未来のベッド「Eight Sleep」で寝てみて感じたSleepTechの可能性

私がスタートアップの創業者、そしてベンチャーキャピタルファームの創業者として最も忙しかった時期を思い出すと、睡眠をずいぶんないがしろにしてしまっていたと思います。朝早くから深夜遅くまでほぼ休まず働くことを自慢にすら思っていました。当時の私は、スタートアップで働く人間にとって睡眠不足は当たり前で、睡眠時間を削らなければ成功できないと思い込んでいたのです。気付いていなかったのは、睡眠不足が生産性を著しく低下させるということでした。寝不足の日は機嫌が悪く、頭も冴えもいまいちだったのです。

しかし、2年前から私はこの考えを改め、睡眠を大事にすることを心がけはじめました。まず、毎晩7〜8時間は睡眠時間を確保するようになりました。睡眠の質にも気を配るようになり、より良質な睡眠を得るために、睡眠に影響していると思われる要因を意識的に改善しました。たとえば、私はコーヒーが好きなのですが、昼の12時以降はカフェインは控えています。寝室の環境についても、画面のあるデバイスをKindle以外では持ち込まないようにしています。また、寝る2時間前からは水分の摂取量を減らし、特にアルコールはなるべく飲まないようにしています。他にも睡眠の質に影響しているものや習慣などに気づいたときは、その都度ライフスタイルを少し変えてみるなど、常に改善を続けています。

このように睡眠に気を使いはじめたわけですが、実は最近までこの「睡眠の質」というのを翌日の気分や体調が良いかどうかだけで判断していました。定量的に測るための実用的で信頼できるツールが見つからなかったからです(ちなみに、私は日中ですら腕時計をしませんので、寝るときにApple Watchをつけるという選択肢はありませんでした)。そんなときに見つけたのが、「Eight Sleep」という眠りを最適化するためのスマート・マットレスです。実際にこのマットレスを使い始めてからは……、ものすごい変化がありました。

Eight Sleepの機能としては、まずはそのモニタリング機能があげられます。ベッドで横になっている時間や、実際に寝ている時間、寝返りの回数など、睡眠に関わる数多くの基本的要素を測定できます。しかし、このマットレスはそれだけではなく、睡眠段階や呼吸数、心拍数、心拍変動も測定することでさらに詳しく睡眠を解析してくれるのです。心拍変動(HRV)はユーザーに合わせてパーソナライズされる指標で、その人の健康状態やストレスレベルについて教えてくれます。高いHRVは良い状態、低いHRVはストレスが高い状態をそれぞれ示しています。たとえば、私は今月の上旬に重要なプレゼンがあったため、とても緊張していたのですが、マットレスが実際にこれを検知し、「今日はあまり無理をしないようにしましょう」、「手洗いをしっかりして、アルコールを控えるなど、免疫力が低下しないようにしましょう」などと教えてくれました。

その多機能で詳細なモニタリング能力も素晴らしいのですが、Eight Sleepにはさらに踏み込んだ機能が備わっています。なんと、睡眠環境を最適化するためにユーザーの体に直接働きかけることができるのです。具体的には、体温の調整を通して睡眠をサポートしてくれます。体温は入眠時に重要となる要素で、そのうえ各睡眠段階における睡眠の質や持続時間にも影響します。スタンフォード大学のCraig Heller教授によれば、「眠りにつくと、脳が保とうとする体温の基準値が下げられる」とのことです。つまり寝るときの環境が暑すぎたり寒すぎたりすると体がなかなかその最適な体温に近づけず、負担となるのです。Eight Sleepマットレスはユーザーのコンディションやニーズに合わせて温度を調整し、良質な睡眠を得るのに最も適した環境を提供してくれます。しかも、マットレスを2人で使う場合も、左右で温度を変えて各ユーザーに合わせて調整してくれるのです。

これだけでも十分すごいのですが、さらにバイブレーション式のアラーム機能が内蔵されていて、胸の位置あたりでバイブレーションすることでユーザーを個別に無音で起こしてくれます。同時に、快適な覚醒に向けて起床予定時間の少し前からマットレスの温度を調整してくれます。隣の人を起こさずに起床したいという悩みも、このマットレスがあれば簡単に解決できるのです。

Eight Sleepはまだ日本では手に入れられないのですが、その画期的なテクノロジーをいち早く体験したかったので、アメリカにいる知人宅に届けたものをわざわざ日本まで送ってもらいました。マットレス本体を送ってもらうのはさすがに大変すぎるので、ちょうど新しく発売されたばかりの同じ機能が搭載されているマットレスカバーを購入しました。非常に手間がかかりましたし、値も張りましたが、今のところその価値があったと感じています。

まるで投資先を紹介するかのようにEight Sleepを絶賛してしまいましたが、あいにく私はEight Sleep社には投資していません。しかし、Founders Fundにいる私の友人たちが実際に同社に投資していて、2019年の後半にシリーズCの資金調達を行っています。それ以前のラウンドについても、同社はKhosla Venturesからの調達に成功しています。デジタルヘルスが伸び続け、中でも「クオンティファイド・セルフ(自分の定量化)」の分野がますます活性化すると予想される中、Eight SleepのようなSleepTechも重要な領域として今後注目を集めるようになると私は考えています。事実として、睡眠は健康全般や個人のパフォーマンスに最も影響する要因の1つであり、その重要性がすでに数多くの研究によって認められているのです。それらの研究についてもっと詳しく知りたいという方には、Matthew Walkerの「睡眠こそ最強の解決策である」という本をおすすめします。睡眠の科学について最もよくまとめられている本だと思います。

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Founding Partner & CEO @ Coral Capital

James Riney

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