集を始めています。ECプラットフォームのロジスティックス、発送や配送の部分も作っています。あらゆる職種を募集中です。

城戸:まだ小さいチームなので、いわゆるロールがかっちり切れている訳ではありません。データから価値を生む機械学習、自然言語処理もありますし、Webアプリでデリバリーするので、NuxtだったりNode.jsだったり、Elasticsearchなど、いわゆるWeb開発もやる。理想としては全部やってほしい。

松木:うちは、セクションとしてサーバーサイドとインフラとスマートフォンアプリと組み込みに分かれるんですが、全部できる人というのは贅沢なので、それは求めません。ただ、自分の専門領域がしっかりあって、越境をいとわない人であってほしいと思います。基本的には1人で2パートはやってほしい。僕はインフラとサーバーサイドの開発をしています。サーバーサイドとアプリをやっている人もいます。組み込みをメインでやっている人は、もともとアプリのエンジニアで、今は両方やってます。

竹井:うちが欲しいエンジニアは2種類で、1つはデータ収集。Pythonを使ってダークWebまで含めて幅広くデータを収集して、機械学習エンジンまでパイプラインとして繋いでいるので、データサイエンス的なエンジニアリングができるタレントを持つ人を募集しています。もう1つはデータベースエンジニアに相当する仕事です。暗号通貨のトランザクションの分類をやっていて、データサイズとして数テラバイト、レコード件数でいうと数十億件。そういうデータベースをインデックスを調整してチューニングして、なおかつAPIを繋げる。データ処理に愛情を持つエンジニアがいたら、ぜひ。

最後に、スタートアップのエンジニアにかける思いと来場者へのメッセージをお願いします。

小川:何もないところからモノを作っていく、そういうエンジニアの醍醐味はスタートアップに詰まっていると思います。事業、サービス、会社、組織、ぜんぶの成長がセットでリアルタイムに体感できる。そこを技術で解決していく。スタートアップは飛び込むとむちゃくちゃ面白いと思います。

城戸:エンジニアリングもやるし、足りないところがあったら成長してできるようになる。枠にとらわれずなんでもやる。4人で背負っている責任を5人目として一緒に背負ってくれるような人に来てほしいですね。

松木:例えば僕たちだと、センサーデータを機械学習で分析したり、やりたいことが無限にある。「なんでこれができてないんですか」ということも、たくさんある。この状況を、むしろ「自分で決められるのでおいしいじゃん」と思えるような人に来てほしいですね。未整備でカオスな状況をエンジョイできるかが大事なポイントです。僕たちはスマートリモコンだけでなく、電力系の新規事業領域においても、ゼロをイチにする動きをやろうとしているので、そこで力を発揮してくれるエンジニアも求めています。

竹井:スタートアップにおけるエンジニアのロール(役割)として求められているのは、何でも勉強して新しいところに飛び込んでチャレンジに身を委ねられる、楽しめる人。そこに裁量の広さ、技術を追求する熱量という特典が付いてくる。技術がビジネスに直結して生かされる興奮、しびれる感じはスタートアップならではだと思います。皆さん、本日はありがとうございました。

(構成・星暁雄)

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