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「たこ焼きロボ? 儲かるわけない」と指摘する人と働きたい、スタートアップ事業開発の本音

比較的アーリーなスタートアップにおける事業開発、いわゆるBizDevの仕事とは、どんなものでしょうか? 実際に現場にいるメンバーで、その仕事を深堀りしてみようというパネルディスカッションが、2020年2月に行われたスタートアップキャリアイベント「STARTUP AQUARIUM」で行われました(イベントの全記事一覧はこちら)。

「 事業開発の仕事を深掘りする」というテーマのもと、4社のスタートアップで事業開発を支える4人が、仕事内容や難しさ、事業開発者に求められるマインドなどについて語りました。登壇したのは、hokanの尾花政篤さん、ロジレスの足立直之さん、justInCaseの渡辺良太さん。また、コネクテッドロボティクスの佐藤泰樹さんがモデレータを務めました。

スタートアップにおける事業開発のリアル

佐藤:まず、各社の自己紹介から行きましょうか。

尾花:hokanの尾花と申します。弊社は調達額が、2億円程のフェーズで、従業員数は13名です。僕らは、保険代理店向けにSaaSを提供しています。そのほか、保険会社に向けたデジタル導入に関するコンサルティングや、広くInsurTechへの理解を深めていただくため、業界全体に向けた情報発信なども行っています。

事業開発としては、保険会社向けにコンサルティングをしたり、業界全体をアップデートするために必要な取り組みをいろいろやっています。月に1回、InsureTechのミートアップや保険業界全体でAPIの公開を増やせるような環境づくりも進めているところです。

株式会社hokan代表取締役 尾花政篤さん

足立:ロジレスの足立と申します。弊社は現在シード期からシリーズAに移行しようとしているフェーズで、従業員は15名程です。ネット通販で販売をする方を顧客とし、ネット通販の企業と商品を管理する倉庫の間を取り持つ仕事をしています。

事業開発では、セールスや業務提携などに関わる手続きなどを行っています。配送会社(ヤマト運輸・佐川急便・日本郵政など)やネット通販に携わる側に業務提携の提案をしています。そうすることで、ネット通販における物流経路を一本化し、シンプルで効率的な同線を作るべく働きかけています。

渡辺:jusiInCaseの渡辺と申します。保険をデジタル化するInsurtechという分野で日々奮闘しております。ざっくり分けて2つの事業があります。1つは保険会社として自社開発の保険商品を提供する事業。もう1つは、保険会社と事業会社の間を取り持って保険をデジタライズする事業です。大企業などのクライアント・行政・自社の3者を取り持ちながら事業開発に携わっています。僕は、自社の保険商品を開発する仕事をメインにやっています。

佐藤:コネクテッドロボティクスの佐藤です。僕たちは、たこ焼きロボットを作っています。累計調達額は9億6,000万円ほどで、現在従業員数は32名ほどです。オフィスは東京農工大学のキャンパス内にあります。ロボットパッケージを飲食店に月額20万円程でレンタルしています。大手厨房メーカーのタニコーさん、ホシザキさんなどと提携したりもしています。

コネクテッドロボティクスの場合は、コントローラーや画像認識の技術を持っています。事業開発は、そのコア技術を使って、どうやって儲けるかという「金脈」を見つけて形にする仕事だと定義しています。

コネクテッドロボティクス株式会社 取締役COO 佐藤泰樹さん

「IT業界」のスーツ姿ではカルチャー的に浮いてしまう

佐藤:スタートアップの事業開発での苦労にはどんなものがあるでしょうね。うちの例だと長崎県のハウステンボスに調理ロボットを納品するとき、4か月ほど住み込みで働いたことがあって、あれは肉体的に大変でしたね(笑)

尾花:大企業との提携で起きたハプニングについて話します。みなさんが知っているような大企業の多くは、実は保険事業を持っています。その大企業に対して新たな保険事業の可能性を切り拓いていくのもわれわれの仕事です。その提携を進めていく段階で「ハードシングス」の思い出があります。

大手の事業会社と提携の話を進めて、こちらも準備・提案に時間をかけていました。しかし、クライアント企業の保険事業の位置付けが変わってしまって、僕らとの提携の雲行きが怪しくなっていきました。半年ほど時間をかけて、先方の企業と提携するために、無料で事業戦略を作って提案したりもしていたのですが、最終的には金銭面の交渉をしたときに、単価感が合わなくなったので事業提携の話はなくなりました。この件では打撃を受けましたね。

