本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「The Finance Function: Looking Back And Looking Forward」を翻訳したものです。
高成長企業には強力な財務組織が必要です。クルマ(または飛行機)を運転するには、何らかの計測器が必要です。最も重要なのは、それを使っていつガス(または電気)がなくなるかを知ることです。
財務上、必ず行わなければならないのは、請求書処理、給与計算、経費精算、帳簿や記録の管理といった経理にまつわる仕事です。これらは「やらなければならないこと」であり、そのために経理経験のある担当者を雇う必要があります。しかし、こうした仕事は私が考える財務の「過去を分析する」面でしかありません。
高成長を遂げる企業にとってさらに重要なのは、今より先の未来を見て、どうなるかを予想し、会社のお金が尽きないようにすることです。
未来を予測するには、まず自社の現在地を知らなければなりません。そのため、しっかりとしたベースラインを過去の分析から導き出す必要があります。未来予測に過去分析は不可欠です。ですが、この2つの性質はとても異なります。
未来を予測するにはモデルと先読みする能力が必要です。例えば、来月、新規顧客から大口の注文が入るので、売上を収益モデルに入れるとします。しかし、新規顧客からの売上を回収するのに90日(またはそれ以上)かかることを予測していなければ、モデルは台無しになります。これは予期せぬ財政的な危機を招く初歩的なミスです。
未来予測が事業運営にとって重要な理由はたくさんありますが、予想外の財政危機を回避することが最大の理由であると私は考えています。
私の経験から言うと、過去分析が得意な人は、未来予測があまり得意ではないことが多いです。2つの役割のために、それぞれ別の担当者を雇った方が良いかもしれません。大企業では別の部門が担っています。経理部門と財務企画部門です。財務企画部はFP&A(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)とも呼ばれています。
小さな会社でリソースが限られている場合、1人の担当者に過去分析と未来予測の両方を任せがちです。その担当者から思うような成果が得られなかったとしても、それは不思議ではありません。小さな会社なら、経理の仕事は外注し、財務企画とモデル作成の仕事に専任の担当者を雇うのがいいと思います。経理はコモディティに近い仕事で、うまくこなせる人はたくさんいます。けれど、角を曲がった先の未来を予測する能力は間違いなくコモディティではありません。もし未来予測がうまくできる人を見つけたのなら、その人を離さないことです。報酬を十分に与え、その人が仕事に満足し、やりがいを感じているか気を配るのが良いでしょう。
結局のところ、未来予測こそ財務の中核的な機能であると言えます。会社にとって良いことも悪いことも、ここで起きます。未来予測がうまくできたのなら、それは素晴らしい成果をもたらすでしょう。
Editorial Team / 編集部