医師との会話をテキスト化する「Abridge」は日本でもチャンス、海外注目スタートアップ

「ちょっとこの会話を録音してもいいですか?」。そんな会話だけで患者が診察中の医師との会話を録音すると、医学用語などに解説が付く形でテキスト化されてスマホに保存できる。医師は診察のたびに繰り返して説明する必要が減り、患者はいつでも正しい医療情報と医薬品の処方について確認ができる。

そんなアプリを提供する2018年創業の米ヘルステック系スタートアップ「Abridge」が、コロナ禍の2020年10月にシリーズAで1,000万ドル(約10億円)を調達して注目を集めています。Coral Capitalでこの領域をウォッチしているシニアアソシエイトの吉澤美弥子によれば、日本でもAbridgeのようなアプローチは有効で、スタートアップのチャンスがあるのではないか、ということです。

※この記事は注目の海外スタートアップを紹介するYouTube動画をブログとしてまとめたものです。

すでに5万ユーザー、C向けからのアプローチが新鮮

「これまでのヘルステックのソリューションは、まず病院に導入してもらって、それで患者に恩恵があるというものが多かった。Abridgeに関しては患者主導ですぐに使えるというメリットは大きいです。自分が行く病院が導入しているかどうかといったことも関係ありません」(Coral Capital吉澤)

これまで2010年代前半から、患者個人の医療情報をデジタル化する試みとしてPHR(Personal Health Record)が注目され、さまざまな試みがあったものの、どれもあまりうまく行ってません。従来のPHRでは「ケータイで電子カルテと連携させるトレンドがあった」(吉澤)ものの、フォーマットの問題や、医師がデータ提供に積極的でないなどの課題がありました。一方、AbridgeはForbesが伝えるところによると10月時点で、クチコミだけで、すでに5万ユーザーとなっています。

「いちばん多くデータが取れているのはApple Watchですが、それは日常生活のヘルスデータ。Abridgeとは取れる情報が違います。病院で言われたこと、医療情報が統合できるところが強みです」(吉澤)

医療機器など病院に関係するシステムやソリューションはB向けが当たり前に思える領域ですが、そこでC向けに振り切っているのもAbrigeの斬新なところ。Coral Capital創業パートナーCEOのJames Rineyもこの点を指摘します。

「Twitterなど初期のSNSスタートアップに多く投資してきたUnion Square VenturesがAbridgeに投資しています。ヘルスケア領域なのにC向けで市場に入って行くのは、とてもUSVっぽくて賢いですね。Abridgeが伸びているのはコロナの影響で健康意識が高まったことから、自分の健康をプロアクティブに考えようという流れになっているのも影響しているかもしれません。C向けでホワイトスペースが出てきています」(Coral CapitalのJames Riney)

「導入時の学習コストが低いのもメリットです。医療の専門用語についても、例えば『腎盂腎炎』のように難しい病名でも、米国の大手総合病院メイヨークリニックの医療用語解説データベースと連携していて、すぐに確認できるようになっています」(吉澤)

正しい医療情報や服薬指導ができていないことも、米国では課題とJamesは言います。

「米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、処方箋をもらった患者のうち5人に1人は、そもそもクスリを取りに行っていません。取りに行った人の半分は間違った時間にクスリを飲んだり、最後まで飲んでいないという現状もあります。こうしたことからも正しい医療情報を患者に届けるニーズが強まっているのでしょうね」(James Riney)

オンライン診療増加も追い風に、日本での可能性は?

コロナでより多くの人が健康意識が変わったことに加えて、オンライン診療の増加もAbridgeの普及には追い風になっているようです。

「Abridgeはオンライン診療で使われています。オンラインだと対面よりもお互いの意思疎通が難しいところがあるため、むしろ推奨している病院もあるくらいです」(吉澤)

日本市場でAbridgeのようなアプローチは可能でしょうか?

「十分に可能性があると思います。言語の違いはありますが、日本語でも音声認識でテキストを書き出すソリューションは出てきています。かつてネットの医療メディアでは信頼性の低い情報が広がるという問題がありましたが、患者が正しい情報によりスムーズにリーチできるAbridgeのアプローチは有意義ですし、日本でも有効だと思います。この領域で起業を検討している方がいれば、ぜひCoral Capitalに連絡して頂ければと思います」(吉澤)

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Editorial Team / 編集部

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