Coral Capital創業パートナーCEOのジェームズ・ライニー(James Riney)が、ときどきTwitterで主に北米の海外スタートアップについてツイートしています。そのツイートに含まれる海外スタートアップを動画で紹介するシリーズをCoral CapitalのYouTubeチャンネルで開始しました。第3弾として取り上げたのは不動産管理スタートアップの「Mynd Property Management」(マインド)です。
これは日本でも徐々に起こりつつあることですが、Myndは「フルスタック・スタートアップ」と呼ばれるタイプのスタートアップです。マーケットプレイスを提供したり、クラウド上でサービスを提供するだけでなく、リアルビジネスにおける現場の人員も含めて垂直統合した形で特定領域向けのサービスを提供するようなスタートアップです。
例えば、米国の介護領域ではケア提供者と利用者を結び付けるマーケットプレイス型が先に立ち上がり、後に自社でケア提供者を雇用して、ITサービスと同時にサービス人員も提供してしまうフルスタック・スタートアップが登場しています。
Myndも不動産管理の効率化のプラットフォームであると同時に、管理業務を行う人員を全米10州21都市にかかえています。共同創業者でCEOのダグ・ブライエン氏は「不動産管理市場においてテクノロジーの重要性を何度も繰り返し聞かれるのですが、結局のところ不動産管理はきわめて労働集約的なものなのです」として、管理業務を担う人材こそがMyndの資産だと言っています。
オーナーに代わって投資物件の管理業務を担うMyndは、例えば家賃滞納率2%以下を実現しています。それは借り手の質の良さによるところが大きいのと、現場のMynd社員がデータを武器とした管理に精通していることがポイントだということです。また賃貸の開始リードタイムが一般の管理会社より短いと言います。あるいは従来不透明だった物件修理の見積り価格を透明にしてオーナーに可視化するといったことも行っています。
現在バーティカルSaaSが日本国内でも多数立ち上がってきていますが、現業の事業会社に対する情報システムとして提供するものが主流です。しかし今後は現場スタッフも採用し、デジタル教育を施した上で、データ武装したオペレーションを回す業界特化型フルスタック・スタートアップが増えてくるのかもしれません。Coral Capital出資先では国際物流のShippioや、不動産仲介DXのBluAgeが、まさにこのモデルです。BluAgeは3億円を追加調達し、現在50名の従業員を1年後に約2倍にすると7月30日に発表しています。
米国でも不動産管理SaaSとしてオーナー向けのCozyというものがありました。ジェームズは「でも、オーナーとしてはSaaSがあれば助かるものの、結局全部任せたいですよね。さらにMyndが良いのは審査。ちゃんとしたテナントしか入っていないという安心感がある」とCozyとMyndの違いを説明します。Myndはフルスタックだけあって、2016年創業の4年目にして資金調達総額は7,760万ドル(82億円)と大型調達をしています。Cozyのほうは2012年創業シリーズBで186万ドル(19.5億円)の調達額となっています。
そうそう余談ですが、MyndのCEOであるブライエン氏はアメフトの名門チーム、サンフランシスコ49ersでプレーしていたこともある元NFL選手。プロ引退後に自ら不動産管理の世界に入り、エンジニアと一緒にスタートアップしたと言いますから、ちょっと普通ではありません。今後は日本でもそうした構図が出てくるかもしれませんね。
不動産管理市場における日米の商習慣やプレイヤーの違いはあるかもしれませんが、まだまだ日本の不動産市場のDXはこれから。この事業領域での起業を検討中の方がいれば、ぜひCoral CapitalのフォームまたはジェームズのTwitterにDMで、ご連絡くさだい。
Partner @ Coral Capital