足立:クライアントとなる倉庫業界の常識や用語、カルチャーをつかむのが一番大変でした。今のところネットショップ側が使うシステムと、倉庫側が使うシステムが全く違っていて、このシステムを一貫して使ってもらえるようにしたいというのが僕らのビジネスのコアです。そのため、お客様はネットショップ側と倉庫側の双方ということになります。最初は倉庫側のカルチャーをわかっていませんでした。

トラック運転手を引退されてから倉庫経営されている方が比較的に多いんですね。そんなこともあって、そのカルチャーが浸透しています。僕のようなIT業界の人間が、スーツをピシッと着ていくと、ものすごく警戒されてしまうんです。

企業や業界などによって、信用してもらうポイントが違いますよね。最近、倉庫業界側のお作法が少しずつわかってきました。当たり前のことかもしれませんが、1対1で「人として」信頼してもらうことが大事です。話をしに行って、最終的に飲みに行って朝まで過ごしていたりしたら、関係が築かれていることが多いです。はじめに挨拶に行くときの服装も、すぐに飲みに行けるくらいのラフな格好で親近感を持ってもらえるよう、心がけています。

株式会社ロジレス 取締役 足立直之さん

保険業界特有の「ハードシングス」

セッションでは4社中2社が保険に関わるInsurTechの領域でした。「保険ビジネスにおける省庁との交渉の難しさとは?」という問いにhokan、justInCaseの2人が答えました。

渡辺:保険業界は基本的に新しい保険の販売をする場合は、そのビジネスモデルや事業の詳しい内容を監督官庁に説明しないといけません。そのプロセスを経たのちに認可が降りて、ビジネスに踏み込めるんですね。その説明段階で起きたハプニングがとても大変でした。

一度、役所の方に説明した案件だったのですが、その数日後に担当の方から連絡が来ました。「申し訳ないんですけど……、この事業はもちろん進めたいのですが、進めるには業界全体で動かなければならない案件になりそうです」と。「スタートアップなので、『今』この事業を始めないと潰れる可能性もあります」と粘り強く伝えて調整を重ね、最終的に何とか進められる体制になりましたが、あれは大変でしたね。

尾花:省庁に認めてもらうために、事業の説明や提案を準備するのは、大変ですよね。保険は金融商品なので規制も厳しく、必要な申請や書類の準備が複雑なのです。とはいえ、その複雑さこそが、むしろInsurTechの事業開発の醍醐味だし、面白いポイントだと思っています。

株式会社justInCase 取締役 / Product Developmentの渡辺良太さん

事業開発系人材の採用基準とは?

佐藤:みなさん事業開発人材を採用するために重視していることはありますか? 採用基準や方針とか。どんな人が入ってきていますか?

渡辺:今は、保険業界出身の事業開発の人が多いです。やっぱり業界にいたからこそ分かることで、僕たちが知らないようなことをはっきりと指摘してくれる人がほしいです。後はやっぱり事業開発って事業を作って育て上げる仕事なので、事業をつくりながらお客さんに喜んでもらうところまでやりたい人には来ていただきたいですね。

尾花:やはり大企業との協業をうまく進められる人ですね。僕らが実現したいことを大企業に伝えながら、先方のニーズを整備して具体化しながら動かしていける方は、楽しめるとも思いますし、ぜひ来ていただきたいです。

それに加えて突破力ですね。10〜20人規模のスタートアップがクライアントを揺り動かしていくには「整理できる力」のみでは事業を成長させていけません。突破する力も必要です。最後まで突破していける人と一緒に働きたいですね。

足立: 会社の将来像を合理的な視点で見つめて、タスクの優先順位をきちんと付けて泥臭く業務を遂行できるような人と働きたいです。スタートアップだからこそ、無理だと思われるような目標の達成を目指すこともあります。高すぎると言われるような目標に対しても合理的かつ泥臭く動ける人は、ぜひ来て欲しいです。

佐藤:うちの場合は入社希望の方には必ず「たこ焼きロボットは儲かると思いますか?」という問いでケースワークをしています。そのときに「可能性ないですね」と鋭い指摘をしてくれる人と僕は働きたいです。お題を出したときにも「このビジネスは難しいから、新たにこういうビジネスをすべきだ」と強く主張してくださるような方と働きたいですね。

(取材・構成:馬本寛子)

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